スノウボールアース:3Dに見えない!? “手描き感”への挑戦 境宗久監督インタビュー

配信日:2026/05/16 7:01

アニメ「スノウボールアース」の一場面(C)辻次夕日郎/小学館/「スノウボールアース」製作委員会
アニメ「スノウボールアース」の一場面(C)辻次夕日郎/小学館/「スノウボールアース」製作委員会

 「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載中の辻次夕日郎さんのマンガが原作のテレビアニメ「スノウボールアース」が、日本テレビ系のアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で4月から放送されている。「スノウボールアース」は不思議なアニメだ。3DCGで制作されたアニメではあるが、手描き(2D)にも見え、3DCGだと気付かなかったという視聴者の声もある。日本のアニメの伝統を継承しながら、3Dならではのダイナミックなアクション、カメラワークとの融合に成功している。アニメを手掛けるスタジオKAIの境宗久監督に制作の裏側を聞いた。

 ◇なるべく3Dでチャレンジする

 境監督は東映アニメーション、MAPPAを経て、現在はスタジオKAIに所属する。これまで「ONE PIECE」シリーズや「ゾンビランドサガ」シリーズ、「ダンス・ダンス・ダンスール」などを手掛けてきたことで知られているが、「これだけ3Dで作るのは初めて」と言い、『スノウボールアース』は新たな挑戦となった。「3Dに見えない」という声に対して「うれしいことです」と胸をなでおろしているようだ。

 「基本的に3Dをメインとした作品なのですが、さまざまな事情によって2Dでやらざるを得ないシーン、2Dじゃないと表現しきれないシーンもあるので、ハイブリッドにすることは最初から決まっていました。ただ、見ている方が純粋にストーリーを楽しむためには、3Dであることを意識させてしまうと、雑音になってしまう。その雑音を取り払わないといけません。そのためには3Dを2Dに寄せる必要があります。3Dのスタッフには、これまでさまざまな作品で培ってきた3D特有の画面作り、動かし方がありますが、申し訳ないけど、今回は抑えめにしてもらおうと思いました」

 日本の手描きアニメは独自の進化を遂げてきた歴史があり、3Dの技術も取り入れてきた。3Dを日本の手描きアニメのような質感に仕上げるセルルックという表現技法もあるが、「スノウボールアース」ではさらに進化した表現を目指した。

 「いわゆる3Dの特徴的な動きや芝居がありますが、そこは一度排除して、『手描きだったらどう動かすか?』を探りながら動きをつけてもらいました。普段だったら2Dでやるところもなるべく3Dでチャレンジすることが、今回の合言葉的なところもありました。例えば、第4話の“人間の大地”の覚醒シーンのは2Dで、炎になってからが3Dになっています」

 「3Dを2Dに寄せるのであれば、初めから2Dで作った方がいいのでは?」とも思ってしまうところもあるが、境監督は未来を見据えて、あえて3Dで制作しようとした。

 「この先、制作していくことを考えると、3Dとハイブリッドで作ることで『もっと違うことができるんじゃないか?』と考え、課題を洗い出そうとしました。将来的に、このやり方を深めていき、表現の幅を広げていけたら面白いと思っています。これまでの手描きのアニメとやっていることは変わらないけど、3Dと2Dは成長してきた文化が違うので、まったく同じようにはいかない。この先のことを見据えて、3Dに2Dの文化を少し乗せ、より近づけていけば面白くなると思っていました」

 日本アニメにおける3D表現は発展途上にあり、「スノウボールアース」はその現在地を示す試みともいえる。境監督はスタッフと密にディスカッションを重ね、地道な作業を積み重ねることで、新たな表現を模索した。CGに強い副監督の岩田健志さんらスタッフにも助けられた。

 「最初は、どうしたら伝わるんだろう?と悩みましたし、時間が掛かりました。2Dの専門用語が伝わらないことがあるし、その逆もあります。僕は体験したことがないことばかりだったので、岩田さんに助けていただいたことが大きかったです。『ここは難しいかな?』と言っても『いや、それは大丈夫です』と言ってもらえた。普段から地道に作る方が性には合っているのですが、想定していたよりも時間が掛かりました。ただ、今回はチャレンジすることがテーマだったので、1フレームずつ調整しながら映像を作っていくこともありました」

