rokaさんの投稿一覧

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51 - 60件目/全109件
  1. 評価:5.000 5.0

    少年漫画としてのホラー

    嗚呼、もう、懐かしさで心が震える。
    ジャンプの「ホラー枠」といえば、これだった。

    基本的には「世にも奇妙な物語」系のオムニバス・ホラーで、今となっては珍しくも何ともないけれど、当時の少年誌の読者にとっては、漫画としてとても新鮮に感じられた。
    ホラー好きな少年漫画読者としては、もう、たまらなかった。

    当時、より大きな漫画のマーケットで見れば、ホラー漫画自体が流行っていたけれど、いわゆるホラー漫画雑誌に載っていたホラー漫画とは、明確に違った。
    それは、本作が、あくまで「少年漫画」の文脈を守っていたことだ。

    ホラーは、怖がらせたり不安にさせたりするのが本分だから、当然、善人が決まってみんなハッピーになってはいけない。
    何の罪もないキャラクターが、不条理に酷い目に遭うのがホラーなのだ。
    だが、「アウターゾーン」は違う。
    善良な生き方をしていれば、必ず報われる。
    そういう漫画だった。
    それは本来、ホラーとしては失格なのだ。
    しかし、本作は、ホラー漫画である以前に、少年漫画であることを選んだのだと思う。

    本作のアプローチは、ホラー漫画としては甘すぎても、少年漫画としては正しいと思うし、そういう甘ったるいホラーの温かさが、私は好きであった。

    • 15
  2. 評価:5.000 5.0

    完全無欠の細部

    14年前の事件の凶悪犯が出所し、小さな集落を訪れたことから、そこで暮らす人々の人生の歯車が狂い始める、というストーリー。
    あまりに素晴らしいサスペンスで、全く目が離せない。

    テンポよく、スリリングで、しかも極めて安定感のある展開、みなぎる緊迫感と立ち込める不穏さ、丁寧で奥深いキャラクターの造形、サスペンス漫画として何もかもが見事だが、強烈なリアリティーを力強く支えているのは、圧倒的なレベルのディテールだ。

    例えば、凶悪犯の「名前」の件。
    登場時、14年前とは、名字が変わっている。
    これを「偽名」だと主人公サイドは見抜くわけだが、読者サイドとしては、「そんなに簡単に名前を変えられるのか?」という小さな引っかかりは残る。
    本筋とそこまで関係なさそうだし、まあいいか、と私なんかは思うのだが、この漫画は、そういう細部をツメにツメる。
    「小さな引っかかり」をおろそかにせず、徹底的に拾い上げて、しかもそのディテールをいつの間にか本筋に繋げる。
    この上手さを何と言えばいいのか。
    私などの言葉では伝わらない。
    もう、読んでもらうしかない。

    些細なことと言えば些細なことだが、結局のところ、作品の完成度を左右するのは、そういう些細なことの集積なのではなかろうか。
    特に、伏線がものをいうサスペンスでは、なおさらである。
    その点、この漫画の気合いと緻密さは凄まじい。
    「神は細部に宿る」とは、こういう作品のためにある言葉だろう。

    完全無欠のディテールに支えられた、唯一無二の傑作。
    サスペンス漫画ファンは、必読である。

    • 16
  3. 評価:5.000 5.0

    眩しすぎたせい

    最初は、物語がどこに向かおうとしているのかがまるで見えなくて、漫画の登場人物たちと同様、私自身、民子に振り回されるばかりで、とっちらかったような印象を受けた。
    こりゃ、最後まで読むことはないかな、と。
    しかし、読み進めるうちに、強引なくらいのパワーに引き込まれて、抜け出せなくなった。
    終盤はもう、涙が止まらなかった。
    でも、どういう涙なのか、よくわからなかった。

    私は、どんな人間も、何かしらの地獄を抱えて生きているのではないかと思っている。
    はたから見たら、恵まれたイージーモードの人生を送っているように見える人でも、誰もが敬う人格者でも、はたして同じ人類なのかと疑いたくなるくらい嫌な奴でも、それは変わらないのではないかと思っている。

    民子は、人々が抱えた地獄の一番深いところの闇を、照らすような人物だった。
    刹那に、強烈に。
    そこには善とか悪とかいう観念はなくて、多分、民子自身の意志とか感情とかもあまり問題ではなくて、ただ、自分の命を燃やして何かを照らすような生き方しか出来ない。
    そうすることでしか、自分自身の地獄を照らせない。
    私は、民子にそういう印象を持った。
    そんな人物に、いかなる漫画の中であれ、出会ったことがなかった。

    閃光は、一瞬だ。
    それは、悲しむべきことかもしれない。
    けれど、例えば花火が一時間光りっぱなしなら、あるいは、蛍が十年生きるなら、あれほど私たちの胸を打つだろうか。

