3.0
追いつかない画力
単純に「巨大な虫が…」というパニックでごり押しするのではなく、政府、製薬会社の思惑と、自衛隊、一般市民の動きを丁寧に描こうとしている点には、非常に好感を持った。
ただ、いかんともしがたいのは画力で、漫画である以上、どうなんだ、と。
ストーリーが丁寧に作り込まれた生物パニック映画でも、モンスターのCGが浮きまくりだったら、やはり冷めてしまう。
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37位 ?
単純に「巨大な虫が…」というパニックでごり押しするのではなく、政府、製薬会社の思惑と、自衛隊、一般市民の動きを丁寧に描こうとしている点には、非常に好感を持った。
ただ、いかんともしがたいのは画力で、漫画である以上、どうなんだ、と。
ストーリーが丁寧に作り込まれた生物パニック映画でも、モンスターのCGが浮きまくりだったら、やはり冷めてしまう。
それなりに面白く読んだのだが、あまりにも「ゲーム」だ。
感覚としては「プレイできないゲームを読んでいる」ないし「グラフィックの綺麗なゲームを他人がプレイするのを見ている」というのに近かった。
正直、これなら自分でゲームをプレイしていたほうがいいんじゃないか、と感じてしまった。
ただ、作者のゲームに対する愛着は伝わった。
「ウシジマ君」のヒット以来、こういう「裏社会もの」の漫画は一気に増えた印象があるが、その大体が「ウシジマ君」に遠く及ばないのは、作品の中で「哲学」を提示できていないからではないかと思う。
陰惨な裏社会の世界観を描くことは、ある程度の技術があれば、多分できる。
だってそんなもの、現実にあるんだから。
本作も、そうだった。
けれど、その中で漫画のキャラクターが生き抜く様を魅力的に見せるのは容易ではない。
現実の世界観のインパクトに、漫画のキャラクターの魅力が負けてしまっては、漫画の意味なんかない気がする。
そうならないためには、半端ではなく恐ろしい現実に立ち向かうだけの強い哲学がなければいけない。
が、難しいよな、そんなの。
あらためて、「ウシジマ君」はすごいと思った。
「怨み」というおどろおどろしいテーマに反して、作品の手触りは軽く、爽やかですらある。
ひとつには絵柄のせいもあるだろう。
このアンバランスな軽さを、どう感じるかで、好みが分かれそう。
読みやすくてポップだ、と肯定的に思うか、物足りないと、感じるか。
個人的には、もっとどろどろしたものが欲しかった気もする。
主人公三人がそれぞれ違う色合いで、パリッとキャラは立っている。
テンポのよさも手伝って、退屈せずに読めたことは確か。
ただ、正直、あまり共感はできなかった。
個人的な問題で、この漫画に責任はないのだが、大人の条件のひとつは、孤独を受け入れられることではないかと思っている。
確かウシジマくんもそんなことを言っていた。
嫌な言い方になってしまうが、四十代、孤独くらい引き受けろや、と思ってしまった。
ただまあ、この作品には一貫して「持つべきものは友」という軸があるので、これはこれでいいのかもしれない。
「それが四十代の結論でいいのか」という思いは残るが、それは、四十代を経験したことのない私が言うことではないかもしれない。
基本的にはB級テイストだが、意外と丁寧に組み立ててあるし、終盤のどんでん返しも上手く決まっていたと思う。
ただ、この手の漫画は主人公サイドに感情移入できる対象がいないと、どうにもテンションが上がらない。
その点は、残念。
あと、仮にも一人の一般ピーポーの悪霊だか怨念だかが、あそこまで派手になるのはいかがなものか。
ノれる曲とノれない曲って、やっぱりある。
「ノリのいい曲」だからって、ノれるとは限らない。
このリズムに、メロディに、ノれる人がいるのはわかるけど、自分はノれない。
そういうことって、ある。
それが、好みというものである。
そんな音楽と一緒で、「ノれれば楽しいんだろうな」と思いつつ、私は、ライブハウスの片隅でしらけているタチの悪い観客のような位置で、この漫画を眺めていた。
どう考えても「そこまでやる必要あるか?」という漫画だけれど、やりすぎの美学みたいなものがあって、その過剰さに乗っかれれば、とても楽しい作品だと思ったし、無視できないオリジナリティーのある漫画だとも感じた。
皮肉でも嫌味でもなく、ノれなかった自分が、残念だ。
個人的に、都市伝説の類は非常に好きである。
漫画としては、都市伝説を上手に広げて、ストーリーにした印象。
既存の都市伝説だけでなく、オリジナルも入っていて、新鮮味はある。
各エピソードにはちょっとしたひねりが加えられていて、退屈せずに読めた。
ただ、安心して読める反面、都市伝説に対するあっと驚くような新解釈や、ぞっとするような「踏み込み」には乏しく、もう少しおどろおどろしいものが読みたかった気もする。
あくまで、都市伝説をモチーフにした、ライトなホラー、という位置づけか。
画力は完全にマイナス。
だが、絵柄はホラーに合っている。
特にホラーやサスペンスの場合、技術的な問題とは別に、絵柄の「合う・合わない」があり、その点は、セーフではなかろうか。
ホラー部分とミステリ部分のバランスがよく、怖がらせる一辺倒になっていたらグダグダになっていたところを、上手く回避した。
荒削りではあるものの、荒削りゆえの洗練されないパワーを感じる、なかなかパンチのきいたホラー。
最近よくある「ゲームもの」の中でも、際立って空っぽ。
個々の死には何の重みも価値もドラマもなく、「ゲーム」の真意も狙いも冗談みたいなもので、「意味づけ」を徹底して拒否しているように思える。
特に「バスケ少年」のシーンなんかは、漫画におけるドラマチックな死、に対するアンチテーゼのようだった。
それを薄っぺらさと感じるか、潔さと感じるか。
まあ、短い間ドキドキして、後には何も残らない、そういうジェットコースターみたいな漫画も、あっていいと思う。
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