石見舞菜香×川井田夏海:アニメ「ふつつかな悪女」インタビュー “入れ替わり”の難役 二人三脚で挑む

配信日:2026/07/12 8:01

アニメ「ふつつかな悪女ではございますが~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」に出演する石見舞菜香さん(左)と川井田夏海さん
アニメ「ふつつかな悪女ではございますが~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」に出演する石見舞菜香さん(左)と川井田夏海さん

 中村颯希さんの人気ライトノベルが原作のテレビアニメ「ふつつかな悪女ではございますが~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」が、テレビ東京系で7月12日午後11時45分から放送される。聡明で美しく誰からも愛されていて“殿下の胡蝶”と呼ばれている黄玲琳、劣等感が強く、卑劣な言動から悪女と呼ばれ皆から嫌われている朱慧月という正反対の二人の少女が入れ替わってしまう……という後宮“入れ替わり”逆転劇。玲琳役の石見舞菜香さん、慧月役の川井田夏海さんが出演する。入れ替わってしまうという難役に挑んだ石見さん、川井田さんに収録の裏側を聞いた。

 ◇根性の玲琳 諦めていない慧月

 --作品の印象は?

 石見さん 世界観や設定上、漢字が多かったり、聞きなじみのない言葉がたくさん出てきたりと最初は難しい印象を受けるかもしれませんが、自分自身と向き合うことや相手が見る自分など人間味のあるテーマなので、最初の印象よりもとっつきやすいですし、本当に面白い作品だと思いました。キャラクターも可愛く、美しい世界観のお話なので、目で見ても楽しいですし、キャラクターの喜怒哀楽が丁寧に描かれていて、ずっと楽しめるような印象を受けました。

 川井田さん 後宮が舞台ですし、最初は難しい印象を勝手に抱いていました。侍女もいて、その中に派閥もあって……とそれが難しいと思っていたんです。でも、実際読んでみると一族ごとに色分けされていて、それぞれのキャラクターが分かりやすく、世界観にすごく入りやすかったです。女性同士の感情の描き方が絶妙で、共感できるところと、いやそこまでは……という、線引きというかバランスがすごく巧みだなと思いました。

 --キャラクターの魅力は?

 川井田さん 玲琳は見た目とのギャップがありますよね。

 石見さん 体は常につらくて、熱が出ているし、体の節々は痛いし、その状態で動いていて、大丈夫なのかしらって周りが過保護になるようなキャラクターではありますが、とにかく強い。心がすごく強いんです。

 川井田さん  鋼のメンタルどころではないですよね。

 石見さん やっぱり根性! 高貴は根性! つらい状態でけいこをしたり、より高みに上ろうとしていますし、弱音を吐かない。自分もそう決めたし、周りもそうさせているんじゃないかなっていう部分もあります。本来は、自分の体や運命はつらいものだと思いますが、本人も蓋(ふた)をしているが故のタフさ、強さがあって、それが見え隠れしたりします。死んでしまうことへの覚悟もありますし。だからこそ入れ替わったときに爆発します。

 川井田さん 大興奮で、もう大暴れですね(笑)。

 石見さん 当たり前のことを、より幸せに感じるんですよね。

 川井田さん ひとまず蓄えた知識を実践するというオタクっぽいところもあります。

 石見さん 健康っていいなと思いながら。身にしみますよね。

 川井田さん 体が資本ですね。慧月は諦めていない女性だと思うんです。自分が負けている状況、人より劣っているっていう状況を打破したいと思ってるから大胆なこともできてしまうし、あの人にだけには負けたくない!という気持ちがある、力強い女性だとも思います。ただ、その力の使い方がうまくないんです。本来持っているポテンシャルは高いはずなのに、自己評価が低いので、自分の良さにも気づけていない。玲琳と関わっていくなかで、慧月自身が気づいていない部分を見つけて、少しずつでも自分のことを好きになっていけたらうれしいなと思っています。

