例えば虐待にさらされ育ったとする。幼児にとって環境とは逃げられないものであり、虐待もまた逃げられないもの、自分は逃げ出せないものなのだと無意識に“学習”する。これを『学習性無力感』というが、幼児のみならず大人でもDV環境におかれれば普通に感じうるものである。
虐待は、突然始まる。愛する者に暴力をふるわれた驚愕や悲しみに被害者が混乱しているうちに、暴言と暴力にさらされる日々が始まる。傷を癒やす暇などない毎日で、心身の痛みは人の心から冷静に思考する余力を確実に奪い、やがて被害者は心を休めたくてよりどころを求めるようになる。そこには加害者しかいない。体力気力がない、逃げられない。生きるためにはすがるしかなくなる。
学習性無力感で自我を無理やり封じこめられ、拷/問のような毎日で依存しか生きる道をなくさせられた被害者はそんな自分をますます嫌いになる。負けまい、生きようとすればするほど相手を憎むかすがるかしかなくなりがんじがらめになる。
抜け出す道がわからなくて一番つらく苦しいのは被害者本人。他の人が「なぜ」と言うのはあまりに残酷が過ぎる。
-
0
女性の死に方
016話
第7話後編 2