rokaさんの投稿一覧

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141 - 150件目/全214件
  1. 評価:4.000 4.0

    奇妙なリアリティー

    パパ活、婚活、という現代的な題材を扱った漫画だが、そのリアリティーは、ちょっと独特である。
    ただ現実をなぞって、その暗部を晒す、というような漫画ではない。

    特に、一話目のパパ活のエピソードは、本当に単純なリアリティーを追求するならば、この展開は「ナシ」だろ、と思った。
    「現実のトラブル」の顛末としては凝りすぎているし、練りすぎている。
    現実はもっと単純に醜悪であり、そうであるがゆえに、恐ろしい。

    しかし、である。
    見方によっては、現実に既に起きていることを模倣して描くだけならば、フィクションとしての価値なんてどこにあるんだ、ということになるかもしれない。
    あくまで、フィクションならではのことをやりながら、それでもリアリティーを損なわない、というのが、作者の腕の見せ所なんじゃないかしら、と。
    この漫画からはそんな意気を感じたし、それは全面的に支持したいと思った。

    そして、フィクションにおけるリアリティーとは何なのか、ということをあらためて考えた。
    少なくともそこには、「出来事としてのリアリティー」を超えて、現実を生きる人間の感情や本質を切り取る正確性が不可欠なのだろうと思う。
    そういう意味では、間違いなく、リアルな作品だった。

    • 2
  2. 評価:4.000 4.0

    モノローグの破壊力

    原作の小説がある作品。
    小説は当たり前だけれど、「言葉」で勝負する。
    しかし漫画は「画」と「言葉」だから、言葉に頼りすぎると上手くいかない。
    というのが、小説の漫画化にあたって難しいことのひとつではないかと思う。
    その点、この漫画はなかなかバランスよくまとめてきたな、という印象を持った。

    ノスタルジックで、イノセントで、そうであるがゆえにおぞましい、というような空気感も、原作の利なのだろうが、巧みに表現されていると思った。

    「画」と「言葉」の均衡を上手に保ちつつ、ここぞという場面では、原作そのままの、パンチのある「言葉」をガツン、とぶつけてくる。
    そんなの、ずるいっちゃずるいけれど、原作を活かす、というのはつまりそういうことなのだろう。

    一話目の「隠れ鬼」のラストのモノローグの破壊力は素晴らしく、「こういう言葉に出会いたくて小説を読むんだよな」としみじみ感じた。
    思わず、未読だった原作を読んでしまったくらいである。

    • 8
  3. 評価:4.000 4.0

    正常と異常の間で

    昔、「カッコーの巣の上で」という映画を観た。
    雑に言えば、正常と異常の境界を問いかけるような映画だった。
    それを、思い出した。

    作者自身の経験から、精神科のリアルな日常が語られる。
    この「リアル」がよかった。
    本作の「リアル」は、「取材」ではなく、「経験」した人間にしか語れない種類のものだ。
    つまり、「出来事」が正確である、というだけのリアリティーではなく、現実に対峙した人間(作者)が何をどう受け止め、考え、感じたか、というリアリティーである。

    素晴らしいのは作者の位置づけで、彼女はただの「ナース」でもなければ「観察者」でもない。
    彼女はおそらく、「ちょっと何かが違えば、私もここにいたかもしれない」という意識で、絶えず患者に接している。
    だから、彼女の分析は、客観的でありながら、決して冷たくはない。
    「正常」サイドから「異常」を描く、というスタンスではない。
    彼女自身が、はじめから正常と異常の間に立っている。
    だから、精神科の患者たちを、あまりに普通に「同じ人間」としてフラットに見ることが出来ている。
    そういう印象を受けた。

    正常と異常の間に、自分は、立っていた。
    その境界をまたいだ経験をした。
    それこそが、彼女が「精神科ナースになったわけ」なのだろうし、ことによると、彼女にとってこの仕事は、天職と呼べるかもしれない、と思った。

    その、少し危うい、でも正直で真っ当で、自分を偽らない立ち位置が、私は好きであった。

    • 15
  4. 評価:4.000 4.0

    それでも、人生は続く

    夫が死んだ。
    ずっと男に寄りかかってきた人生だから、どうしたらいいかわからない。
    そんな主人公は、現代的な価値観から言うと「駄目な女」かもしれないが、私は好感を持った。
    その理由は明確で、自分がどういう人間であるかを、自覚しているからだ。
    弱さとか愚かさというものは、それを自覚した時点で、もう半分くらいは救われているんじゃないかと思う。
    主人公が前に進めたのも、自分がどういうふうに生きてきたか、という事実から逃げなかったことが、出発点だったのではないかと私は思った。