 石見さん よくも悪くも強欲、常に喉が渇いているような状態で、最低限のお水はあるはずだけど、もっと飲まなきゃいけないという危機感を持っているような印象です。育ってきた環境によるところなんだと思います。感情のぶつけ方が分かっていないんですね。玲琳に話せば、助けてくれたりするはずだけど、助けられたことがないから分からない。相手をおとしめることしか、今の状況から救われる方法が分からないんです。多分、境遇によってこういうキャラクターになっていったんだろうなと思いながらも、玲琳から真っすぐな言葉を投げかけられたら、ちゃんと言葉が届かないわけではないとも思うのですが、ピュアさも兼ね備えているようなキャラクターだと思います。

 ◇二人で共に作り上げる

 --「演じるのは難しそう……」というお話もありましたが、実際に大変だった?

 石見さん 大変です! 全然、楽にならなくて、毎回「ヤバいよね」と言っています。お互い「今の大丈夫だった?」と言ってますよね。本当に気が抜けないんです。普段も気を抜いているわけではないのですが。

 川井田さん この作品ならではの緊張感がずっとあります。

 石見さん 私たちの声はマイクを通すと似ているみたいなんです。私は似ていると感じたことはないんだけど。

 川井田さん 今しゃべっている声も違いますしね。

 石見さん そうなんですよ。ただ、不思議なことに似て聞こえるようでして、その調整に時間が掛かっています。同じ玲琳でも私が演じる場合は体が弱い状態で、そこを意識していますが、川ちゃんの玲琳は元気なんです。(中身が)慧月だと少し声が低めで、テンション上がると人は声が高くなるものなのですが……。

 川井田さん 今のところ音色が(中身が)玲琳になっちゃってるから、低い声のまま感情を表現しないといけないですし。

 石見さん  腹筋でしゃべっている感じなのかな。逆もまたしかりで。

 川井田さん 逆に慧月はパワフルな感情表現で憎しみをぶつけるキャラクターだけど、玲琳の体だと病弱で線は細くしなくてはいけなくて。

 石見さん やりすぎると女子高生っぽくなっちゃう(笑)。姫のようじゃないといけないんです。私は一度も姫になったことがないけど(笑)。本当に微々たる差だったと思うんですけど。

 川井田さん 心持ちみたいなものですね。

 石見さん 監督が基本的に音というよりはお芝居を大事にしてくださるのですが、掛け合うとなると……。

 川井田さん どっちがどっちか分からなくなるのがもったいないという話でした。

 石見さん 玲琳が単体で出てくるシーンは、低めになってしまってもいいのですが、二人が出てくると、どちらがしゃべっているのかが明確に分かるように、丁寧に収録していました。

 --映像を見て「似ている」と感じた?

 石見さん・川井田さん 思わなかったんです。

 石見さん 第1話の最初のテストのときはそっくりだったんです。

 川井田さん 最初、私は玲琳に寄せたんです。同じ音色くらいの方がいいのかなと思っていたので。でもテストの後に「分けましょう」ということになったんです。体は慧月だけど、心が玲琳のとき、モノローグは玲琳(石見さん)なので、声まで似てしまうと、見ている方も混乱してしまうので、あえて声の方向性を分けることになりました。

 石見さん すり合わせる時間はなかったですし、川ちゃんの慧月を研究するというよりは、共に作り上げていきました。一緒にゼロからのスタートを切ったんです。川ちゃんの慧月は繊細さも持ち合わせていて、優しさもあるんです。収録を重ね、お互いに吸収し合っていました。

 川井田さん 固めすぎずに、現場で一緒に作り上げていくのが正解だと思って、収録ではずっと(石見さんの)隣に座っていました。

 石見さん 語尾の感じや立たせるところなどを吸収して、それを投影していきました。目指す感情は多分一緒ですし、監督からの「ここはもっと他責で」「もっともっと相手にぶつけちゃってください」とディレクションに対応していきました。プレスコでしたし、「尺を気にせずやってください」「間は自由にとってもらって大丈夫だからお芝居を優先してください」ということで、本当に助かりました。

 --この作品ならではの面白かったところは?

