rokaさんの投稿一覧

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101 - 110件目/全151件
  1. 評価:5.000 5.0

    「お約束」の拒否

    読み始めると、止まらなかった。
    何ポイント献上したかわからん。
    私がオムニバスを好きなこともあるが、それにしても、毎回、見事な安定感、そしてテンポのよさ。

    何が凄いって、作品として、一貫して冷徹にルールを守っているところだ。
    主人公は依頼人の寿命と引き換えに呪殺を請け負う死神みたいな存在だが、あくまで漫画の主人公だ。
    だから普通は、もうちょっと融通が利く。
    つまり、ルールを破る。
    漫画の展開として、都合のいいことをやる。
    具体的に言えば、「いくら何でもこの人が死ぬのは可哀想だろ」という人は、殺さない、とか。
    言い方は悪いが、「死んでもいい」と読者が感じるようなキャラを、被害者に設定する、とか。
    一度は請けた依頼でも、それが依頼人にとってあまりに悲劇的な結末(例えば勘違いによる呪殺など)をもたらす場合には、それを教えてやってキャンセルさせてやる、とか。
    そういう展開は、基本的に、ない。
    そういう甘さが、この漫画にはない。

    物語としてサクッと感動を演出できるはずの「お約束」よりも、冷徹にルールを守ることを選んでいる。
    そのぶれない姿勢は、作品として、とても美しいと思った。

    • 36
  2. 評価:5.000 5.0

    それは愛か

    「永遠の恋人」を探す不気田くん。
    しかし、彼の不遇な運命により、彼の見初めた女性たちは次々に命を落とす。
    主に不気田くんのせいで。
    ところが、その度に新たな永遠の恋人がソッコーで見つかる。
    この変わり身のはやさ。
    そんで、その女性もやはり死ぬ。
    不気田くんのせいで。
    もう笑うしかない。
    わたしはそんな不気田くんが大好きである。

    愛は、難しい。
    不気田くんのやっていることは最悪のストーカー行為だが、もし彼の想いが実ったならば、それは、美しい愛になり得てしまうわけであって。
    いや、実ろうが実るまいが、愛は、愛なんじゃないの、と。
    容姿が不気味だったりアプローチがちょっと変わっている(ちょっとどころじゃないけどね、実際)と、愛じゃなくなっちゃうのか、と。
    どうなんでしょうか、と。
    そういう意味で、この作品は、非常にインパクトのあるホラーであり、一方では完全にギャグであり、そして、愛とは何なのかを問いかける、異色のラブストーリーでもある。

    ラストの「ある愛の詩」には、うっかり感動してしまった。
    不気田くんは、自分の愛の敗北を認めたのだと思う。
    しかし私は、不気田くんの愛もやはり、愛だったのだと認めてあげたい。
    懸命な愛し方では、なかったかもしれない。
    それでも、愛は、愛だったのではないかと。
    だからこそ、敗北を認めた不気田君が、醜い彼が見せた全ての姿の中で、唯一、美しかったのではないかと。

    • 6
  3. 評価:5.000 5.0

    一話の中に、人生が

    様々な人々の運命と人間模様を、静かに、ドラマチックに描いた作品。

    シリアスで、悲惨だが、どこか滑稽で、優しくて、私の大好きなコーエン兄弟の映画を思わせるような漫画であった。

    基本的に一話完結(サイトだと二話)で、手軽に読める。
    しかし、一話の密度は非常に濃い。
    短い尺の制約の中で、毎回ここまでしっかり「人間」を描けるものなのか、と驚いた。
    そこにあったのは、まぎれもなく、誰かの「人生」であった。

    古い作品ではあるし、色々な描写に時代を感じる。
    けれど、それらが違和感なくすっと入ってくるのは、描かれている人間の姿が、それだけ普遍的で、核心を突いているということなのだろう。
    今も昔も、人間は等しく愚かで、哀しく、そして、素晴らしい。
    そんな、皮肉と温かみをともに感じた。

    小さな一話の中に、毎回確かな人生が詰まっている。
    そんな漫画を、私はあまり知らない。

    • 22
  4. 評価:5.000 5.0

    倫理を、漫画に

    高校のとき、倫理の授業があった。
    教師は、確か曹洞宗かなんかの住職で、酒好きの破戒僧だったが、授業は面白かった。

    何が面白かったのか、上手く説明できない。
    ただ、十七歳の私はおそらく、生きる、ということについて、今よりずっと必死に悩んでいたのだろう。
    そして倫理という学問は、私たちが生きる、ということに関して、何かしらのヒント(答え、ではなくて)を与えてくれるものだと感じられたのではないか、と今では思っている。

