すずふさんの投稿一覧

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1 - 10件目/全41件
  1. 評価:5.000 5.0

    腹黒王子の脳内に笑えます

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    むかしむかしある所に王子さまと侯爵令嬢がおりました。多少おかしい感じで出会い婚約した二人でしたが、それよりもっとおかしい事がありました。それは王子さまは腹黒でご令嬢は転生した記憶もちの自称悪役令嬢だったのです。

    自分がゲームの悪役令嬢に転生してしまったと気付いたバーティア。彼女は強く気高く美しく散る見事な悪役令嬢を目指すことを決意する。……けれど元来純粋で優しい上、少々おバカ(王子・談)なバーティアは、周囲が放ってはおけない愛らしいご令嬢。家族や周囲の人間が原作で不幸な未来になるのをそのままに出来ず、いつしか物語は原作ゲームから大きく逸れて行く。

    一方、原作のメインヒーローであるセシル王子。聡明で何事も完璧にこなす王子の性格は、絵に書いたような腹黒王子。──実はお話は、この王子の目線で進みます。

    最初は風変わりな婚約者が面白くて観察しようとしていたセシル王子は、気付けば自分とは正反対のバーティアを手放せないと感じるように(お約束)。けれど舞台は乙女ゲームの世界。学園に進むと同時に、本来の原作ヒロインとセシル王子は出会い、接近して行く事になる(お約束その②)………けれど、ここからの王子がすごかった。腹黒と天才的な頭脳と周囲の人材を使って躱す、躱す、躱す。ぐいぐい迫ってゲーム本来のルートを通らせようとしてくるヒロインから華麗に逃れ、セシル王子の為ですわと二人をくっつけ悪役令嬢になろうとするバーティアをこれまた華麗に丸め込む。この話は、原作ヒロインと悪役令嬢の話じゃないんですよ。これ、メイン攻略対象の腹黒王子が悪役令嬢を攻略するお話なんです。

    バーティア本人はずっとセシル王子が大好き。けれど彼女は原作を知っているからこそ、自分は悪役として散って王子はヒロインと結ばれるべきだと思っている。これは、そんな思い込みが強くて暴走を続けるバーティアを、セシル王子が煙に巻いて結婚に漕ぎ着けるまでのお話なんです。この二人の周囲を巻き込んだ関係が可愛くて、王子の冷静な脳内ツッコミが面白くて、とっても大好きなお話です。

    • 2
  2. 評価:5.000 5.0

    幼馴染みカップル可愛い!!

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    筋トレが趣味の日本人だった主人公が異世界転生したのは白豚令嬢と言われる悪役令嬢ソフィア・グレイドルだった。しかも第3王子の婚約者=作品ヒロインを害そうとした罪で処刑される寸前。あんまりに不条理な状況に「神様のバカ──!!」と悲鳴を上げた瞬間、当の神様たちが現れた。この状況が手違いだったと説明した神様はソフィアに提案する。チートな加護を授けるから、5歳からソフィアの人生をやり直さないか?と。

    そんな訳でチート付き逆行をしたソフィアなんですが、5歳ですでに丸い!ころころしてる!!すでにまんまるい白豚状態な自分を目にしたソフィアは、手始めにダイエットを開始します。筋トレ、デトックス、薬膳スープ、豆腐料理。そんなダイエットはソフィアよりむしろ家族の肉体改善に効果を表してしまい、なぜかソフィアは丸いまま。その上、話を聞いた王妃様が第三王子アイザックを連れてやって来て………と言うのが、物語の始まり。ソフィアは本当はアイザックとは接触したくなかったんですよね。なぜなら、前回処刑されるきっかけになったのは、イケメン王子アイザックに執着した事だったから。

    でも、ソフィアが5歳で出会った時のアイザックは怖くてご飯が食べられない男の子でした。アイザックは、以前食事に毒を盛られてから、どうしても食べられなくなってしまった。無理に食べても砂みたいな味しかしない。なのに、この女の子はなんでこんなに美味しそうに食べるんだろう……。幸せそうに食べるソフィアに促されて、アイザックは久しぶりに食事をとります。味のある、美味しいと感じられる食事を。そして自分に食事の大切さを思い出させてくれたソフィアの可愛い笑顔に、アイザックはメロメロになってしまうのでした。

