ダーウィン事変:原作者うめざわしゅん×種崎敦美×神戸光歩インタビュー 社会派のようでボーイミーツガール “声”の説得力

配信日:2026/01/01 12:01

アニメ「ダーウィン事変」の(左から)原作者のうめざわしゅんさん、チャーリー役の種崎敦美さん、ルーシー・エルドレッド役の神戸光歩さん
アニメ「ダーウィン事変」の(左から)原作者のうめざわしゅんさん、チャーリー役の種崎敦美さん、ルーシー・エルドレッド役の神戸光歩さん

 「マンガ大賞2022」で大賞に選ばれたことも話題のうめざわしゅんさんのマンガが原作のテレビアニメ「ダーウィン事変」が、1月6日からテレビ東京系で放送される。原作は2020年から「アフタヌーン」(講談社)にて連載中で、ヒトとチンパンジーの間に生まれた“ヒューマンジー”のチャーリーがテロ、炎上、差別といった“ヒト”が抱える問題に向き合うことになる。原作者のうめざわさん、チャーリー役の声優の種崎敦美さん、チャーリーの同級生で、親交を持つようになるルーシー・エルドレッド役の神戸光歩さんに作品の魅力、収録や制作の裏側について聞いた。

 ◇なぜ“ヒューマンジー”を描こうと?

 --原作を読んだ印象は?

 神戸さん オーディションを受ける際に読ませていただいて、最初は自分が受けるキャラクターをチェックする意味でも読み始めたんですけど、すごく面白くて、気づいたらそんなのそっちのけで最新刊まで読み終わっているくらいでした。ヒューマンジーという現実にはいない存在が描かれていますが、その周りはすごくリアルで、もし自分がこの世界にいてヒューマンジーが目の前にいたらどう考えるだろうか、どう行動するだろうかと、自分の価値観についても同時に考えさせられる作品だなと思いました。

 種崎さん 読む前は漠然と「ダーウィンって、進化論のだよな……事変って大変なことが起こるんだよな……進化論が大変なことになるの?ってことは難しいお話なのかな」と。ずっと気になっていたのですがなんとなく心と時間に余裕がある時に手にとってみようと思っていたので、オーディションのお話をいただいた時は、読むキッカケができてうれしかったです。実際読み始めるとキャラクターの考え方やストーリーがずっと興味深くて、するする読み進められました。この世に本当に存在する問題や人が向き合わなきゃいけないことを、この世に存在していないヒューマンジーを通して考えさせられるストーリーがすごいなと。デリケートな部分も、否定も肯定もされていない感じが絶妙で。

 うめざわさん 距離を取って描いています。

 種崎さん だからなんですね。とにかくストーリーが面白くて純粋に楽しめる。読みながら原作者の先生は、とても頭がいい方なんだろうなと思いました(笑)。

 うめざわさん ありがとうございます(笑)。非常にうれしいです。キャラクターを理解してから演じてくださっているので、本当に読み込んでいただいてるんだなと思っています。

 --「ダーウィン事変」は、センシティブな題材を扱いながらも、エンタメとして楽しめる印象です。うめざわさんがこの作品を描こうと思ったきっかけは?

 うめざわさん 前提として、この「ダーウィン事変」以前の作品も、基本的にセンシティブなものばかり描いているのですが、「ダーウィン事変」の前に「もう人間」という短編を描いていて、それが「ダーウィン事変」につながるような生命倫理であったり、保護されるべき人間の権利とは何なのかといったセンシティブな点を取り扱ったんです。それをより延長させて描きたいと考えて、いろいろな資料を見ていた時に、ネット記事で“ヒューマンジー”というものを知って、これを使えばより発展して描けると思ったのがきっかけです。

 --種崎さんも話された「否定も肯定もしない」というバランスはどのように意識されているのでしょう。

 うめざわさん 扱っていることに対して僕自身の意見はもちろんあるのですが、それを主張するために作品を作っているわけではなくて、あくまで自分の意見も面白い物語を作るための一つのツールとして使っているという距離感の取り方をしています。それによってバランスを取ろうとしているというのはあると思います。もちろんその中で、特定の人や団体に対する差別や偏見につながらないように描写しなければいけないと気をつけているので、その結果なのかなと。

 ◇チャーリーとルーシー オーディション秘話

 --アニメ化が決まった際の率直な感想は?

 うめざわさん アニメ化のオファーが来たと聞いた時は「本当に?」という感じで、萌え要素は何もないけどなと思って(笑)。デリケートな部分、センシティブな描写もあるので、本当にできるのかなと思っていました。だんだん時間がたって「本当にやるんだ」と思うようになり、今に至っては「これはやるんだろう」と確信しておりますけど(笑)。来年から始まるのをワクワクして楽しみにしております。

 --津田尚克監督ら制作陣とアニメ化に当たって話されたことは?

 うめざわさん 監督、制作陣とも「なるべく原作通りにやりたい」というお話をしていただきました。僕としては、マンガからアニメという全然違うメディアになるので、ストーリーの構成やキャラクターデザインなど変えざるを得ないところ、変えたほうがいいところがあると思いますので、アニメ化に当たってやりやすいように変えていただいても全然構わない、とお話しました。中心的なモチーフや作品のエッセンスはそのままやっていただけるということなので、あとは信頼してお任せしたという感じです。アニメのシナリオを見て、「あ、面白い話だな」と自分で思いました(笑)。

 --アニメ化に当たって、チャーリー役は種崎さんへの指名だったと伺いました。

 種崎さん 当時、私はオーディションだと思っていました。

 うめざわさん そうなんですね? 違うんですよ(笑)。オーディションではチャーリー役が決まらなかったんです。それで監督が一本釣りしたという。

 --チャーリー役が決まった時の気持ちは?

