rokaさんの投稿一覧

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51 - 60件目/全512件
  1. 評価:1.000 1.0

    感情が死んだ

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    ギャグ漫画からゾンビ漫画にシフトチェンジする話。

    私はこういう漫画や映画を「ジャンル崩壊系」と呼んでいる。
    例えば、という例を挙げること自体がネタバレになってしまうので、漫画の具体例を出すのは避けて映画にするが、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」なんかがそうである。
    ちなみにあれも、この漫画と同じで、途中からいきなりゾンビ映画にジャンルが変わる。

    この手法はサプライズを得やすい代わりに、一定のリスクがある。
    上手く決まれば、いい意味で「騙された!」という爽快感をもたらすのだけれど、基本的に人は「そのジャンル」を望んで足を踏み入れているわけだ。
    例えば、「ラブストーリーかと思ったらホラーじゃん!」という作品があったとするが、そもそも、ラブストーリーを手に取る読者はラブストーリーが読みたいと思っているわけである。
    その先行した願望を超えて、「でも、面白かった」と思わせられれば成功だけれど、「いや、ラブストーリーが読みたかったんですけど」と白けられてしまうリスクは常にあるよ、ということだ。
    だから、先の例で言えば、本来ホラーを読みたい人に読んでもらえるのがいいわけだけれど、ホラーを望む読者は一見ラブストーリーに見える作品を手に取らない、というジレンマが生じる。
    「いや、これ実はホラーで」というのはネタバレになるからもうアウトなのだ。
    そういうわけで、色々と難しい手法だと思う。
    それだけに、ジャンル崩壊系の作品を楽しめたときには、他では得られない種類の感慨があったりするのだけれど。

    まあ、色々書いたけど、本作はそういうことを論じられる次元にない。
    私は書くことがなかったから、書いただけだ。

    本当に酷い。
    序盤は一応ギャグ漫画の体裁なのだが、申し訳ないけれど、これがもう、形容の仕様がないくらいつまらない。
    それがただ、ギャグに片足を突っ込んだ状態のまま、これまた絶望的につまらないゾンビ漫画に移行する。

    私は読んでいるうちに自分のあらゆる感情が死んでゆくのを感じたし、だから、ジャンルが崩壊しようが何しようが、サプライズもクソもなかった。
    サプライズというのも感情であるから、感情の死んだ読者となった私には、もはや何も感じられなかった。

    • 7
  2. 評価:2.000 2.0

    受け入れがたい浅はかさ

    娘を殺した犯人に残忍な復讐をして実刑を受けた主人公が、出所後、世間から虐げられ、殺_人ビジネスみたいなことをやっている人間に拾われる、という話。

    申し訳ないが、私は主人公がどうしても嫌いで、作品に乗っかれなかった。
    別に主人公を好きにさせることだけが作品の能ではないが、この手の漫画は、主人公に肩入れするか、共感するか、少なくとも同情するか、というモードに入れないとどうにもならないと思う。
    私には無理だった。

    先に断っておくが、私は多分、倫理観が一般の基準より低い。
    だから私は、主人公の復讐を否定しているのではない。
    残忍な方法も全く否定しない。
    好きにやったらいいと思う。

    私が決定的に受け入れられなかったのは、出所した後に職場を次々にクビになるという経験をして、「俺はそんなに間違ったことをしたのか!?」とか思っちゃう、主人公の絶望的な頭の悪さ、想像力のなさである。

    おいおい、じゃあどうなると思っていたんだ。
    私はそれが聞きたい。
    残虐なやり方で復讐を果たしてムショから出てきたら、皆が「よくやった!」って拍手してくれるとでも思っていたのか?
    「過去は過去、うちでやり直せよ」とか言ってくれる親切な工場長でも現れると思っていたのか?

    阿呆か。

    世間から爪弾きにされる覚悟もなく、拷_問つきの復讐をやったのか。
    その浅はかさに対して、私は軽蔑の念しか覚えなかった。

    どんなに不幸でも不運でも、自分に同情する復讐者なんて、私は見たくはない。

    • 10
  3. 評価:3.000 3.0

    清く正しくグロテスク

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    面白かった。
    いい意味で、頭を空っぽにして楽しめた。
    さながら、サイコ野郎の見本市。

    昨今、「サイコパス」という言葉を誤用した上にそれを売りにする漫画が多いことに辟易していたが、そういう鬱陶しい漫画とは、全く違った。

    なぜ、昨今の「サイコパスもどき」漫画がウザいのか。
    それは、現実のサイコパスについての知識を持たないままに、あくまで「現実枠」の中で、「こんな異常者、現実にいるかもしれないよね、怖いですよね」と下手なアピールをしてくるからだ。
    それをやりたいなら、ちゃんと勉強しなさい。

    本作は、違う。
    数々の異常者たちを、ハナから「現実枠」の中で描こうとしていない。
    つまり、ある種のリアリティーを始めから捨てた上で、あくまでフィクションとして「現実にいるわけねえ奴ら」をハイテンションで描ききることに集中している。
    実に適切にグロテスクなエンターテイメントであり、好感度は高かった。

    しかし、残念ながら、露骨な打ち切りである。
    漫画って大変だなあ、結構面白かったのになあ。
    終盤、おそらく打ち切りが決まったあたりでは、素人目にもわかるくらい作品のテンションが落ちていて、そのぶん、評価は厳しめになってしまった。

    あと、別にいいけど、絵柄が「ジャガーン」の人に似てない?

