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作品レビュー
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91 - 100件目/全107件

  1. 評価:5.000 5.0

    矢吹丈の哀しみ

    読んだのは高校生の頃だった。
    魅力的なキャラクターの造形、ボクシングの試合の描写のシンプルなエキサイトも印象に残るが、最も忘れがたいのは、矢吹丈という男の哀しげな目だった。
    子ども心に、「この人は、究極的には、誰ともわかり合えないのではないか」と感じたのを覚えている。
    私は矢吹丈に強く憧れながら、同時に、決定的に拒絶されたような気持ちで、ずっとこの漫画を読んでいた。
    そのようなことを漫画の主人公に対して感じたのは初めてだったし、以来、一度もない。

    • 6
  2. 評価:5.000 5.0

    ルールの発明

    既にルールの決まっているゲームをモチーフに作品を描く人はたくさんいる。
    というか、普通はそうだ。
    スポーツというゲーム、バトルというゲーム、恋愛というゲーム。
    その制約の中で、いかに優れた作品を編み出すか、という勝負が、普通だ。
    でもこの作者は、次から次へと、新しいゲームのルールを編み出す。
    その点においては、ちょっと追いつける人がいないんじゃないかと思う。

    • 7
  3. 評価:5.000 5.0

    芸としての短編

    高校生探偵マーニーが、「コナン君」とか「金田一少年」みたいな大袈裟な事件ではなく、もっと小規模な日常の事件を解決してゆく連作短編。

    いやーもう滅法面白かった。
    「フランケン・ふらん」にしても、一話完結の短編ということに関して言えば、この人はもう達人の域なんじゃないかと思う。

    まず、作品の雰囲気がいい。
    この作者の漫画は何ともセンスが欧米的で、日本の漫画とはちょっと違う文脈、古きよきハリウッド映画のそれに近い文脈で作品世界を作っているようなところがあり、独特の味わいがある。
    こういう漫画を描く人って、なかなかいない気がする。

    そして、何が凄いって、その尺の短さである。
    正直、最初は、短い一話の中で性急に話が進みすぎる気もしたが、そのリズムに慣れてくると、非常に心地よいものに感じた。

    この制約のなかできっちり起承転結を編み上げる技術というのは、ひとつの芸と言って差し支えないかと思う。

    削ぎ落とせるものは全て削ぎ落とし、それでいて、本質は確かにそこにあり、可笑しさや哀愁が薫っている。
    そんなのもう、ほとんど短歌とか俳句の世界であって、そういう意味では、欧米的なセンスによって描かれながら、何とも日本的な芸でもって成立しているような、奇異なバランスの光る作品。

    素晴らしい。
    本物の芸に触れるというのは、とてもいいものだ。

    • 5
  4. 評価:5.000 5.0

    異形の傑作

    作品を支えるバックグラウンドの知識量、情報量が圧倒的である。
    考古学、民俗学、宗教学、あと何なのか知らないが、漫画としてはほとんど常軌を逸したレベルだと思う。

    正直、あまりに情報量が多すぎるゆえ、どうしても「文字」に頼った説明が過多になっている感はあり、「漫画」としてはどうなんだ、と感じるところもあった。
    そういう点で言えば、例えば「ギャラリーフェイク」という漫画なんかは、確かな含蓄がありながら、マニアックに走りすぎないバランス感覚があった。
    本作は、違う。
    ひたすらマニアックに、振り切っている。
    しかし、ここまで徹底されると、一種の敬意を込めて、「あり」と認めるしかないとも思った。

    絵の表現は、決してわかりやすい上手さではないが、有無を言わさぬ妙な迫力と説得力があり、作品のトーンには、非常によくマッチしていると思う。

    ずば抜けた含蓄に裏打ちされて、もはや漫画ではない別の何かであるかのような妖気の漂う、異形の傑作。

    • 5
  5. 評価:5.000 5.0

    マサルの純真、ジャガーの悪意

    「マサルさん」と「ジャガー」の違いは、と考えると、それは「悪意」の所在なのではないかと思う。

    花中島マサルは、いわば「天然」系の主人公だった。
    というか、「マサルさん」の登場人物は、誰も彼も天然みたいなものだった。
    あれは、誰にも悪意のない、誰も傷つかない、実に優しいギャグ漫画だった。
    そういう意味でも、他人を貶して笑いに変えることがまかり通るこの世の中で、「マサルさん」は偉大な作品だったと思う。

