rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
51 - 60件目/全151件
  1. 評価:3.000 3.0

    その謎は煌めいているか

    映画でも小説でも漫画でもそうなのだが、ある種の曖昧さや抽象性というものを保持したままで作品を閉じる、つまり、話の筋について「何が起きたのか」について明確な答えを提示しない、ということ自体は、私は否定しない。
    映画の例で言うと、デイヴィッド・リンチという監督の一連の作品なんかはその最たるものだと思うが、私は大好きである。

    ただ、この種のアプローチには間違いなく弊害もあって、どこの誰が発明したのかは知らないが、実際は大した話ではない、それどころか、下手をすればそもそも結末を考えていない、にもかかわらず、「とりあえず曖昧にしといたらええんやろ?」とばかりに結末を濁すことで、何かそこに深みのようなものを感じさせてやろう、という作品が生まれ得てしまうことも事実である。
    それはちょっとまあね、ずるいわよね。

    本作がそうだ、と断定したわけではない。
    正直、私にはわからなかった。
    そこに何かあるのか、それとも、何もないのか。
    ただ、いずれにしても、こういうタイプの作品は、「そこにあるかもしれない何か」を探り当てたい、という読者の思いを喚起させられなければ、やはり成功とは言い難いのではないか。
    謎の答えがどうであれ、その謎自体は、煌めいて見えなければならないのだと思う。

    まあ、ショートムービーのような洒落た雰囲気、海中の描写の美しさには感心したけれど。

    • 2
  2. 評価:3.000 3.0

    設定の機能

    自ら怪異を体験することによってホラー漫画を描く鬼才の漫画家と、その助手みたいな役どころを務めることになった少年の話。

    ホラー漫画としては、上記の設定の部分がアイデンティティーかと思われる。
    が、いかんせん、それだけでは「弱い」という印象は拭えなかった。
    ホラー描写も、漫画家のキャラクターも、特段魅かれる部分がなく、残念ながら、設定が上手く機能しているようには思えなかった。

    • 3
  3. 評価:3.000 3.0

    あまりに記号的な

    「空が灰色だから」という傑作漫画があるが、それをちょっと思い出した。
    本作と類似しているというわけではないのだが、あの言葉にしようのない「心のざわつき」を喚起する漫画、本作が狙ったところは、もしかしてそれに近いんじゃないのかな、と。
    ただ、申し訳ないが、この漫画がそれに成功しているとは言いがたい。

    抽象的な言い方になるが、「何とも言えない」感じのエピソードが、記号として放り出されている、という印象を受けた。

    「空が灰色だから」の中には、決して言葉に出来ない何やかやを抱えて生きる、漫画的だが同時にひどく人間的な彼や彼女がいた。
    それは、思春期というわけのわからない時代の中で、適切な言葉を持ち得ないまま、何とか生きていたあなたや私の姿そのものだった。

    本作の中には、あなたも私もいない。
    それが否定されるべきかは難しいところだが、少なくとも、血の通わないエピソードに揺らされるほど、私の心に余裕はない。

    • 3
  4. 評価:3.000 3.0

    ジョークとしては

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    よくあるデスゲーム系、なんて言うのもはばかられるくらい、全てがテンプレどおりで、笑ってしまった。
    これをマジでやっているなら寒すぎるが、作り手の側も半分(たぶん半分以上)ギャグでやっており、それが逆に好感が持てた。
    このジャンルはあまりに手垢にまみれてしまったし、はっきり言って「真面目に読むとつまらない上に、ジョークとしても笑えない」ような作品が溢れる中、「まあ、ジョークとしては面白い」という本作は、なかなか貴重であった。
    しかしまあ、高評価をつけられるかとなると、そんなことはないのだが。

    • 4
  5. 評価:3.000 3.0

    漫画の中の文学

    うーん、評価が難しい。
    独特の世界観、と言えばそうなのかもしれないが、ちょっと「狙いすぎ」という気もする。

    おそらく作品のひとつの方向性として、「漫画で文学をやる」みたいなことはあるのではないかと思う。
    その志を否定するわけではないし、実際、文学を感じさせる漫画の中に優れた作品もあると思う。
    だが、誤解を恐れずに言えば、漫画は漫画だ。
    それ以上でもそれ以下でもない。
    漫画の中の文学というのは、あくまで読む側が「感じる」ものであって、作り手の側が押しつけるものではない。
    そのあたり、本作の文学の主張はちょっとうるさすぎる気がして、私は入り込むことが難しかった。

    • 2
  6. 評価:3.000 3.0

    とってつけた

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    復讐代行業者の話。

    普通の復讐モノは世に溢れているから、何とかアイデンティティーを出そうともがいた感はある(その努力に免じて星をひとつ足した)。

    復讐する側は読者の同情を誘う被害者で、復讐を遂げて終了、ではなく、復讐する側もろくでなしで、結局地獄行き、という展開があったのも、そこまでオリジナリティーがあるかは別として、一捻り加えようとした意向はわかる。

