本なら売るほど:「マンガ大賞2026」大賞 作者・児島青「三つの夢を一度にかなえた」作品 古本屋舞台の短編連作
配信日:2026/03/26 16:43
マンガに精通する書店員らが「今、いちばん友達に薦めたいマンガ」を選ぶ「マンガ大賞2026」(実行委員会主催)が3月26日に発表され、「ハルタ」(KADOKAWA)で連載中の児島青さんのマンガ「本なら売るほど」が大賞に選ばれた。作者の児島さんは「『本なら売るほど』を栄えある賞に選んでいただき、誠にありがとうございました」とコメントを寄せた。
「本なら売るほど」は、ひっつめ髪の気だるげな青年が営む古本屋・十月堂を舞台にさまざまな愛書家たちの人生の機微を描く短編連作シリーズ。店主の人柄とすてきな品ぞろえにひかれて、十月堂には本好きの常連や、背伸びしたい年頃の女子高生、不要な本を捨てに来る男、夫の蔵書を売りに来た未亡人と、いろいろな客が訪れ、ふと手にした一冊の本が、思わぬ縁をつないでいく。
児島さんは「マンガ家になった経緯が能動的ではなかったせいか、1巻を上梓して以来の反響の大きさに喜び以上に何が起こっているのかという戸惑いも強く感じた一年でした。受賞の報を受け、その思いはいよいよ大きくなりましたが、そんな時に母が私にぽつりとこう言ったのです。『よかったね。あんた、小さい時に絵を描く人か、お話を作る人か、本屋さんになりたいって言ってたもんね』と。私自身も忘れていた幼少期の夢を母が覚えていてくれたことに驚くとともに、はからずも『本なら売るほど』を描くことで、自分が三つの夢を一度にかなえていたことに気づきました」とつづった上で、感謝を伝えた。
授賞式には、担当編集の浅井康平さんが登場し、児島さんのデビューの経緯や作品の魅力を語った。浅井さんはマンガやイラストを投稿するSNSサービスで児島さんの作品を見つけ、コンタクトをとったという。当時、児島さんはマンガ家になるつもりはなかったが、「副業としてマンガ家を考慮に入れていただいて、そこからマンガ家としてスタートした」という。
浅井さんは児島さんの作品の魅力を「一つは絵が素晴らしい。初めて拝見した時に、どこかで連載している方の別名義かと思ったほどに、人物も背景も完成されていた。その作品が、児島さんが初めて描いた長編と聞いてびっくりしました。また、人物の感情がよく分かる絵作りをされる方で、あまり説明せずに読者に想像させる。読書体験が豊かなマンガを描かれるのが強い魅力だと思っています」と説明した。
「本なら売るほど」は、児島さんによる短編読み切り「本を葬送る」が前身となっている。児島さん自身が本を好きということから描かれた「本を葬送る」を読んだ時、浅井さんは「うわ、これはいい」と手応えを感じたといい、読者からの反響も大きく、連載につながったという。
「本なら売るほど」には、さまざまな実在する本(作品)が登場する。浅井さんから登場させる本を提案したことは一度もないといい、「基本的に児島さんが読んできた本の中で印象的だったものが登場しています。本とは独立させてエピソードを描いて、『このエピソードに登場させるならこの本かな』というようにしています」と制作の裏側を語った。
浅井さんは、古本屋が舞台ではあるが、本を読むのが好きな人だけでなく、本を収集するのが好きな人も登場するのが今作の特徴といい、「本に対する距離感がさまざまなな人が出てくる。読んでいると、いずれかの登場人物に対して、『自分はこの人に近い』と思える。本好きばかりが出てくるマンガではないのも、この作品の魅力です」と語った。
「マンガ大賞」は2008年に創設されたマンガ賞で、マンガ家、編集者、ブックデザイナーなどマンガが売れることに直接の利害関係がある関係者が審査に関与しないのが特徴。大賞に選ばれた作品は注目を集めて売り上げが一気に伸び、アニメ化や映画化などのメディア展開につながることもある。
今回は19回目で、2025年1月1日~12月31日にコミックス、電子書籍が発売され、通巻8巻以内のマンガ(過去の大賞は除く)が対象。
過去の大賞は、末次由紀さんの「ちはやふる」や、羽海野チカさんの「3月のライオン」、野田サトルさんの「ゴールデンカムイ」、柳本光晴さんの「響~小説家になる方法~」、山田鐘人さん原作、アベツカサさん作画の「葬送のフリーレン」などで、2025年は売野機子さんの「ありす、宇宙(どこ)までも」が受賞した。
◇「マンガ大賞2026」ノミネート作品(敬称略)
「妹は知っている」雁木万里▽「おかえり水平線」渡部大羊▽「怪獣を解剖する」サイトウマド▽「サンキューピッチ」住吉九▽「邪神の弁当屋さん」イシコ▽「壇蜜」清野とおる▽「友達だった人 絹田みや作品集」絹田みや▽「人喰いマンションと大家のメゾン」田中空、あきま▽「本なら売るほど」児島青▽「魔男のイチ」宇佐崎しろ、西修▽「RIOT」塚田ゆうた▽「路傍のフジイ」鍋倉夫
◇過去の大賞受賞作品(敬称略)
「岳」石塚真一▽「ちはやふる」末次由紀▽「テルマエ・ロマエ」ヤマザキマリ▽「3月のライオン」羽海野チカ▽「銀の匙 Silver Spoon」荒川弘▽「海街diary」吉田秋生▽「乙嫁語り」森薫▽「かくかくしかじか」東村アキコ▽「ゴールデンカムイ」野田サトル▽「響~小説家になる方法~」柳本光晴▽「BEASTARS」板垣巴留▽「彼方のアストラ」篠原健太▽「ブルーピリオド」山口つばさ▽「葬送のフリーレン」山田鐘人、アベツカサ▽「ダーウィン事変」うめざわしゅん▽「これ描いて死ね」とよ田みのる▽「君と宇宙を歩くために」泥ノ田犬彦▽「ありす、宇宙までも」売野機子
提供元:MANTANWEB











