この作品を読むのに、苦しくて少し間をあけてみた。でも、今回は前回よりみのりに入りすぎてもっと苦しかった。
みのりは、周りからはずれない生き方で一生懸命生きてきた。その中で完璧に皆より優秀であることを目指して生きてきた。そしてその生き方でうまくいってると思っていた。朝を妊娠するまでは。
朝の妊娠を告げたことにより、予想外の結果になり、結婚という当然の生き方ができなくなってしまったことにみのりの今までの頑張ってきた生き方が崩れさり、結婚の拒絶をあっさり認めるくらいみのりにはショックな出来事だったんだろう。かといってひとりで朝を育てることなんかみのりの選択肢にはなく、相手の意見を受け入れることしかできないことに、みのりの大きな挫折の苦しみを痛いほど感じた。
その時のみのりには、もう朝をしっかり育てることしか生きる道はなく、それゆえのあの日記の文章だったのではないかと、みのりの泣き崩れる表情と朝のことを大好きだという言葉に、みのりの苦しさと決意を感じて私も涙があふれてしまった。
朝は、まきおが言った言葉に影響され、母の文章に葛藤するが、おそらく朝が思う母親は、いつもしっかりしてあの調子で、弱いところなどない親の姿でいてほしかったんだろうな。でもこの文章には母親の弱い姿、自分が見たくない一人の悩める女性という知らない母親の一面を垣間見たようで、今までの母親への安心感みたいなものが崩れ、拒絶に変わったのかもしれない。
内縁の夫はなぜあんなことをみのりに言ったのか。よくわからないが、おそらく彼は法的な責任に縛られることが怖かったのではないか。父親としてできる限りすると言っているが、それは父親としての「責任」ということではなく、文字通り「できる限りする」ということなのだろう。彼はまだ父親になる器ではなく、父親になろうとする責任を背負う努力すらできないほど弱い未熟な人間だったのではないか。
それを目の当たりにしたみのりの気持ちは想像以上だっただろう。これから育てていかなければならない命と彼の弱々しい背中、周りの目や自分のこうあるべきという未来の生活がどんなにみのりに重くのしかかっていたんだろう。
その中での希望の光がおそらく朝という存在だったのではないだろうか。
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違国日記
054話
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