 種崎さん 私は、一通りオーディションは終わったけど、それでも決まらず再オーディションのような状態だと思っていたので、普段オーディションが決まった時の「やった……!」みたいな感じというよりは、うれしさはありつつもどこか「承知いたしました」という気持ちになりました。オーディションテープを録(と)った時、なぜか分からないのですが、「あ、なんか分かる気がする」と、あまり考えずにやれて。だからかもしれません。いざ役が決まったら頑張らねばという責任感から改めて役についてしっかり悩むことになるんですけど(笑)「ダーウィン事変」は月に一回の収録というお話だったので、「大変な1年が始まるぞ」「責任をもって全うしなければ」と思いました。

 --うめざわさんは種崎さんが演じるチャーリーの声を聞いて「これがチャーリーの声だったのか!」と納得されたそうですね。

 うめざわさん 僕もオーディションに最初から参加していて、「チャーリーはどういう声なんだろう」と僕も分からないし、誰も分からない。チャーリー自身は感情がそのまま言葉として出るわけではないけど、感情がないわけではない、という微妙な注文をしていて、基本的には感情のチューニングをしていただく感じのオーディションでした。その中で、決め手がないと監督も感じていたのだと思います。僕は、アフレコで種崎さんが演じるチャーリーの声が出た時に、感情のアプローチ以前に、すーっと最初からそこに存在していたような、というか。チャーリーは、文明社会の中で異物として扱われて、そういう立ち位置が故にトラブルに巻き込まれるキャラクターなのですが、チャーリー本人からしたら、自分が存在すること自体は非常にフラットなことというか。自然に存在している感というのは、種崎さんの演技でハッとさせられた部分ではありますね。感情のアプローチと同時に、存在論的なアプローチを感じました。

 種崎さん テープを録った時、あまり考えずにやっていたと言いましたが、その時の自分の中を先生が言語化してくださったなと思います。オーディションの時、私は確かにそうだったって。ヒューマンジーというよりもチャーリー。

 うめざわさん 自分の存在自体に疑いを抱いてないという。

 種崎さん 感情はあるけど、出てくる時にそんなに分かりやすくポンじゃなくて、心の中でちょっと変わる、動く。それがちょっと音に乗るくらいな感じで、オーディションの時はやってた……!と思いました。

 --オーディションでは、神戸さんが演じるルーシーも満場一致で決まったとのこと。

 神戸さん うれしかったです。アニメーションはたくさんの方が関わっていて、いろいろな立場からの意見もある中で、満場一致というのは特別に感じるというか。みんなが「合っている」と思ってくださったことがシンプルにすごくうれしかったです。

 --うめざわさんは、神戸さんのルーシーの声を聞いていかがでしたか。

 うめざわさん 本当に満場一致で「ルーシーだ!」という感じでした。アニメのシナリオを見た時、ルーシーのセリフはテキストだけで取り出すと、結構皮肉屋だったり、ロジカルすぎて冷たく感じて「ちょっと怖いな、この子」というのがあったんです。マンガでは、そういう部分はコマを小さくしたり、コミカルな顔にしたりすることでアジャストしていたりもするんです。神戸さんが演じてくださるルーシーは、そういう感情の機微をフォローしてくれているというか。表面上はクールなことや皮肉を言っているんだけど、その奥にはちゃんと誠実さがある。それは演技だけではない、神戸さんの人柄もあるかもしれないのですが、そういうものがにじみ出て、みんながルーシーだと思ったのではないかと思います。

 ◇スクールライフコメディー? チャーリーの“動き”に注目

 --アニメ「ダーウィン事変」をどのように楽しんでほしいですか。

 うめざわさん そんなに構えないで見てほしいというのはありますね。難しそうな社会派っぽい雰囲気をまとってしまっている感はあるんですけど、アクションでありサスペンスであり、またチャーリーとルーシーのボーイミーツガールというシンプルな話でもあります。エンターテインメントとしてしっかり作っていただいていると思うので、スクールライフコメディーくらいの感じで見ていただけるといいなと思います(笑)。

 神戸さん 先生のおっしゃる通り、私たちは“こう見るべき”みたいな観点は持っていないので、それぞれ見たものをそのまま感じていただけたらいいのかなと思います。チャーリーは、マンガを読んでいた人それぞれで違った声色のイメージがあるキャラクターだと思いますが、アニメで種崎さん演じるチャーリーの声を聴いたら、きっとチャーリーのことを改めてどんどん好きになっていくはずです。声を含めて、キャラクターの魅力に注目してほしいなと思います。

 種崎さん 人の女の子とヒューマンジーの男の子のボーイミーツガールなんて、この作品でしか見られない“ならでは”ですし、人間とは違う、ヒューマンジーのアクションシーンなんかも“ならでは”です。賢くて、圧倒的身体能力を持った新しい形のヒーローものとしても楽しめるかもしれません。「こんな作品見たことない!」がたくさん詰まっておりますので、私も見てくださる方がそれぞれ見たいように楽しんでいただけたらうれしいなと思います。

 ※種崎敦美さんの「崎」は「たつさき」

提供元:MANTANWEB

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