人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作となる「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が1月26日に公開された。「SEED FREEDOM」は、“愛”が一つのテーマとなっており、主人公のキラ・ヤマトとヒロインのラクス・クラインの“愛”などが描かれる。ラクス役の声優の田中理恵さんは、「SEED FREEDOM」の“愛”に心が揺さぶられ、涙を流すシーンもあったという。田中さんに「SEEDシリーズ」、ラクスへの思いを聞いた。

　◇みんな信じて待っていた劇場版

　「機動戦士ガンダムSEED」は2002年10月～2003年9月、続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」は2004年10月～2005年10月に放送された。これまでの「ガンダム」シリーズのファンに加え、多くの女性層を獲得し、“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれている。ガンプラ（プラモデル）も好調で、小学生を中心に“第二次ガンプラブーム”を巻き起こすなど大きなムーブメントとなった。

　大ヒットした「SEED」シリーズでヒロイン・ラクスを演じたことは、田中さんにとって大きな経験になったという。

　「海外のお仕事で、米国や中国に行くと、『ラクスを見ていました』と声を掛けていただけることが多いんです。世界中に届いている作品、キャラクターなんです。日本語で『SEED』を見るために、日本語を一生懸命に勉強したという方もいらっしゃいました。本当にすごい作品です」

　劇場版は、2006年に制作が発表されたが、その後は長らく続報が途絶えていた。2021年5月に「機動戦士ガンダムSEED」の20周年を記念した新プロジェクト「GUNDAM SEED PROJECT ignited（イグナイテッド）」が始動し、劇場版が再始動することが発表された。2023年7月、ついにタイトルと公開日が発表された。

　「2006年に代々木体育館のイベントで劇場版が発表され、それからずいぶんと時間がたってしまいましたが、私たち出演者はみんな信じて待っていました。本当に満を持しての劇場版です。このためにずっと声を温めてきました。ゲームなどの収録はありましたが、アニメに声を当てることは特別ですし、やっぱりすごくうれしかったです。また演じることができる喜びでいっぱいでした」

　◇ラクスをしがみつくように演じた

　ラクスは身体能力や頭脳を持つ人類（コーディネイター）。最高評議会議長であったシーゲル・クラインの娘で、プラントのアイドルでもある。キラ・ヤマトとの出会いを契機に独立勢力を形成し、戦争を止めようとする。フワフワしたお嬢さまのようで、真っすぐで、意志が強く、カリスマ性もある。聖母のような超越した存在に見えることもあるが、普通の女の子でもある。

　田中さんは「演じていて難しかったキャラクターです。当時、必死でしがみつくように演じていました」というが、約20年がたち、変化したことがあったという。

　「20代の時にラクスを演じ、当時は精神的にも幼かったところもありました。当時は必死ですごく悔しい思いもしましたし、監督や脚本家の方の演出通りに何でできないんだろうと葛藤していました。『SEED FREEDOM』でもう一度、ラクスを演じることになって、視野が広がったところもあって、すごく変化しました。何となく見えてくるビジョンがありましたし、ディレクションを受けて、切り替えることができるようになりました」

　「SEED FREEDOM」では、これまでにないラクスの姿も見られるという。

　「意思はあるのですが、戦うキラをサポートするイメージがこれまでありましたが、『SEED FREEDOM』では、しっかり自分の意思を示します。これまでとは違うラクスを演じることになり、新たなチャレンジになりました。“愛”がテーマになっていて、キラに対する愛がこれまで以上に踏み込んで描かれていることを、演じながら感じていました」

　◇両澤千晶さんへの思い

　「SEED FREEDOM」でラクスがどんな活躍を見せてくれるのだろうか。気になっているファンも多いはずだ。田中さんは台本を読んで、驚かされるところもあったという。

　「台本が2冊あり、1冊はキラのカラーで、もう1冊がラクスのカラーだったんです。グッときて泣きそうになりました。新キャラクターに驚いたところがありましたし、心が締め付けられるようなキラのシーンもありました。アグネス（桑島法子さんが演じるアグネス・ギーベンラート）もフレイ（桑島さんが演じたフレイ・アルスター）をほうふつさせるところもあって、すごくインパクトのあるキャラクターです。皆さんはどういうふうに演じるのかな？と楽しみになりました。収録当日、ベストの状態で臨みたいので、声がおかしくならないように気を遣っていました。皆さんが役に集中していましたし、ずっと緊張していました」

　下野紘さんが演じる新キャラクターのオルフェ・ラム・タオと対峙（たいじ）するシーンなどで、新たなラクスの一面を垣間見ることができる。

　「『SEED』でキラと一緒にいる時は、フワッとしたラクス像がありましたが、オルフェと対峙する時、自分自身の意思をしっかり伝えます。デュランダル議長（ギルバート・デュランダル）の時ともまた違う感じでして、ラクスにしては感情をむき出しにします。オブラートに包まずはっきりノーと言う彼女が新鮮でした。『強めに』という演出もあったので、ガッツリとノーをぶつけました」

　テーマである“愛”を感じるシーンには、大きく心を揺さぶられた。「SEED」「SEED DESTINY」のシリーズ構成を務めた故・両澤千晶さんへの思いが込み上げてきた。田中さんは「エンディングのせりふを読んで、泣いてしまいました。両澤さんがいれば……」と涙を流し、声を詰まらせながら、思いを語ってくれた。

　「アフレコの時は絶対に泣かないんですけど……。ごめんなさい……。両澤さんへの思いを乗せて収録しました。しっかりやらなきゃ……と頑張りました。皆さんに、いろいろな思いがあります。20年持ち続けたので、すごい思いがあるんです」

　「SEED FREEDOM」は、スタッフ、キャストのさまざまな思いが込められた作品だ。

　「劇場で見ると、多分、あっという間だと思うんです。私自身、楽しみですし、何回も見に行きます。ラクスだけではなく、新しいキャラクターもたくさん出てくるので、皆さんそれぞれに、新しい推しもできると思います。たくさんの方に足を運んでいただき、楽しんでいただきたいです」