    誰かを愛せることは、素晴らしい。
    でも、残酷なことに、「生きてゆくこと」は、それとはまた別の問題なのだ。
    多分。

    一人の女性が専門的なスキルを身につけることで自立してゆく、という非常に現代的な漫画だけれど、古い価値観を攻撃するようなタッチではなく、「愛は消えたり奪われたりすることもあるけれど、それでも、人生は続くのよ」と優しく諭すような漫画だと思った。
    その優しさが、私はわりに好きであった。

    • 19
  5. 評価:4.000 4.0

    片目と両目

    まだ序盤なのだが、一種のサスペンスとして私は読んだ。
    怖い。

    作品における「人間の怖さ」の描き方にも色々あって、例えば、異常な人間が私たちのすぐ傍で暮らしているかもしれない、みたいなのはよくある話だ。
    本作はそうではなくて、「自分のよく知っているつもりだった人間が、実は全く別の顔を持っているかもしれない」という恐怖を描いている。
    よりにもよって、夫と、親友である。
    怖いだろ、そんなの。

    「たいがいのことは嘘の笑顔でできている」、現実がそこまで極端かは別として、それがこの漫画の世界観をそのまま表している。
    「あなたの信じているそれって、嘘かもしれないじゃん?」と言われているような気がして、心がざわついた。
    そういう意味では、実に嫌な漫画である。

    主人公が母親に言われた、「結婚するまえは両目を開いて相手を見て、結婚したら片目を閉じなさい」という言葉は、象徴的であり、また、皮肉でもある。
    それは確かに結婚生活の秘訣ではあるのかもしれないが、実際には、恋に落ちた相手に対して、「両目を開いて」いることは難しい。
    そしてまた、愛してしまった相手に対して、「片目を閉じて」いることも難しい。
    もしかしたら私たちは、片目を閉じたような状態で恋に落ち、結婚した相手を両目で見つめるような生き方をしがちなのかもしれない。

    その両目で見つめた先に立っているのが、嘘で上塗りされた偶像ではなく、無条件で愛せるような誰かであるならば、もちろん、幸せなのだけれど。

    • 160
  6. 評価:4.000 4.0

    削ぎ落とされた共感

    「恋のツキ」から飛んできた。

    「恋のツキ」同様、この作品も、一般的な意味での「共感」を削ぎ落としたヒロインで勝負している。
    普通、「いかに登場人物に共感・感情移入させるか」で勝負するものなんじゃないか。
    そういう意味では変化球もいいところなのだが、それでも読ませる力量は本当に大したものだと思う。

    ヒロインの小谷は、通常の価値観からは外れてはいるけれど、そこに、一貫性はある。
    ぶれていないのだ。
    だからだろうか、私は、小谷を嫌いにはなれなかった。
    まあ、好きにもなれなかったが、そんなのは作者の想定内だろう。

    そして、山下である。
    こいつも本当に駄目なのだか、この少年の小谷への想いは、恋愛のひとつの本質を突いてもいる。
    周りは、言う。
    「そんな女、やめとけ」と。
    読者も、言う。
    「もっといい娘がいるじゃん」と。
    でも、そんなの、関係ないのだ。
    「だって俺は小谷が好きなんだもん」、ということだ。
    愚かである。
    しかしその愚かさは、私のものであり、もしかしたら、あなたのものでもあるのではないか。

    誰に何と言われても、あるいは自分自身ですら、「この娘とじゃ幸せにはなれそうもないな」とわかっていても、それでも、この人がいい。
    「この人と幸せになりたい」、それも、恋だろう。
    けれど、「不幸になるとわかっていても、この人がいい」、それも、恋じゃないのかな。
    私はそう思うから、山下の愚かさを、笑えなかった。

    • 20
  7. 評価:4.000 4.0

    流氷の話

    「あの事件」をモチーフにした第一話を読んだときは、印象は悪かった。
    少年の実像に迫るようなリアリティーを感じなかったし、異常な事件を扱ってセンセーショナルな作品にするぜ、というあざとさすら覚えて、気に入らなかった。

