2.0
乱歩が泣いている
単独の漫画作品として見れば、それほど悪くはなかった。
ミステリと呼ぶにはあまりに大雑把に過ぎるし、アニメチックな絵柄も気になるが、ポップで勢いはあり、「探偵調」のアクション漫画として読む分には、まあ、許容範囲ではなかろうか、と。
しかし、馬鹿言っちゃいけない、本作は「明智小五郎」を名乗っているわけだ。
この一点は、どうしても許容できなかった。
小学校の頃、乱歩が子ども向けに書いた探偵小説を読んで、生まれて初めて好きになった探偵が明智小五郎だった。
だから、余計に許せない。
いくら何でもやりすぎだ。
例えば、だ。
「ジョジョ」ではない漫画で空条承太郎という学生帽の人間が出てきて、「オラ、ワクワクすっぞ!」とか言われて許容できますか?
「ドラゴンボール」ではない漫画で孫悟空という胴着の人間が出てきて、「ジッチャンの名にかけて!」とか言われて許容できますか?
私は無理だ。
そのくらいのことを、この漫画はやっている。
かといって、明智小五郎という設定を取っ払ってしまうと、乱歩作品へのオマージュというかパロディというか、そういう部分が全て死んで、作品の機能が停止する。
もう少しまともに明智小五郎を描いてくれたなら、それなりに読める漫画にはなったと思うが、これでは、乱歩が泣いている。
- 5
探偵明智は狂乱す