 石見さん 心理戦がありますよね。表では和気あいあいとしているけど……。

 川井田さん 後宮ならではなんですよね。常に腹の探り合いをしているような。

 石見さん 声に裏の感情を乗せるか乗せないかがキャラクターによって違いますし、入れ替わりがもちろんこの作品の面白さですけど、心理戦も一つの大きな面白さになっています。

 川井田さん こんなに人のことを悪く言うことなんてないですし(笑)。慧月の最初のセリフが「忌々しい女、消えるがいいわ」ですから。役者だから言える言葉なので、楽しく言わせていただきました(笑)。慧月としてしゃべるときは大体、妬み、嫉み、他責なのでここぞとばかりに負の感情を利用して演じました。

 --お互いの役者としての印象は?

 石見さん アプローチの仕方だったり、タイプは違うのかなと思っていました。川ちゃんは器用なイメージがあります。こんなことを言うのは、おこがましいのですが、感情や距離感を表現するのが得意で、記号的なわけではなく、川ちゃんが演じているからこその揺れ動きがあって、繊細さも持ち合わせているんです。いいなあ……と思っています。自分にとって課題だと感じているところを持っているので、羨ましいと思います。それこそ玲琳が慧月を羨ましく思うように、自分にないものを感じています。今回は、自分には難しいだろうなとまぶしく思いながら演じていました。

 川井田さん なんだか恥ずかしいですね(笑)。私は、みんな感じていると思いますが、マナティーは“石見舞菜香という声”を持っていますよね。この声がほしいです! ブランドのようなものですよ。

 石見さん そんなブランド、ないない(笑)。

 川井田さん あるんですよ! どれもが“石見舞菜香である”んです。“声に名前がついている”と言いますけど、まさにそれです。例えば今回で言えば、マナティーが先に出演が決まっていて、私はオーディションの時に誰とは教えられずに事前に収録された音声と掛け合いをしたんですが、その時「多分マナティーなんだけど、いつものマナティーと違う!」と思ったんです。その後、収録を経て(入れ替わった)慧月を演じているマナティーの声を聞いて、「また新しいマナティーが出てきちゃった!」と感じました。全てがきちんと“石見舞菜香である”んです。

 石見さん 私は汚い感情を爆発させる役柄はこれまであまり経験がなくて、思いっきりやってみようとしました。

 川井田さん 今回は入れ替わりがうまくいってないと破綻してしまいますし、プレッシャーもありましたしね。

 石見さん 共に支え合って走っています。

 川井田さん まさに二人三脚でしたね。

 石見さん 大変だったのですが、終わってしまうのが寂しいんですよね。

 川井田さん この現場でしか味わえないものがありますし。

 石見さん 玲琳のセリフにもありますけど「根性」ですね。監督にもずっとディスカッションしていただきました。監督の中に、描きたいことや伝えたい感情が明確にあって、それを噛み砕いて説明していただき、私たちの気持ちに添っていただきました。みんなで演じているという心強さにもつながりました。

 川井田さん 最終的には私たちに任せてくださって。プレスコだったこともあって、尺を大幅にオーバーしたこともあったのですが、映像を見るとすごく自然になっていますし、改めてとても良い現場だなと感じました。

 --最後に放送を楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。

 石見さん 原作をお読みになられている方は、この作品の面白さを十々ご存じだと思いますが、アニメになって色や動き、音楽が付いてどうなるのかを楽しみに待っていただきたいです。アニメから入る方は、最初は難しい設定や名前などもありますが、絶対面白いです! 難しくはなくて、人間同士の関係や自分や人と向き合うことなどが主に描かれているので、ぜひ楽しんでいただきたいです。キャラクターたちの内面にも注目していただきたいと思います。

 川井田さん 最初は少し敷居が高く感じるかもしれませんが、絶対に面白いのでぜひ見ていただきたいです。女性の美しさや弱さ、きれいな部分だったり醜い部分を鮮やかに描いています。私自身、出会ったことないような作品に出会って演じること、表現できることは役者冥利に尽きます。苦戦しながら演じましたが、役を任せていただき、一緒に作品を作る相手がマナティーで本当によかったと思います。美しい衣の下に隠れた女性の本性をぜひ皆さん楽しんでいただけたらうれしいです。 (阿仁間満/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

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