5.0
腹黒王子の脳内に笑えます
むかしむかしある所に王子さまと侯爵令嬢がおりました。多少おかしい感じで出会い婚約した二人でしたが、それよりもっとおかしい事がありました。それは王子さまは腹黒でご令嬢は転生した記憶もちの自称悪役令嬢だったのです。
自分がゲームの悪役令嬢に転生してしまったと気付いたバーティア。彼女は強く気高く美しく散る見事な悪役令嬢を目指すことを決意する。……けれど元来純粋で優しい上、少々おバカ(王子・談)なバーティアは、周囲が放ってはおけない愛らしいご令嬢。家族や周囲の人間が原作で不幸な未来になるのをそのままに出来ず、いつしか物語は原作ゲームから大きく逸れて行く。
一方、原作のメインヒーローであるセシル王子。聡明で何事も完璧にこなす王子の性格は、絵に書いたような腹黒王子。──実はお話は、この王子の目線で進みます。
最初は風変わりな婚約者が面白くて観察しようとしていたセシル王子は、気付けば自分とは正反対のバーティアを手放せないと感じるように(お約束)。けれど舞台は乙女ゲームの世界。学園に進むと同時に、本来の原作ヒロインとセシル王子は出会い、接近して行く事になる(お約束その②)………けれど、ここからの王子がすごかった。腹黒と天才的な頭脳と周囲の人材を使って躱す、躱す、躱す。ぐいぐい迫ってゲーム本来のルートを通らせようとしてくるヒロインから華麗に逃れ、セシル王子の為ですわと二人をくっつけ悪役令嬢になろうとするバーティアをこれまた華麗に丸め込む。この話は、原作ヒロインと悪役令嬢の話じゃないんですよ。これ、メイン攻略対象の腹黒王子が悪役令嬢を攻略するお話なんです。
バーティア本人はずっとセシル王子が大好き。けれど彼女は原作を知っているからこそ、自分は悪役として散って王子はヒロインと結ばれるべきだと思っている。これは、そんな思い込みが強くて暴走を続けるバーティアを、セシル王子が煙に巻いて結婚に漕ぎ着けるまでのお話なんです。この二人の周囲を巻き込んだ関係が可愛くて、王子の冷静な脳内ツッコミが面白くて、とっても大好きなお話です。
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自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。