    しかし、ジャガーさんは全く違う。
    彼は、悪意に満ちている。
    ジャガーさんどころか、ハマーにも、ロボットのハミィにすら、悪意がある。
    「ジャガー」は、「マサルさん」に比べて、かなりの毒を含む漫画であると思う。

    しかし、その悪意や毒を、読者に全く「毒」とは感じさせない。
    ジャガーさんがどれほど悪意に満ちた悪行をはたらこうとも、あくまでそれは、漫画の中では、優しく、マニアックでありながら妙にポップで、爽やかですらあるギャグへと昇華されている。
    このあたりが、うすた京介の稀有な才能なのではないかと思う。

    • 5
  6. 評価:5.000 5.0

    理想的な少年漫画

    「胸が熱くなる」とは、こういう漫画のためにある言葉ではないか。
    たったひとつ残念なのは、少年時代に読まなかったことだ。
    それでも、熱くなれる。
    「HUNTER×HUNTER」と双璧をなす、理想的な少年漫画だと思う。

    • 13
  7. 評価:5.000 5.0

    美醜の果て

    主人公は交通事故で顔に怪我を負い、それを治そうと無茶な整形に手を染めて妖怪のような外見になり、夫に捨てられるのだが、夫の新しい職場に次々と現れては、彼の新生活を破綻させる。
    怖すぎ。

    ただまあ、このへんの描き方は完全にギャグで、主人公の女は、夫の職場に置かれた新装開店祝いの花の中から現れたり、夫が新たに恋に落ちた女を夫の好みでないように整形させたり、発想力とバイタリティーが半端ではなく、私はゲラゲラ笑いながら楽しく読んだ。
    そして、変わり果てた妻を見る度に吐く夫。
    どんだけ胃腸が弱いんだお前は。
    だいたい、いくら整形手術に失敗したからといって、そうはならないだろ。
    骨格変わってるもん。

    そんな中で、この漫画の着地点は、どこになるのかな、と思いながら読み続けた。

    私は、生まれも育ちも外見も、全て「才能」の一種だと思っている。
    突出した頭脳や運動神経の持ち主がもてはやされるのだから、美しい外見の人がもてはやされるのも、当たり前だと思う。
    それを「容姿差別」だとか何とか騒ぐ風潮というのは、本当に下らないと思うし、「見た目で人を判断するのはよくない」みたいな論調はクソ喰らえと思っている。
    どうせお前らジャイ子よりスカーレット・ヨハンソンを選ぶくせに。
    スカーレット・ヨハンソンの内面知ってんのかよ。
    私は知らない。

    まあ、それはいい。
    それはいいのだが、美醜のせめぎ合いの果てに本作が行き着いたのは、「外見より中身よね」とか、「やっぱり見た目よね」とか、そういう次元ではなかった。
    これは、見た目も中身もひっくるめて、人間の醜さを許すというか、醜さを愛する、という漫画ではないかと思った。
    もっと言えば、愛するっていうのは、その人の醜さを含めて受け入れるってことなんじゃないかしら、という漫画ではないかと思った。

    「美しさは皮一枚、醜さは骨の髄まで」という言葉がある。
    この漫画は、その「皮一枚」に縛られて生きる愚かな私たちの、愛の物語なのだと思う。

    あれ?
    祝いの花から妖怪が現れるコメディ路線に流れたのに、いつの間にそんな、崇高さすら漂う愛の物語に辿り着いたのだろう。
    何だが狐につままれたような気分だが、こういうのを、漫画の力業と言うのだと思う。
    星5つはあげすぎな気もしたが、半ば強引に感動させられてしまったので、これはもう、私の負けである。