    倫理という学問に、唯一の最終的な正解はない。
    それは、私たちがどう生きるべきかという命題の答えが、唯一ではあり得ないからだ。
    だがもし、「倫理の授業を漫画にしろ」というお題があったなら。
    この漫画は、100点満点に近い回答なのではないかと思った。
    それくらい、面白かった。
    是非、多くの人に読んでほしい。

    • 130
  5. 評価:5.000 5.0

    言葉にならない

    今まで読んだ全ての漫画の中で、最も強く感情を揺さぶられた作品のひとつになった。
    だから、たくさん字数を費やしてレビューを書きたいと思った。
    誰かにこの漫画の素晴らしさを喋りまくりたいと思った。
    そして、気づいた。
    「この漫画を読んで自分はこう思った」という感想が、あまりに言葉にならないことに。

    それは、私の言葉が足りないせいだ。
    ただ、この漫画自体、かなり慎重に「言葉」を拒絶している。
    登場人物の内面を語るようなモノローグや「心の声」の描写は、ない。
    この漫画でそれを語るのは「文字」ではない。
    「画」だけだ。
    ほとんどその一本で、作者は勝負している。
    漫画は、雑に言えば、絵と文字だ。
    だから、文字だけに頼らない描写というのは、漫画が漫画であるために、どうしても避けては通れない勝負どころなのだ、本当は。
    でも、ここまで徹底的とは。
    その、強く、潔く、誇り高く、圧倒的に雄弁な表現力の見事さに、私はほとんど畏怖の念すら覚えた。

    そして、そういう表現の漫画だからこそ、逆説的に、「言葉」が輝く。
    何でもないような小さな言葉が、たった十七音の俳句が、あり得ないようなみずみずしい命を持っている。
    この漫画は言葉を忌避しながら、同時に、言葉をとても大切にしている。

    この漫画は、読む人に、きっと何かを残すだろう。
    そしてその何かは、読む人によって、あまりに異なるものになると思う。
    その多様さはきっと、「感想は人それぞれ」という一般論のレベルをはるかに超えているだろう。

    私にとっても、その「何か」は、あって。
    最終話を読んで、私は、自分の中に残ったものを懸命に言葉にしようとした。
    そして、諦めた。
    鉛のようにも宝石のようにも見えたその何かを的確に言い表す才能は、私にはない。
    そして、思った。
    小説も映画も漫画も、そもそもは、こんなふうに「言葉にならない」何かに形を与えるために、描かれるのではないか、と。

    最後のページをめくったときの寂しさを、私はきっと忘れられない。
    嗚呼、もう会えない、と私は思った。
    登場人物たちが、ではない。
    私が、彼らにだ。
    彼らの未来に、私はいられない。
    漫画を読んで、そんなことを思ったのは初めてだった。
    さよなら、と声には出さずに私は言った。

    さよなら、私のロッタレイン。

    • 13
  6. 評価:5.000 5.0

    揺さぶられる

    浅野いにおという作者は、若者の漠然とした不安感みたいなものを描くのがとても上手い。
    その不安感が、時代を反映したものなのか、若者に普遍的なものなのか、個人の問題なのかは、わからない。
    でも、彼らの気持ちは、すごくわかる。

    たとえば、ゆるい幸せがだらっと続くこと、それで満ち足りている気がするんだけど、これでいいんだ、って気もするんだけど、心のどこかでは「本当にこれでいいのかな」って迷いが、「自由」とかいう不確かな魔物の囁きが消えなくて、何かになれる気もして、何にもなれない気もして、何にもなりたくない気もして、だいたい、このゆるい幸せだって、いつ消えるともしれなくて、いつか不意にソラニンみたいな悪い芽が出て、さよならが来るかもしれないじゃん。

    そういう不安感は、彼らのものでもあり、私のものでもあった。
    かつては、という話だ。
    私はいつの頃からか、自然にその場所を抜け出し、ゆるい幸せを守るために生きることを迷わなくなった。
    けれど、かつての思いの名残りみたいなものは、今でも私の中で、ライブハウスの残響のように微かに鳴っていて、それをこの漫画にどうしようもないくらいに揺さぶられた。

    読んだときも、ちょっと泣いた。
    が、翌日、仕事に向かう車の中で、アジアンカンフージェネレーションの「ソラニン」を聴きながらこの漫画のことを思い出して、涙が止まらなかった。
    そんな漫画って、ちょっと凄いな、と思った。