    • 4
  4. 評価:3.000 3.0

    漫画の表現として

    ラヴクラフトの話と、チェーホフの話を読んだ。

    文学に対する愛着やリスペクトが感じられて、好感度は高かった。
    だが、特にチェーホフの話ではそれが顕著なのだが、あまりに活字に頼りすぎている。
    既に小説という媒体でもって描かれている作品であるわけで、それを「わざわざ」漫画にする以上、そこには何かしらの「漫画にした意義」が必要だと思うのだが、それをあまり見出だせなかった。

    ちなみにだが、ラヴクラフトに関しては、この時代から「そのオチ」があったのか、と驚いた。
    これ、誰が最初に思いついたんだろう。
    ラヴクラフトなのかなあ?

    • 3
  5. 評価:3.000 3.0

    その愛を叫べ

    あまりマニアぶるのもどうかと思うが、私は物心ついた頃からの生粋の妖怪オタクなので、こういう種類の漫画にはいささか厳しくなるのは許してもらいたい。

    昭和初期という時代や「奇獣商」という設定には独特の情緒があって、作品の雰囲気は悪くなかった。
    テンポよくサクサク読める点も、個人的には好みだった。
    しかし、何かが決定的に足りない、という不満は、決して晴れることがなかった。

    それは、ひとことで言えば、怪異という存在に対する偏執、ということになるかと思う。
    もう少しポジティブな(あるいは酷な)言い方をすれば、愛情、と言ってもいい。

    もちろん、妖怪変化を描く人間が、妖怪を好きで好きでたまらない、という人間である必要は、本当は、ない。
    別に、大して好きではない妖怪を、作品の「題材」として器用に用いるのも、アリだと思う。
    だが私は、水木しげるチルドレンだ。
    妖怪という訳のわからないものに対して、あれほど過剰で激烈で、それでいて適当で、ただ、どうしようもなく愛してしまう、という向き合い方をした人間によって、私は妖怪を知ったのだ。
    その魂は、水木しげるが鳥山石燕から受け継いだものだし、例えば京極夏彦に受け継がれたものなのだと思う。

    この世界の片隅で密かに妖怪を愛する者として、本作には、ある種の不満と寂しさみたいなものを感じないわけにはいかなかった。

    もちろん、作者が妖怪をどう思っているのか、本当のところはわからない。
    だが、その点が問題なのだ。
    わからない、伝わらない、ということが。
    本当に妖怪が好きなら、作品の中で、もっとその愛を叫べよ。

    • 33
  6. 評価:2.000 2.0

    乱歩が泣いている

    単独の漫画作品として見れば、それほど悪くはなかった。
    ミステリと呼ぶにはあまりに大雑把に過ぎるし、アニメチックな絵柄も気になるが、ポップで勢いはあり、「探偵調」のアクション漫画として読む分には、まあ、許容範囲ではなかろうか、と。

    しかし、馬鹿言っちゃいけない、本作は「明智小五郎」を名乗っているわけだ。
    この一点は、どうしても許容できなかった。

    小学校の頃、乱歩が子ども向けに書いた探偵小説を読んで、生まれて初めて好きになった探偵が明智小五郎だった。
    だから、余計に許せない。
    いくら何でもやりすぎだ。

    例えば、だ。
    「ジョジョ」ではない漫画で空条承太郎という学生帽の人間が出てきて、「オラ、ワクワクすっぞ!」とか言われて許容できますか?
    「ドラゴンボール」ではない漫画で孫悟空という胴着の人間が出てきて、「ジッチャンの名にかけて!」とか言われて許容できますか?
    私は無理だ。
    そのくらいのことを、この漫画はやっている。

    かといって、明智小五郎という設定を取っ払ってしまうと、乱歩作品へのオマージュというかパロディというか、そういう部分が全て死んで、作品の機能が停止する。

    もう少しまともに明智小五郎を描いてくれたなら、それなりに読める漫画にはなったと思うが、これでは、乱歩が泣いている。

    • 7
  7. 評価:3.000 3.0

    民俗学と爽やかさ

    民俗学の研究者が、地方の様々な葬送の慣習から事件の謎を紐解く、というミステリ。
    といっても、本格ミステリではなく、民俗学を題材にしたライトなミステリと思ってもらえばいいかと思う。
    民俗学そのものの扱いも、それほど掘り下げられてはおらず、よく言えばポップだが、物足りなくもある。