    私が流した涙は、あるいは、民子が刹那に放った光が、あまりに眩しすぎたせいなのかもしれなかった。

    • 17
  4. 評価:5.000 5.0

    ゲゲゲの鬼太郎と私

    「あのとき、あの漫画に出会わなければ、別の人生になっていたはずだ」というような漫画が、人によっては、あると思う。
    私にとってはそれが「ゲゲゲの鬼太郎」である。
    だから、この漫画については、もう好きだとかファンだとか、そういうレベルではない。

    生まれて初めて本気で好きになったものが「妖怪」だった。
    私は幼少期を「妖怪のいる世界」に生き、大学では民俗学を学び、大人になった今でも、どこかに妖怪の影を探しながら暮らしている。
    そういった全てが、「ゲゲゲの鬼太郎」に端を発している。

    世界を作ったから神が崇められるのであれば、私が崇めるべきは水木しげるである。
    彼が、私の世界のかなりの部分を作ったのだ。
    いくら感謝しても足りない。
    しかし、私からは一度も感謝の言葉を伝えられないまま、水木しげるは逝ってしまった。
    それは少しだけ残念だ。
    しかし、水木しげるのことである。
    きっとあの世で妖怪やら霊魂やらと、楽しくやっているに違いない。
    「ゲゲゲの鬼太郎」を読めば、それを信じることが出来るだろう。

    • 12
  5. 評価:5.000 5.0

    受け継がれる精神

    個人的には、ジョジョは4部が一番好きで、3、5、6部が同点で2位、という感じである。
    正直、この(実質)7部は、単行本を買い続けている間は「どうなんだろう」と思っていた。
    しかし、完結してからあらためて一気読みして、印象が変わった。

    「たとえ命は途絶えても、受け継がれる精神がある」というのは、ジョジョ全編を通じての大きなテーマのひとつだと思う。
    実のところ、それが最も色濃く打ち出されているのは、この7部ではないか、と感じたのだった。
    その意味で、やはり本作も、どこまでもジョジョである。

    もちろん、熱いスタンドバトル、豊富すぎるくらいの魅力的なキャラクターたち(敵味方を問わず)も健在で、このあたりはもう、流石と言う他にない。

    • 6
  6. 評価:5.000 5.0

    アイドルとしての岸辺露伴

    私のアイドル、岸辺露伴を主人公に据えたスピンオフ。

    ジョジョの第4部は、ジャンルとしては「サスペンスホラー」に分類されるそうだが、この短編集は、本編以上にサスペンスホラーのテイストを強く感じさせる。
    荒木飛呂彦の、ホラーに対する思い入れ、そして、岸辺露伴に対する思い入れがシャープに炸裂しており、同時に、シリアスだけどコミカル、というジョジョ(特に4部)のトーンが懐かしくもある。

    ジョジョファン、第4部ファン、岸辺露伴ファン、には必読と言って然るべき良作である。
    その全てに該当する私は、大変楽しく読めた。
    何しろもう、岸辺露伴がそこにいるというだけで、大満足であった。

    • 17
  7. 評価:5.000 5.0

    自然に、自由に

    まさに心が震える傑作短編集。
    切なく微かな震えから、ぐらんぐらんに揺さぶる激しい震えまで、バリエーションも実に豊かである。

    漫画の、あるいは、物語の、定型。
    どうもがいても、どんなに工夫を凝らしても、いつの間にかそこに収まってしまう、というような、定型。
    私たちはどれほどオリジナルであろうとしても、結局、何かに似てしまう。
    別にそれが悪いことでもない。
    しかし、この漫画は、そういう定型から、あまりに自然に自由だと思った。
    定型を拒否するでも斜に構えるでも奇をてらうでもなく、ただ、自然に、私の知るあらゆる定型から逸脱していた。
    きっとこういうのを本物の才能と呼ぶのだろう。
    素晴らしい作品だった。

    • 15
  8. 評価:5.000 5.0

    彼が好きな彼女は、彼女が嫌いな彼女

    私は「ありのままでいい」というメッセージが基本的に嫌いである。
    そんな単純に事が済んでたまるか、と思いながら生きている。
    Mr.Childrenの歌にそんなのがあったけど、コンプレックスだってモチベーションだ。
    けれど、この漫画は、刺さった。

    今のところ(現在12話)、自分のありのままを受け入れられない女の子と、彼女にありのままでいてほしい男の子の、すれ違いの物語として私は読んだ。
    これは、難しい。
    私は、主人公の整形も、故郷からの「脱出」も、理解できるし、支持したい。
    たとえ形式上は逃避に見えたとしても、それは、コンプレックスに押し潰されることなく、人生を切り開くための必死の冒険だったと思うからだ。
    しかし一方で、男の子の気持ちも、痛いくらいにわかってしまった。
    けれど、彼が好きな彼女は、彼女自身が消し去りたい彼女なのだ。
    そんな残酷なことってあるか。
    私にはもう、どうしたらいいのか、さっぱりわからない。
    いったいどうしたら、二人が幸せになれるのか。
    あるいは、そんな道は存在しないのかもしれない。
    いずれにしても、この二人の行く末を、見届けたい。