    • 4
  8. 評価:5.000 5.0

    因習と、運命と、愛と

    「りんごの村」に婿入りした主人公が村の禁忌を知らずに破ってしまったことで、妻が生け贄(的な何か)にされることになり…というストーリー。

    閉鎖的な村の伝承と因習を紐解いてゆく展開はちょっと横溝正史的というか、ある種のミステリーであり、民俗学をバックグラウンドに据えた舞台装置は、なかなか魅力的であった。

    だが、そのミステリーの「着地点」は、犯人がどうとかトリックがどうとか、そういうことにはなり得ない。
    何しろ相手は超自然であって、神様みたいなものだから、「解決」なんてあるはずがない。
    どうしたってミステリーがファンタジーの文脈へと回収されてゆくわけで、そのあたりの落としどころをどう定めるかという部分には結構、注目していたのだけれど、これはもう、見事という他なかった。

    そして、忘れちゃいけない、本作はラブストーリーなのだった。
    ミステリアスで、ファンタジックで、でも何より、ラブストーリーなのだった。
    共同体の中で揉み消され、「なかったこと」として忘れ去られていった愛は、逆らいようのない運命に踏み潰され、吹き散らされていった愛は、昔も今も(それこそ決して「物語」にはならない次元で)掃いて捨てるほどあったのだろう。
    しかし、因習にも運命にも命をかけて抗って、文字通り全てを失う覚悟で守ろうとした、優しくて穏やかだけれど、苛烈で壮絶なその愛の発露に、私は泣いた。

    • 4
  9. 評価:5.000 5.0

    彼が好きな彼女は、彼女が嫌いな彼女

    私は「ありのままでいい」というメッセージが基本的に嫌いである。
    そんな単純に事が済んでたまるか、と思いながら生きている。
    Mr.Childrenの歌にそんなのがあったけど、コンプレックスだってモチベーションだ。
    けれど、この漫画は、刺さった。

    今のところ(現在12話)、自分のありのままを受け入れられない女の子と、彼女にありのままでいてほしい男の子の、すれ違いの物語として私は読んだ。
    これは、難しい。
    私は、主人公の整形も、故郷からの「脱出」も、理解できるし、支持したい。
    たとえ形式上は逃避に見えたとしても、それは、コンプレックスに押し潰されることなく、人生を切り開くための必死の冒険だったと思うからだ。
    しかし一方で、男の子の気持ちも、痛いくらいにわかってしまった。
    けれど、彼が好きな彼女は、彼女自身が消し去りたい彼女なのだ。
    そんな残酷なことってあるか。
    私にはもう、どうしたらいいのか、さっぱりわからない。
    いったいどうしたら、二人が幸せになれるのか。
    あるいは、そんな道は存在しないのかもしれない。
    いずれにしても、この二人の行く末を、見届けたい。

    また、漫画としては、主人公が夢中になっているプレイボーイの先輩も、どう考えても病んでいる先輩の元恋人も、二人の間に挟まっている印象の悪い醜男も、意外とステレオタイプではなく、みんな何かしらの地獄を抱えていそうというか、なかなか奥行きがありそうで、脇役たちからも目が離せない。

    • 4
  10. 評価:5.000 5.0

    不謹慎すら引き受けて

    いじめというデリケートな問題を「ホラーの題材」になんて不謹慎だ、という批判も理解はできるし、そのあたりは、難しい。
    ただ、そういう不謹慎すら引き受けて、マジなホラーをやろうとしたのではないか、と。
    私としては、丁寧に作り込まれた作品に尋常ではない気合いを感じ、批判する気にはなれなかった。

    もう、序盤からやられた。
    一度希望という餌を与えてから絶望を叩きつけるとか、そんなハイレベルな小学生のいじめ、ありかいな。
    でも、現実に、ありなんだろうな。

    読み進めるうちに、気づく、というか、思い知る。
    ああ、これが続くんだ、と。
    希望の影がちらつく度に、絶望への予感に包まれる。
    その読者サイドの絶望は、作中の登場人物たちの絶望とシンクロする。
    もう終わってほしい。
    これ以上読みたくない。
    それでも読ませる吸引力の恐ろしさ。
    これが一級のホラーでなくて、何だろう。

    • 4
全ての内容:★★★★★ 91 - 100件目/全107件

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