 ◇ロボの“決め”をしっかり見せる

 「スノウボールアース」は、雪と氷に覆われた地球・スノウボールアースを舞台にしたSF×怪獣×ロボットアクション。人見知りの少年・鉄男と相棒の巨大ロボット・ユキオが人類の存亡をかけた最終決戦を終えて10年後、帰還した地球が凍結していた……というストーリー。

 「原作を読んで、王道の少年マンガとして作っていきたいと思っていました。ロボットや怪獣といったワクワクするポイントがありますし、先の読めない展開のワクワク感もありますが、その中に人間のドラマがきっちりとあって、地に足がついています。物語に深みがあって、そこが面白いところです。アニメーションとして動かして、お芝居やアクションもしっかりやるのですが、原作の止め絵の熱量が落ちないようにアニメとして作り込めるかを考えていました」

 原作では、ロボット・ユキオが格好よく決める止め絵も印象的だ。ロボットらしいギミックも魅力となっている。

 「ユキオはロボットではありますが、感情をしっかり出さないといけませんし、アクションの格好よさも表現して、メリハリはしっかり出すようにはしています。“決め”をしっかり表現するために、前後でアクションを積み重ねて、“決め”に持っていくことを意識しています。例えば第3話で、ユキオが鉄男を助けにいくシーンでは原作にはないギミックを足しています。腕が出てきて、脚の噴射がパカッと開き、目がカッと開く。ロボット的なギミックの格好よさをアップで抜いて、最後にドーンとユキオの立ち姿で決める。そのテンポ感を大事にしようとしました」

 ◇試行錯誤を重ね 発見の連続

 境監督は「怪獣の種類が多いのも面白いポイント」とも話す。“人間の大地”と呼ばれる鳥形の焦熱怪獣、半人半馬の“帥の剣〈ヘラクレス〉”などさまざまな怪獣が登場する。それぞれの怪獣の動きに特徴があり、怪獣の重量感がしっかり伝わってくる。

 「それぞれの怪獣が、亀のように歩いたり、蛇のように動いたり、コウモリのように飛んだりと特徴があるので、動きを表現しないといけません。細かく動きを作り込める3Dの強みを生かそうとしました。『軽くならないように』『大きさや重さを意識する』ともずっと言ってきました。重い怪獣が動くので、動き出しもタメがあってから大きく動くなど、リズム感を表現しています。『ここで1枚抜いて、ここで足して』などとフレーム単位で細かく調整して動きを見せようとしました」

 「スノウボールアース」の世界は、雪と氷に覆われている。建造物や洞窟なども登場するが、真っ白な世界が舞台となる。

 「絵コンテの作り方として、カットを切り替えるときに、雪山や雪原が広がっているような同じ絵になるべくならないようにしています。そもそも、時々空と海だけのシーンが続くような作品を昔やっていたので、テクニックが自分の中で確立されているような気もします(笑)。カメラをロールさせたり、変化させることを学んだので自然に身についているのかもしれません」

 視聴者が3Dであることを意識せずにアニメを楽しめるように、境監督は細部までこだわり抜いた。

 「ものすごく挑戦になりました。どうやったらCG臭さがなくなるか?という試行錯誤がずっとあって、発見の連続でした。それが段々と蓄積されています。5、10年後に『スノウボールアース』を見たときに、まだまだだな……と笑い話になるくらいもっと進化させていきたいです」

 これまでにない映像表現を実現するには、一朝一夕にはいかない。境監督をはじめとしたスタッフの粉骨砕身の働きがあったからこそだ。ただ『スノウボールアース』の真価は、3Dであることを意識せずに楽しめることにある。伝統と革新が混ざり合う挑戦は、まだ始まったばかりだ。(阿仁間満/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

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