    また、漫画としては、主人公が夢中になっているプレイボーイの先輩も、どう考えても病んでいる先輩の元恋人も、二人の間に挟まっている印象の悪い醜男も、意外とステレオタイプではなく、みんな何かしらの地獄を抱えていそうというか、なかなか奥行きがありそうで、脇役たちからも目が離せない。

    • 6
  9. 評価:5.000 5.0

    ものすごく楽しくて、あり得ないほど美しい

    大人になってからこれほど漫画で笑ったことはなかったし、これほど新刊を待ち望んで日々を過ごしたこともなかった。
    本当に、素晴らしい作品だった。

    まず、「これ」を漫画にした才覚に脱帽する。
    基本的には二人の高校生が河原でだべっているだけという、「こんなの漫画になるのかよ」という題材だが、圧倒的な会話のセンスと、卓越した「間」の表現が、見事に作品を成立させている。
    読んでいるうちに、「こんな漫画ありかよ」という最初の感想は、「これは漫画だから出来たことなのかもしれない」という思いに変わった。
    そういう意味では、およそ漫画らしくない場所から始まって、実に漫画らしい地点に到達した、稀有な作品だと思う。

    私は、毎回げらげら笑いながら、この漫画が終わってしまうことを、どこかで恐れていた。
    青春時代を謳歌する若者が、心のどこかでは、いつかそれが終わることを恐れるみたいに。
    彼らが、「いつまでもこれが続くといいのにな」と思いながら、そして、本当はそれがあり得ないと知りながら、日々を生きるみたいに。

    私は、セトのことが、ウツミのことが、ただただ大好きで、彼らに会えなくなってしまうのが、たまらなく寂しかった。

    けれど、やはり、終わった。
    青春というひとつの時代にも、いつか終わりが来るように。
    ただ、その終わり方というのは、私のあらゆる想像を超えて、それまでこの漫画が積み上げてきたものをある意味で壮大に裏切りながら、これ以外ではきっと駄目だったんだ、と感じさせるような、ものすごく斬新で、あり得ないほど鮮烈なものだった。
    私は、これほど美しい漫画の終わらせ方を、ほとんど知らない。

    私の青春は遥か昔に終わり、この漫画もやはり終わり、けれど、ふと懐かしくなってページをめくれば、漫画の中で、セトとウツミは、いつまでも青春なのだった。
    だから、漫画というのは素晴らしくて、でも、そんなの、ちょっと、ずるいと思った。

    • 35
  10. 評価:5.000 5.0

    ホラー漫画への愛情

    1990年代に、空前のホラー漫画ブームがあった。
    その象徴とも言うべき存在が犬木加奈子だった。
    当時発刊されていたホラー雑誌10誌の全ての表紙を犬木加奈子が担当することさえあった、と言えば、その凄さが伝わるだろうか。
    私は、そんな時代に、従姉の家でホラー漫画雑誌を読んで育った、犬木加奈子チルドレンであった。
    しかし、時は流れ、全てのブームと同じようにホラー漫画ブームも終わり、ついに、ホラー漫画雑誌そのものが日本に存在しなくなった。
    私が、あるいは私たちが、あれほど夢中になって震えたホラー漫画の時代は、終わったのだ。

    今の時代に、「こういう漫画」というのは、もう読めないのではないかと思っていた。
    だから、初めて読んだときは、初めてなのに、あまりの懐かしさに心が震えた。

    暗すぎる絵、終始陰鬱なトーン、不意な残酷描写、他の何の漫画でもなく、これはホラー漫画なのですよ、というベタで優しい雰囲気、そして、見方によっては、半分ギャグ。
    何もかもが、「あの頃」のホラー漫画だと思った。
    どこまでもノスタルジックで、徹底的に時代遅れをやりながら、しかも、古臭さを感じさせない。

    失礼な言い方かもしれないが、この作者は、現代における犬木加奈子の後継者ではないか、と思った。
    決して誇張ではなく、現代のホラー漫画界において、希望であるとすら思った。

    この作者には、ホラー漫画への本物の愛情があると、思ったからだ。

    私はもう、恐怖を求めてホラー漫画を読んでなんかいない。
    そういう時代は、ホラー漫画ブームの終焉と同じくらいのタイミングで、終わったのだ。
    二度とは帰れない。
    私がホラー漫画に感じているのは、単なるノスタルジックな感傷に過ぎない。
    純粋に怖がれる心を失ってしまった大人として、かつて私を震え上がらせてくれたものへの淡い憧憬を、惰性で追いかけているに過ぎない。
    でも、いくぶん肯定的に言わせてもらえば、私はずっと、ホラー漫画に対する愛着を、あるいは愛情を、捨てきれずにいるのだと思う。

    だから私は、この漫画を永遠に支持する。

    • 19

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