    だが、残念ながら、作品の大部分は空回りである。

    まず、復讐代行業者の目的(業者であるから目的は本来、利益のはずだが)やルールや信条みたいなものが、よくわからない。
    このあたり、シビアにやっておかないとリアリティーもクソもなくなるが、圧倒的に設定が緩い。

    極めつけは、おそらく本作の最大のアイデンティティーであるはずの、「物語が裏返ったわ…」である。
    要するに、復讐のエピソードを、「シンデレラ」とか「かちかち山」とか、童話や昔話に不意になぞらえるのだが、これのとってつけた感が半端ではなく、完全にすべっている。
    努力は認めるが、核のところでここまで失敗していると、高評価は難しい。

    • 3
  7. 評価:3.000 3.0

    死ぬ気で愛して

    主人公二人の罪を容易に肯定できるかは別として、作品のスタート地点では、私は二人に幸せになってほしいと願った。
    私は阿呆なロマンチストであるから、独善的であれ何であれ、愛を応援してしまうフシがある。

    しかし、である。
    読み進めるにつれて、二人を応援する気持ちは薄れていった。
    これは、他作品との比較で申し訳ないが、「私の正しいお兄ちゃん」という傑作を読んだときとは全く逆の感情の動き方だった。
    なぜだろう。

    「私の正しいお兄ちゃん」のレビューの中で、私は、主人公の二人が、嘘も秘密も欺瞞も罪も、全て受け止めて背負って、必死で許し合おうとしながら、互いのことだけは失うまいと、懸命に生きている、という意味のことを書いた。
    それが愛し合うってことなんじゃないか、と書いた。

    本作の二人は、違う。
    ものすごく冷たい言い方をすると、覚悟がない。
    二人が上手くいかないのは、基本的に、互いの過去の傷のせいだ。
    それにまつわる、自らの弱さのせいだ。
    その弱さに対しての向き合い方が、なってない。

    自分の弱さとの向き合い方というのは、二つしかないと思う。
    あくまでそれを克服するために努力をするか、弱さを愛するか、どちらかである。
    どっちにしたって楽じゃない。
    でも、本作の二人には、そのどちらにも必死になっていない。
    ちょっと雑に言えば、自分の弱さに、流されているだけだ。
    たから、受け止めることも背負うことも許し合うことも守ることも、どこか浅薄に感じられてしまう。

    何というか、もっと必死で愛そうとしてほしかった。
    何となくの幸運で続けてゆけるほど、あなたたちが選んだ愛は甘くないよ、と思った。

    • 4
  8. 評価:3.000 3.0

    丁寧さは買う

    猟奇犯VS盲目ゆえに他の感覚が異様に発達した女子高生の話。

    私は基本的には猟奇大好き一般ピーポーなので、題材としては楽しく読めた。
    また、主人公の女子高生の設定も、まあ多少の無理はあるけれど、やりすぎの域には達しておらず、漫画としてはセーフのラインかと思う。
    突っ込みどころだらけ、ということもなく、すんなり読めた。

    サスペンス漫画としては凝った構成で、わりに丹念に、また細かく作られていて、その丁寧さには好感を持った。
    これを原作なしでやっているのだから、なかなかのものだと思う。

    ただ、これは難しいところなのだけれど、丁寧に作られた「過程」の部分が楽しいかと言えばちょっと疑問で、優れたサスペンス漫画にある高揚感とか、緊張感とか、そういうものはイマイチ編み上げられていない、という印象を持った。

    • 4
  9. 評価:3.000 3.0

    取り返せないズレ

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    私はとにかく「美しき女性の殺_人鬼」という設定が苦手で、「そんなのいるわけないやん」と常にいっきに冷めてしまうのだが、それはあくまで「現実枠」内の作品の話である。
    本作は一種のファンタジーなので、それほど抵抗感なく読めた。

    簡単に言うと、残夢という魔女みたいな女が、超能力みたいなもので善良な人間たちを次々に殺_人鬼に変えていく。
    ただしまあ、読み始めたときに期待していたものとは大きくズレがあるのも事実で、奇怪な連続殺_人の真相が上記のようなものだった、という展開には、「はあ」という感想しか出てこない。
    そのズレによる違和感をひっくり返すような何らかの魅力があったかと言えば、それは甚だ疑問である。

    • 1
  10. 評価:3.000 3.0

    色褪せた

    90年代というホラー漫画全盛期の作品で、一部ではカルト的な人気を誇るらしいという話を聞いて、ホラー漫画好きの私としては、半ば教養科目のようなつもりで読んだ。

    が、別に今の時代に読まなくても、というのが正直な感想であった。

    悩みを抱える登場人物が怪しげな店を訪れ、望みを叶えてもらう代わりに酷い目に遭う、というのが話の基本線で、当時はそれなりに新鮮だったのかもしれないが、今となってはあまりに手垢にまみれた設定であるし、それ以上の何かを見出すことは難しかった。

    「色褪せない名作」とか「不朽の名作」とかいう言葉があるが、逆に言えば、多くの作品は時代とともに色褪せ、朽ちてゆくということだ。
    それが悪いというわけではなく、それが普通だ。

    これなら、犬木加奈子の「かなえられた願い」という漫画の方が、今読んでも、余程楽しい。

    • 2

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