    ………この時、ソフィアはまだ白豚令嬢と言われるまんまるい状態。作品表紙でネタバレしていますが、作品途中でソフィアの悩みは解決して華奢な美少女の姿になります。でも、アイザックが最初に好きになったのはまんまるい姿。丸いソフィアも綺麗になったソフィアも変わらず大好きでいてくれるアイザックと、自分の気持ちになかなか気づけないソフィアの関係がとにかく可愛いお話です。成長後にはお約束の性格悪い原作ヒロインも出てきますが、アイザックがソフィア一筋&サブヒーロー達も二人を応援している状態なので安心して読めます。

    • 0
  3. 評価:5.000 5.0

    タイトルに隠されたトリプルミーニング

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    神聖帝国の聖女の娘レティシャは敵対する公国の若き王ディトリアンと婚姻を結ぶ事になった。それは、レティシャが母である聖女に疎まれ虐待されて育ってきたから。だから聖女を憎む公国の元へと娘を送り出した。半年以内に夫ディトリアンを殺さなければ、自分が死ぬと言う呪いをかけて。……けれど、そんな自分優しく接してくれるディトリアンを彼女は愛してしまい、レティシャは夫の死ではなく自分の死を選んだ。そんな選択さえ踏みにじる様に、聖女は帝国に公国を侵略するよう命じ、結局ディトリアンは命を落とすことになった。

    ──これが、一度目の人生のお話。ディトリアンを失った後の失意の生涯を終えたはずのレティシャは、回帰した二度目の人生では彼を死なせない為に行動を開始する。そしてそんなレティシャの姿に、記憶がないディトリアンも聖女から彼女を救いたいと思うようになるのだった。レティシャは優しいディトリアンを守るために、ディトリアンは優しいレティシャを守るために、二回目の人生をやり直していく。けれど、最後まで読めば作品タイトルに込められた3番目の意味に気付くことになるんですよ。

    物語の粗筋としては、真の聖女として覚醒したレティシャが、自身の守護者である翼を集めながら、偽の聖女である母に立ち向かうお話です。そこにディトリアンとの互いを思いあう姿が描かれていて、本当に尊い。覚醒し集まってくる翼たちも魅力的な人たち。かっては母である偽聖女の翼だった人、公国の騎士、果ては帝国の皇族まで。真の聖女には、9つの翼が集うと言われており、最後の最後にはレティシャの元へは9人目の翼が訪れます。

    ……この最後の展開がまた凄かった。そう来るのかと言う気持ちと、よく来てくれたと言う気持ちで胸が熱くなってしまいました。

    そして、最後に気付くんです。タイトルに込められた3番目の意味に。『優しいあなたを守る方法』。この作品の登場人物でも1番強くて優しい、レティシャとディトリアンの二人にとっても大切な、ある人物を守る方法。この作品の物語のテーマの一つは、その人物を守れる未来にたどり着く事だったんだって。

    2025年3月現在、90話で更新が止まっています。他サイトでは本編最後まではきちんと描かれて今は外伝に入りました。せめてめちゃコミさんでも本編の結末までは描かれて欲しい。なんとか更新を!の気持ちを込めてのレビューです。

    • 0
  4. 評価:5.000 5.0

    最高に可愛い!!

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    アビーちゃんが可愛い。旦那様が可愛い。周囲の人がみんな優しい。笑えるシーンの間の取り方も最高。でもお高いんでしょう?………えっ、この内容とページ数で1話40P以下?今すぐいただくわ!

    と言う訳で最新話まで一気に購入。絵も綺麗だしめちゃくちゃ面白い良作で、しかもポイントお安め。本当に、薦めない理由が見付からない。
    一日最大12話無料のこの機会を逃さず読みはじめて欲しい作品。

    伯爵家から嫁いできたアビゲイルに、夫となったジェラルドは冷ややかに宣言する。「君を愛することはないだろう」と。けれど、ジェラルドは気付いてしまう。アビゲイルが実家で虐げられて来た事に。アビゲイルが強い魔力を持っている事に。アビゲイルが普通の令嬢とは違う事に。そして何よりアビゲイルが昔餌付けしていたピヨちゃんに似ていると言う事に──!!

