5.0
傍観者が、実はヒーローだった説
オリビアを婚家に放置したジェームスは、離婚されて当然だし、その後も、どうして彼女に付き纏うのか、不思議でならなかった。オリビアにどんなに否定され、拒否され、イアンと愛し合っている様子を見せつけられても、諦めない。当て馬ならぬ、当て熊?にしても、闇堕ちするわけでもなく、ひたすらオリビアを取り戻そうとする…なぜ?
後になって、その理由が分かってくる。オリビアが回帰できたのは、別に神が彼女を憐れんだからではなく、全てジェームスが、自分の寿命をかけて行ったこと…それも2度も。オリビアに自覚はないが、彼女は2度命を奪われ、今世が3度目の生。その度に、ジェームスが自分の寿命と引き換えに時間を巻き戻し、やり直しを試みていたとのこと。
それならば、この二人、なぜうまくいかない?普通ここまでやり直ししたら、1回くらいは上手くいくもんでしょ。それはひとえに、ジェームスが、哀しいくらい不器用だったから…。
母親たちをそれなりに大事に思うから、強く言わない。嫁と姑たちが、いつか自然に仲良くなってくれると期待して、様子見になる。育ちのせいで表情が分かりにくく、本当の気持ちが伝わりにくい。そのくせ、オリビアを愛してることを、体の関係だけで伝えようとするもんだから、本人には誤解される…どこをどうとっても、不器用な男の典型、この男、どうしてくれよう。たった一言、ただ一言でも、自分の気持ちを伝えていたら、今とは異なる人生になっていたかもしれないのに…。
今世では、イアンとオリビアの関係は、もはや揺るぎないもので、付け入る隙は全くなさそう…。では、来世、4回目で?それではあまりにも、彼が報われなさ過ぎる。
ジェームスの献身を、オリビアは知らない。知らないどころか、彼を疎ましく思ったまま。神剣トォモロウよ、ジェームスの願いに応えて、彼らを逆行させたのなら、ジェームスも幸せになるような未来は描けなかったのか?傍観者、単なる一脇役に見えていた彼が、物語の鍵を握っていた実は正ヒーロー説、誰も認めないのなら、せめて自分だけでも覚えておきたい。
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騙されて溺愛再婚しました!