    しかし、第四話の「流氷」の話まで読んで、感想が変わった。
    「子どもたちの犯罪」をテーマにしたこの漫画に流れている一貫した悲しみみたいなものに触れた気がした。
    それは、本当は別の未来があり得たかもしれないのに、様々な不運や愚かさから、自らその未来を手放してしまった子どもたちを思っての、悲しみではないかと感じた。

    作品は、そんな子どもたちを擁護するでも非難するでもなく、ただ、見つめている。
    そのスタンスは、嫌いではなかった。

    • 9
  8. 評価:4.000 4.0

    私の負け

    主人公の女にも、その彼氏にも、終始イライラしながら読んだ。

    「これを逃したら、一生誰にも選ばれないかもしれない」。
    その不安感はわからないでもないが、私は嫌いだ。
    一生一人でいることよりも、一緒にいたくない誰かと一生を過ごすことのほうが、遥かに恐ろしいと私は思う。

    男(彼氏)は男で、パートナーに対する最低限の礼儀を欠きすぎている。
    だから浮気をしていいかは別としても、この男に同情の余地はない。

    「ときめき」ねえ。
    まあ、別にいいけど、それは本質じゃない気もする。
    単なる、きっかけだ。
    問題は、もはや愛がない関係を正視せず、何も築こうとしない女であり、愛がないことに気づこうとすらしない男であって、その双方の愚かさに、私は苛立ったのだった。

    私が応援したくなったのは、イコ君だけだ。
    彼は幼く、無謀で、先の二人とは違った意味で愚かだけれど、無邪気なだけの少年でもない。
    彼氏を挑発して啖呵を切るシーンには、鳥肌が立った。
    こいつ、男じゃん。
    しかしまあ、主人公とイコ君に幸せになってほしいとも思えないのだが。

    さて、色々と文句はつけたが、私はこの漫画を評価している。
    だって、登場人物にイライラしながらも、結局のところ、その愚かさのディテールに引き付けられて、40話以上も読んでしまったのだ。
    そんなの、どう考えても私の負けである。

    • 358
  9. 評価:4.000 4.0

    絶妙な「ずれ」

    「青野くん」から飛んできた。

    荒削りではあるけれど、この作者の才能は、はっきり表れていると思う。
    それは、ひとつには、「ずれた」人間を描く巧みさ、ではなかろうか。
    「ぶっ飛んだ」漫画のキャラクター、ではない。
    その「ずれ」は、もっと些細で、微妙なものだ。

    誰かの人格について、あるいは誰かと誰かの関係性について、「何かおかしい」と思うけれど、そのおかしさを、上手く指摘できない、というような、ずれ。
    それを繊細に描くことは、「イカれた」キャラクターを創作するよりも、ずっとさじ加減が難しい気がする。
    そういう、才能なのではないか、と。

    その「ずれ」は、絶妙すぎて、リアルすぎて、はっとするし、ちょっと怖い。
    しかし、そのような「ずれ」は、ある意味では、私たちの誰もが持ち得るものでもあるのだ、と思う。

    素晴らしいのは、そういう「ずれた」人々に対して、作者が漫画の「ネタ」として扱うのではなく、確かな愛情をもって表現しようとしていることだ。
    みんな、どこか、変。
    でも、見方によっては、私たちは皆、そうだ。
    だから、作者の「ずれた」人々への愛情というのは、ほとんど、人間を描くことに対する愛情と、等しいのではないか。
    そうでなければ、こんな漫画は描けないと思う。

    • 22
  10. 評価:4.000 4.0

    不適合読者

    今さらながら読了。

    期待しすぎたのかもしれない。
    いい作品だとは思ったが、そこまで入り込めなかった。

    その一番の理由は、結構な割合でファンタジーの要素が入っていること。
    ファンタジー自体を否定する気は全くないのだが、この漫画には、どうにもそれが相応しくないような気がしてならなかった。
    私は妙な居心地の悪さみたいなものを感じながら読んだし、その違和感は、最後まで消えなかった。

    あくまで「現実枠」の中に収まる漫画であったなら、評価は変わっていたと思う。
    しかし、それではまるで別の作品になってしまうし、作品の完成度を無視できない以上、相応しくないのは、作品ではなく、読者としての私であるのかもしれない。

    • 11