    そこから始まる前世は魔王のアビゲイルと、すっかり溺愛モード突入のジェラルドの餌付けライフがとにかく面白いんです。使用人の前でも実家の家族の前でも上司の前でも果ては王族の前でも無意識に餌付けして甲斐甲斐しくお世話する姿に「君は本当に変わったな」「お前本当にジェラルドか」と突っ込まれる始末。当のアビゲイルも行動が突飛で、でもそれがまた可愛いらしい。二人の周囲の登場人物のように、ついつい(生)温かい目で見守りながら、最新話まで読んでしまいました。続きが待ちきれないです。

    • 1
  5. 評価:5.000 5.0

    二人のやり取りが可愛い!

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    物語は彼女が彼にぶちまけた所から始まった──。

    7英雄の一人ローレライのお供として魔獣討伐の慰労パーティに参加していたセシル。同じく7英雄のオズワルトを見た瞬間、彼女は思わず手持ちのポーションを彼にぶちまけてしまっていた。それは、あまりに禍々しいオーラがオズワルトから立ち上っていたから。彼に連行されたセシルは、オズワルトが受けた呪いを解く為に協力する事になるのだった。

    …………その呪いを解くための二人のやり取りが読んでいて面白い。社交界きってのモテ男付き合い放題食い放題のオズワルトと、彼に対象外扱いされた落ちこぼれ白魔導師セシル。薬師としては優秀な彼女の薬や治療法は特徴的で、隙あらばイケメンを治験者扱い。やや変人のセシルとそれに振り回されるオズワルトが少しずつお互いを意識していく姿は見ていてにやにやしてしまう。

    話は面白いし、絵は綺麗だし、読みやすくて一気に最新話まで読んでしまった。

    • 3
  6. 評価:5.000 5.0

    未読の人はこの機会に是非!

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    モノクロ版完読済み。カラー版も買いそろえようか悩みつつ、せっかくなので3話まで読んだ作品レビューを。正直、今からカラーで買いそろえられる新規読者さんが羨ましい。この大好きなお話を綺麗なカラーで読み進めて行けるのだから。

    領民に悪政を強いて家族と共に断罪されたライウスの徒花「お嬢様」。けれど真実の彼女は優しく純粋なライウスの宝花と言われる女性だった。そんな彼女を一族ごと処刑したのは、お嬢様の恋人ヘルトとして潜入し領主一家への反乱の機を伺っていた北方領主のカイド。お嬢様の死から15年後。前世の記憶を持ったままシャーリーとして転生したお嬢様は、現在のライウス領主として生きるカイドと再会することになる。これは、お互いに後悔と未練、捨てきれない愛情と罪悪感を抱えた二人が、幸せになれるまでのお話。

    とにかく二人の関係が切なくて何度も泣けてしまう。序盤にわかることですが、転生したお嬢様はもちろん、カイドの方もシャーリーが転生したお嬢様なのだとすぐに気付いています。それでもお嬢様とヘルトとして抱えた罪のせいで、胸に抱えたままの気持ちに向き合い従う事が出来ない。シャーリーはお嬢様の時の罪を今生で償うと決めているし、カイドはお嬢様を断罪した自分が幸せになるなんて許されないと考えている。そんな二人が少しずつでも幸せになろうとし始める姿が、すごく綺麗に描かれていて大好きなお話です。

    モノクロ時に言われていた文章が多くて読みにくいと言う意見も、カラーになることでかなり軽減されていると思いました。私は逆に、その詩的な台詞回しが世界観にあっていて大好きだったので、その台詞の多さも含めて楽しんで欲しい作品です。とにかく切なくて優しくて、色んな場面で泣けてしまうお話でオススメです。

    • 4
  7. 評価:5.000 5.0

    意図しない悪意の恐ろしさ

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    なろう連載で大好き……と言う言葉では表せない、色んな想いを抱かされた作品の書籍版。あちらには無かったエルドレット視点の補足があると知って飛び付きました。なぜエルがあんなにも一途に献身的にピカリを愛するのか。彼の執着はどこから来るのかを知ることが出来て大満足でした。ピカリの本当の名前は光。辛くて苦しい失うばかりだったエルの世界で、彼女こそは希望の光そのものだったんだろう。例えそれが、罪悪感や後ろめたさを抱えた物だったとしても。

