機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:鈍器で殴るガンダム ガンダム・バルバトス誕生秘話 メカニックデザイン・鷲尾直広インタビュー
配信日:2025/11/30 8:31
2015年10月にテレビ放送を開始したアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」が10周年を迎えた。主人公 三日月・オーガスが搭乗するガンダム・バルバトスは、内部構造のガンダム・フレームを有するMS(モビルスーツ)で、メカとしてのリアリズムがありつつ、どこか野性的なデザインは、10年以上たった今でも新鮮に見える。バルバトスのデザインを手掛けたのは、「蒼穹のファフナー」などでも知られる鷲尾直広さんだ。鷲尾さんに、バルバトスのデザインについて聞いた。
◇イメージは釘バットを引きずる不良!?
前述のように、バルバトスは、ガンダム・フレームに装甲を取り付けたMSだ。一部フレームが見えることで、内部構造の存在がはっきり分かるデザインとなっている。
「最初にコンペがあったのですが、テイワズのMSをデザインした篠原保さんが描いたものがガンダム・フレームに一番イメージが近いということで、外装は僕のデザインを選んでいただきました。ただ、篠原さんのデザインははフレームとして描いたものではなかったので、それをフレームにして、僕が外装を付けてバルバトスになりました」
バルバトスは、曲面的なデザインを取り入れ、細身ながらも力強いシルエットは、甲胄のようにも見える。
「長井龍雪監督からは、釘バットを持って引きずる不良みたいなイメージというヒントをいただきました。引きずる……というイメージなので、ほかのガンダムに比べると、肩が下がっています。ギャラルホルンのMSは甲胄のようなイメージもありますが、バルバトスはどちらかと言うと足軽っぽいかもしれません。甲胄と言われることもありますが、実はあまり意識していませんでした。
ビーム兵器ではなく、メイスや太刀などで戦う泥臭い戦闘スタイルもバルバトスや「鉄血のオルフェンズ」のMSの特徴だ。
「監督は最初から鈍器、メイスで戦うと言っていましたが、ガンダムの主人公機がメイスで?と半信半疑なところもありました(笑)。『ファイブスター物語』など鈍器で戦うメカはありますが、ガンダムではなかなかイメージできませんでした。第1話で、実際に動いているシーンを見て、監督の言っていた意味がよく分かったのですが」
確かに第1話で、バルバトスが巨大なメイスをたたきつけるシーンは、確かにインパクトが大きかった。“鈍器で殴るガンダム”という印象を強く与えた。
「格好いい鈍器をデザインしようとして、最初は悩みましたね。ダメージの質量を一点に集中させるために、尖った部分を作ったり、探り探りなところもありました」
◇三日月に合わせてデザインも変化
バルバトスはこれまでのガンダムと一線を画すデザインではあるが、ガンダムらしさも感じる。革新性がありながら、ガンダムの系譜とのつながりも感じるデザインは今見ても新鮮だ。
「ツノ(アンテナ)があって、トリコロールカラーであればガンダムっぽく見えるのかもしれません。ただ、主役機なので、外しすぎてもいけません。ガンダムとしての記号を減らしすぎると、ガンダムに見えなくなります。あとはプロポーションですね。バルバトスに関しては、人間っぽいバランスを考えています」
バルバトスは、装甲を換装することで第1~6形態になる。さらに、ガンダム・バルバトスルプス、ガンダム・バルバトスルプスレクスと改修されていく。主人公、三日月・オーガスの成長に合わせてデザインも変化していく。
「鉄華団が敵から奪ったパーツを組み合わせてどんどん変わっていく。ルプスは、三日月の戦い方に合わせてチューニングされたイメージです。ルプスレクスになると、それがさらに過剰になる。モビルアーマーのハシュマルとの戦いを経て、三日月は右半身の感覚を失うなど状態が悪くなりますが、ガンダムに乗るとどんどん強くなる。戦い方も変わって、どんどん獣のようになっていきます。個人的には、ルプスが一番デザインとしてもまとまっているので、好きですね。総じて、バルバトスは壊れた時の格好良さもありますよね。アニメで格好良さを引き出してもらっていると思っています」
◇甲胄をイメージした端白星
鷲尾さんは、スピンオフ作品「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント」の主人公機のガンダム・端白星(はじろぼし)もデザインした。同作ではガンダム・マルコシアスなどのデザインも担当した。
「実は先にデザインしたのはマルコシアスだったんです。アプリゲームで登場する機体とのことで作画のことを考えずに、アニメよりも自由にデザインしました。マルコシアスが立体化されることを後から聞き、その時点ですでに立体化を考えずに細かいパーツをたくさん付けてしまっていました。端白星に関しては、作画がされることが分かっていたので、なるべくフレームが見えないようなデザインにしました。フレームが見えると、作画が大変ですしね。先ほど、バルバトスが甲胄のように見えるという話もありましたが、甲胄をイメージしたのは端白星からでした」
「鉄血のオルフェンズ」では、ガンダム・グシオンリベイクフルシティ、ガンダム・バエルなどのデザインを手がけたが、それ以前には「機動戦士ガンダム00」でガンダムスローネやアルケーガンダムなどもデザインした。
「自分がガンダムをデザインするとは考えていませんでした。ガンダムは見るもので、自分からは遠いものだと思っていたんです。もちろんやりたかったのですが」
鷲尾さんは「鉄血のオルフェンズ」以外にもさまざまなアニメやゲームでメカをデザインしてきた。デザインする中で大切にしていることがある。
「メカデザインの仕事は、いろいろな方の意見を取り入れていくものだと思っています。自分の中にあるものだけでなく、意見を取り入れて、それが自分の中でまとまった時にうまくいく。自分の中でまとまっていない時はやっぱりダメなんですよね。アニメやゲームは作品の世界観を考えて、その世界の中でどんな使い方をされているか、どんな人物が乗るかを考えないといけません。手癖で何となく格好よく描こうとするとダメになることが多いんです。自分の好きに描いたら、地味になるかもしれません。ベースにあるのはミリタリーなので、実用性を考えすぎるんです。ロボットはキャラクター性が大切です。キャラクター性をしっかり出すことを考えています」
バルバトスも「鉄血のオルフェンズ」の世界でのリアリティーを感じるデザインが大きな魅力となっている。だからこそ、長く愛されるMSとなったのだろう。
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」10周年を記念したプロジェクトの一環として、特別編集版「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント -小さな挑戦者の軌跡-」、同時上映「鉄血のオルフェンズ」10周年新作記念短編「幕間(まくあい)の楔(くさび)」が10月31日から4週間限定で上映中。また、10周年を記念したフィナーレイベント「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 10周年記念イベント -鉄華の祝祭-」が2026年2月15日、立川ステージガーデン(東京都立川市)で開催される。(阿仁間満/MANTANWEB)
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