    • 11
  7. 評価:5.000 5.0

    理想的な短編

    短いストーリーの中に、多彩な魅力が詰まっている。
    短編のお手本のような、見事な作品だと思う。

    手軽なミステリであり、切ない友情の物語であり、ちょっとしたファンタジーでもある。
    その、ともすれば違和感を与えかねないファンタジーの味つけが、不思議と自然に作品にマッチして、爽やかで優しい色合いを見せている。

    ラストの松田君の表情が素晴らしい。

    • 11
  8. 評価:5.000 5.0

    容赦ない

    これを読んで、同じ作者の「ミスミソウ」という作品について、何か納得がいった。
    この作者は、恐怖や絶望を表現することに容赦がない。
    「そこまでやるか」ということを、平気でやる。
    その思いきりのよさが怖すぎる。
    加えて、唐突なホラー描写の破壊力も、漫画として素晴らしい。

    しかし、この作品の最大のアイデンティティーは、そういう正統なホラーの枠組みを根底からぶっ壊すほどのパワーで躍動する、○○の存在感だろう。
    完全なバランスブレイカーなのに、あり得ないくらいに魅力的だった。

    絶望的なホラーでありながら、あまりにもぶっ飛んでいる、日本版&漫画版「エクソシスト」とでも呼びたくなる傑作。

    • 31
  9. 評価:5.000 5.0

    空気を読む私たち

    「KY」が流行語になったのは2007年だった。
    その頃からだ、世の中で「空気読めよ」とやたら言われ出したのは。
    ただ、そんな流行語が出来るはるか昔から、「空気を読む」文化は日本では当たり前のものだった。
    どんな文化にもいい面と悪い面があるが、「空気を読む」社会の無言の同調圧力みたいなものに、息苦しさを感じている人は多いだろうと思う。
    だから、凪が共感を呼ぶ。
    私もそうで、凪とはまるで違う人間なのに、非常に共感を持った。
    これは漫画としてすごいことだと思う。
    キャラクター個人の問題を超えて、時代とか社会とかを切り取るのに成功した、ということだから。

    でも、難しい。
    「空気を読むことより大事なことがある」という気づきは素晴らしいけれど、読まなくてはいけない空気の外の世界で、より大事な何かのために生きるのは、簡単じゃない。
    そもそも、その「大事な何か」がよくわからなかったりして。
    そんな、厳しい戦いの物語として私は読んだ。
    本気で凪を応援したくなった。
    中島みゆきの「ファイト」でも歌ってやりたくなった。
    「戦う君の歌を、戦わない奴らが笑うだろう。ファイト!」って。

    そして、我聞の位置づけが素晴らしい。
    駄目な男と思いつつ、私は我聞も応援したくてしょうがない。
    彼はある意味、空気を読む達人だ。
    その才能が、彼を営業部のエースにした。
    でも、一番大切な人の空気、読めてないやんけ、と。
    だから、駄目男。
    そうなんだけど、多分、我聞にとっては、唯一、凪だけが、空気を読まなくていい相手だったのではなかろうか。
    その甘えは、駄目だけれど、もう一度、チャンスを与えてやれないか、と。
    そういう意味では、空気を読むことをやめた女と、空気を読め過ぎるくせに一番大事な空気が読めなかった男の、すれ違いの恋物語でもある。

    あー、二人とも、何か、すげー幸せになってほしい。
    漫画を読んで本気でそんなふうに思ったことは、私にはあまりない。

    • 386
  10. 評価:5.000 5.0

    ストーリーで勝負

    奇抜な設定や一発ネタに頼るでもなく、美麗な作画で魅了するわけでもなく、あくまでストーリー一本で勝負だ、という実に硬派な漫画である。

    話として面白いことはもちろん、それぞれに何かを背負った登場人物たちの描写が丁寧で、しかも説明しすぎず、バランス感覚が絶妙である。
    ぞくぞくするほど引き込まれた。
    「続きが気になる」とはよく聞くが、自分は、読み始めてしまえば、大抵の漫画でそうなる。
    しかし、本作の「続きが気になる」のレベルは群を抜いている。
    「気になる」なんて次元ではない。

    個人的に、ストーリーに偏った漫画は、「なら小説でいいじゃん」と思うことが多いけれど、ここまで見事にやられると、そんな考えは吹き飛ぶ。

    解かれていない謎や伏線(らしきもの)は豊富にあるが、「大丈夫か、ちゃんと回収されるのか」という不安は湧かない。
    「きっと上手くやってくれる」という期待が圧倒的に大きい。
    そんな信頼感すら抱かせる、見事な漫画である。

    • 136