    そして、この物語の根幹にあるのは、人の悪意なき悪意なんだろう。何らかの理由があるから仕方ない。そう、誰もか他人に対して犯した罪を悪気なく正当化してしまう。例えば、この世界を救う為だから異世界から聖女召還と言う強制らちをするのは仕方ない。聖女を旅立たせる為だから、魔王を倒しても帰還出来ない事を隠しておくのは仕方ない。だって、そうしないとこの国の人間が沢山死ぬことになるのだから、と。そんな悪意なき悪意のつけを一人で背負わされたヒカリに、ただ一人自身の罪を認め償おうとしたのは、第三王子で共に旅した勇者エルだけだった。他の人間は、無理矢理異世界に連れて来られる人間の悲しみになんて気付こうとしない……。そんな彼らが悪人でないからこそ、このお話はやりきれないのだと思う。

    誰もが、家族を失苦しみを理解し他人が傷つく事に心を痛める普通の人間。ただ何故か、その対象には無理矢理召喚された異世界人と言う「異物」は含まれない。そんな無意識の感覚が作り出した世界の真相を知った時に、作品を読んでいる側も本当に苦しい腹立たしい気持ちになってしまった。重くて辛い衝撃的な作品だけど、是非読んでみて欲しい作品。書き下ろしで、エルとヒカリのその後を読めてかなり救われた気持ちになりました。

    • 0
  8. 評価:5.000 5.0

    正に理想の王子様

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    宰相の娘であるリディは、現在最も有力な王太子妃候補と言われている。だが、前世である日本人の記憶を持つリディには、王族に認められた一夫多妻の制度が受け入れられない。悩んだ彼女は王太子妃の条件である純潔を散らす為、仮面舞踏会への参加を決意する。一方、完全無欠の王太子と言われるフリードもまた、ある悩みを解消する為、姿を変えて仮面舞踏会に参加していた。

    この後婚約者編、王太子妃編、更には王妃編と続く長期シリーズの最初のシリーズ。フリードに惹かれながらもそれを認めたくなくて逃げるリディと、そんなリディを絶対に逃がしてくれないフリードが可愛い。コミカライズでリディはより可愛く柔らかそうに、フリードはきらきら目映いイケメンに描かれていて嬉しい。

    個人的に王子といったらこの作家さん!と言うイメージがある月神サキ先生。その中でもフリードは正に理想的な王子だと思う。事情があった過去はともかくとして、出会って以降はリディに一途で誠実で何があってもリディを傷つけない、何からも守ってくれる。軍神の子孫と言われるだけの力を持っているのに、周囲の人間への物腰は柔らかく傲慢さの欠片も見せない。リディをとろとろに甘やかして、リディの周囲の人間にも敬意をもって接してくれる。一方で嫉妬深くて独占欲が強い一面も。まさに溺愛を形にしたような理想の王子様。主人公のリディも、女版なろう主人公でとにかく優秀!たまにいる足を引っ張る系ヒロインではなく、完全無欠と言われるフリードに劣らないくらいにあらゆる能力に長けていて、それは彼女の努力から来るものでもある。物語だからもちろん様々な危機が訪れるけれど、この二人なら大丈夫と思える素敵な主人公カップル。と同時に、周囲のキャラクターもみんな魅力的で、出来れば小説も読んで欲しい。コミカライズ作家さんはシリーズで違うけど、どの作家さんもお上手でおすすめです。

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  9. 評価:5.000 5.0

    偽りが真実になるまで

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    伯爵令嬢のリリアーナは義母と義妹、二人のいいなりの実父に虐待されて育ってきた。そんな彼女の元に来た公爵家からの婚姻の申し出。今の状況から逃れられるかもしれない、と淡い期待を抱くリリアーナ。そんな彼女に、夫ウィリアムが告げたのは、この結婚が彼に都合がいい政略結婚で愛はないこと。「泣くな。泣く女は見たくない」と突き放した彼は、それからリリアーナに会おうともしなかった。