    私は大学の専攻で民俗学に近いことをやっていたのもあり、題材としては好きであった。

    ただ、私の勝手な希望だが、ミステリとして民俗学を扱うならば、やはりそこには、人間のグロテスクな情念や、共同体の無自覚な残酷さ、みたいなものを期待してしまう。
    が、よくも悪くも本作のトーンは穏やかで爽やかで、ドロドロしたものがない。
    このあたり、好みの問題と言ってしまえばそれまでなのだけれど、この国の忌みや穢れにまつわる風習が、そんなに爽やかであってたまるか、という思いは、引っかかりとして残った。

    • 3
  8. 評価:3.000 3.0

    単調からの転調

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    自分が望む人間のクローンを作ってもらえるが、クローンの存在は絶対に秘密、クローンの存在を他の人間に知られたらアウト(記憶を消されて生まれたときの知能に戻される)、という話。

    前半はオムニバス的な作りで、設定自体は悪くないと思ったが、話としては掘り下げや広がりがイマイチで、ちょっと単調な印象は持った。

    そのまま低調なオムニバスが続くのかと思いきや、途中から方向性が切り替わり、主人公(というかそれまでは明確な主人公というポジションでもなかったが)がクローン施設を脱出する展開に。
    これはこれでまあ、悪くはなかった。

    前半のオムニバス調が当初からの前フリだったのか、それとも編集者から「これじゃまずい」となって方向転換したのか、私にはわからなかった。
    いずれにしても、いささか行き当たりばったりの感があり、悪くはないけど深く入り込めない、という典型的な作品だった。

    • 3
  9. 評価:2.000 2.0

    疲れた

    人が真剣に(かどうかは知らんけど)作ったものに罵詈雑言を浴びせるなんて、本来どうかと思う。
    客が金さえ払えばどんなクレームをつけてもいい、そんなわけがないのと同じで、読者が作品に何を言ってもいい、ということでもないと思う。
    そこにはやはり、一定の節度や品みたいなものがあるべきだとは思っている。

    しかし、申し訳ないが、信じられないほどつまらなかった。

    これで笑える人間がこの世に存在するということを私は信じられないし、本作の売りであるはずの「おことば」は、上手くも深くも何ともない、ただただ痛い、としか思えなかった。

    私はもう、疲れたよ。

    • 3
  10. 評価:5.000 5.0

    「これ系」の最高傑作

    ちょっと雑なカテゴリー化になるが、
    1.短編形式のオムニバスであり、
    2.登場人物が現実の枠を超えた奇妙な出来事を経験する、
    というタイプの漫画を、「世にも奇妙な物語系」と勝手に呼ぶことにする。

    古くは「笑うせえるすまん」とか「Y氏の隣人」、懐かしいジャンプのホラー枠で言えば「アウターゾーン」、個人的に好きな「走馬灯株式会社」なんかがこれに分類されるかと思う。
    何が言いたいって、掃いて捨てるほどあるそのような作品群の中で、過去に数々の名作も生まれてきたこのジャンルの中で、本作が最高傑作なのではないか、ということだ。

    この「世にも奇妙な物語系」には、話の「定型」が決まっているタイプが結構あって、例えば「笑うせえるすまん」であれば、喪黒福造に出会って「ドーン」とやられるのが「定型」だし、「走馬灯株式会社」であれば「自分の今までの人生を記録したDVDを見る」というのが「定型」になっている。
    本作の場合、「アンテン様」という神様に願い事をすることが「定型」なのだが、まずこの「定型」が、作品の装置として素晴らしい。
    設定自体はいたってシンプルで、「ひとつ得れば、ひとつ失う」という人生の鉄則みたいな感じなのだが、そこから生まれる制約や矛盾、得るものと失うもののバランスといったところから、哲学的な深みを感じさせつつ、しかもポップに物語を紡ぐ様は、芸術的ですらある。

    そして、明確な「定型」がありながらも、話のバリエーションの振れ幅は尋常ではなく、背筋が寒くなるようなホラーから、抒情的なハートフルストーリーまで、どこを切り取っても完成度が高く、隙がない。
    舞台設定も、現代から、戦後から、江戸時代あたりから、と多岐に渡るが、これは、アンテン様が「神」であればこそ可能な設定の自由度であり、また、アンテン様が長きに渡り、人間の本質を見つめ続けてきた、という重みも感じさせる。

    アンテン様、という「神様」のあり方は、何だかとても魅力的で、しっくりきた。
    私は基本的には無神論者だし、多くの日本人は本質的にそうだと思うが、こういう「神様」がすっと入ってくる読者は多いかと思われる。
    そういう意味では、実に日本的な作品でもある。

    私は、「私とワルツを」でボロボロ泣いてしまった。
    大人になってから、漫画でこれほど泣いたことは多分ない。

    • 18

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