アフタヌーン:40周年マンガ誌の“らしさ”とは 形容しがたい魅力の正体 「ブルーピリオド」山口つばさ、金井暁編集長に聞く
配信日:2026/07/05 12:01
1986年12月創刊の講談社の月刊マンガ誌「アフタヌーン」が今年、40周年を迎える。「寄生獣」「ああッ女神さまっ」「おおきく振りかぶって」「宝石の国」「ブルーピリオド」「スキップとローファー」など数々の名作を世に送り出してきた。マンガの世界では「アフタヌーンっぽい」「アフタヌーンらしい」などと言われることもある。自由な発想で、どこか一筋縄ではいかないマンガに対してそう言われているようにも感じるが、正直なところ言語化が難しい。形容しがたい「アフタヌーン」の魅力は何か……。アニメ化や実写映画化もされた同誌の人気作「ブルーピリオド」の作者の山口つばささん、2015年から6代目の編集長を務めている金井暁さんに聞いた。
◇“アフタヌーンらしさ”を考えなくなった
--山口さんが考える“アフタヌーンらしさ”とは?
山口さん 面白さというものに対して文脈なく実直みたいなイメージがあります。楽しませるというエンターテインメントだけではなく、作家のそのときにしか出ない繊細な部分を拾い上げてくださっているような印象があります。例えば、少年マンガ誌は、自分の幼少期や青春になることもありますが、「アフタヌーン」はそうではないと思うんです。ただ、私は「アフタヌーン」のマンガから学びを得ることが多い。クサい言葉になっていますが、お守りみたいなんです。表現が難しいのですが、柔らかい部分を触れるような感覚もあって、そういうところが好きなんだと思います。
--他誌とはまた違う魅力がある?
山口さん 他誌の話をするのは難しいのですが、他誌はルールや文脈を感じるところもあったとしたら、「アフタヌーン」は割とノールール(笑)。面白ければいいみたいな印象があります。すごく生意気なこと言っていますね。でも、私が好きな作品が「アフタヌーン」には多いんです。
--いわゆる男性マンガ誌というカテゴライズともまた違う。
山口さん 自分もそうですが、男性誌、女性誌と気にせずに読めるところも好きです。
金井さん “アフタヌーンっぽい”作品を作ろうと思うと多分、間違えるんでしょうね。山口さんをはじめとするマンガ家さんも編集者も編集長も「アフタヌーンって何ですか?」と聞かれると、みんな「さあ……」となる(笑)。僕は“アフタヌーンらしさ”を考えなくなったんです。企画会議やネーム会議で「アフタヌーンらしいかどうか」という判断基準で決めたこともありません。昔から雲をつかむようなところもあり、「これがアフタヌーンです」と誰かが決めるのも違うかもしれないし、マンガ家さんたちが、最大限に面白く、最大限に描きたいマンガをぶつけ合うのが一番なのかと思います。編集長になったばかりの頃は、ターゲット、男女の比率も考えたんですよ。でも、やめましたね(笑)。そうじゃないと「アフタヌーン」ではなくなる。例えば、2、3年後、全然違う雑誌になっていたとしても、それはそれでいいんじゃないかなとも思います。“商品”としては間違っているんですよ。セグメントもマーケティングもしていないので。ただ、作品の取り扱いとしては、その方が正しいと考えています。そんな雑誌が一つくらいあってもいいんじゃないかな。
◇紙がなくなっても滅びない
--山口さんは新人マンガ賞「アフタヌーン四季賞」に応募したことがデビューのきっかけになりました。
山口さん 「アフタヌーン」しか拾ってもらえなかったんです(笑)。大学の卒業制作がマンガだったので、卒業と同時にいろいろな短編を送って、拾ってもらえたのが「アフタヌーン」だけで。「アフタヌーン」が好きだったので、自分が一番気に入っている作品を「アフタヌーン」に送ったんですけど。
--いつ頃から読んでいた?
山口さん 編集長の前で言いづらいところもありますが、最初はコミックスでした。中高生の頃にアニメから入って、原作を読んでいました。高校生のときに「おお振り(おおきく振りかぶって)」がクラス単位で流行していて、私もハマっていました。好きな作品が「アフタヌーン」に多かったんです。「宝石の国」も大きいですね。市川春子さんは短編集もすごく面白くて、美大でも「読んだ?」という話をしていました。「おお振り」のひぐちアサさんの「ヤサシイワタシ」も好きで、年末に「アフタヌーン」のほかの作家の方としゃべっていて、その話をしたら「分かる! 分かる!」と盛り上がったこともありました。
--「アフタヌーン」にマンガ家が引き寄せられるようなところもある?
山口さん そうかもしれないですね。
金井さん でも、狙ってはできないですから(笑)。最近の四季賞を見ていると「ブルーピリオド」に感化されたと分かることもあります。
山口さん 私の世代だと市川春子さんみたいに描きたいと思っている人も多かったでしょうし。カリスマですよ!
--紙の雑誌の現状は厳しいとも言われています。今後も紙での刊行を続けていきたい?
金井さん 僕自身は紙の手触りが好きですし、マテリアルとしての雑誌の厚みもいいんですよね。続けられる限りは続けていきたいです。ただ、出版社や編集部の事情だけではなく、印刷会社や製本所の事情もあって、紙を脱却しなければいけない時代になるかもしれない。紙で出せないとなったとしても、「アフタヌーン」は滅びないと思っています。
「アフタヌーン」の40周年を記念した展覧会「アフタヌーン40周年展」が2026年7月10~26日、東京・池袋のサンシャインシティ 展示ホールAで開催される。「アフタヌーンらしさ」の明確な答えはないのかもしれないが、40年の歴史が詰まった同展の空間に身を置けば、“形容しがたい魅力”の正体に、触れることができるかもしれない。(阿仁間満/MANTANWEB)
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