    そんな状況から一年。記憶を失ったウィリアムはリリアーナに優しく微笑みかける。「貴方のような麗しい方が私の妻だとは本当ですか?」記憶喪失から始まる溺愛夫婦生活。けれどリリアーナは、ウィリアムの記憶が戻った時に、この偽りの幸せは終わると不安になるのだった。

    ………この好感度マイナススタートからの旦那様ウィリアムの名誉挽回具合がすごい(笑)美しく清楚で純真で優しく健気なリリアーナは、本来ならウィリアムの好みど真ん中の女性だったんですよね。ただ、ウィリアム側にも女性を嫌悪する理由があって、リリアーナを突き放すような態度を取ってしまった。そんな自分を責めつつ謝罪する事も出来ず、彼女を避けて過ごしているうちに記憶喪失になってしまった。

    と言う訳で、記憶喪失から目覚めたら理想を形にしたような妻が目の前に!!性格も鬱屈する前の真っ直ぐな本来のウィリアムに戻っているので、周囲の使用人たちに妻を放置した一年を責められながら必死に挽回しようとする姿が微笑ましい。頻繁に「わたしの つま かわいい」と悶える姿も笑ってしまう。そのくらい、リリアーナは可愛らしい女性なんですよね。ただ、彼女は心の奥にたくさんの傷を抱えている。そしてウィリアムにも、女性に心を閉ざすようになった過去がある。この二人は、本来は良く似た、高潔で優しくまっすぐな魂の持ち主。そのリリアーナとウィリアムが互いを支え、周囲にも助けられながら前を向いていく姿はとても尊く感じました。

    今なら終盤まで毎日無料があります。お話は面白いし絵も綺麗だし、是非読んでみて欲しいです。

    • 1
  10. 評価:4.000 4.0

    すごいな高校一年生……

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    両親を亡くした後家族を支えながら生きてきた優等生雪灯。彼が高校に入学した時、祖母が倒れて入院することになった為、祖母と妹を支える為に、雪灯は希望していた剣道部入部を諦めることにする。幼馴染み遥夏一家に助けられながら前向きに生きる『真面目で優しい優等生』の雪灯。けれど少しずつ溜まった鬱屈に心が悲鳴をあげかけた時、雪灯は一人の少女に出会った………。

    と云う冒頭の通り、雪灯と出会った少女結以との恋が作品のメイン。10歳にして家族を守る側になり、優等生として誰も傷付けないように本心を抑圧して生きてきた雪灯。自分を敵視する実母と自分を異性と見る義父から逃げる為に、全てを諦め心を殺して生きてきた結以。その二人が誰かを傷付けてでも、幸せになる為に生きられるようになるまでのお話。

    その雪灯側の最大の試練として描かれたのが、幼馴染み遥夏との関係。ここは掲載時にでも荒れたと云うのが良くわかる。なにせ遥夏がとにかく良い子。ずっと好きだった雪灯が結以に惹かれているのを知った彼女は、優しい彼が断れない状況と知った上で告白をしてしまう。そして、やっぱり雪灯は断れなかった。遥夏とは家族ぐるみの付き合いで、両家族がそれを望んでいるから。なにより雪灯自身が遥夏を泣かせたくなかったから。そしてきっと自分は、気づいてしまった結以への気持ちを隠して、遥夏とのキスもそれ以上も上手くやれてしまうと考えていたから。………けれど、結局は出来なかった。どうしても諦められない本当の気持ちの為には、自分は良い人間ではいられない。誰かを傷つける事が出来てしまう。そう云う、周囲に望まれている自分を脱ぎ捨てて本心で生きる為に必要なイベントだったんだと思う。脱ぎ捨てた本性は意外と喧嘩っ早いし腹くくってるし好きな子相手への手も早いしで驚いたけど。

    当の結以も好みが分かれるヒロイン像ではあるけれど、読んでいくと彼女が自分を軽く見るようになった理由が分かって胸が痛い。所謂当て馬と言われるキャラが良い人たちな分だけ、雪灯と結以の行動に不快感を抱く人がいるのも分かる。けれど、やっぱり必要で出会った二人だったんだと思う。色々なことを諦めていたまだ高校生の二人が、ちゃんと自分の、自分の人生の幸せの為に生きられるようになる為には。この出会いがなければ、なんだかんだと自分を殺して生きる人生には、いつかは行き詰まっていたかもしれない。

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