解説:ハサウェイと宇宙世紀 アムロとシャアの影響を受け 「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」までの軌跡
配信日:2025/11/23 13:01
劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(村瀬修功監督)の最新作「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女」が2026年1月30日に全国365館で公開される。「閃光のハサウェイ」は宇宙世紀を舞台とした作品で、主人公のハサウェイ・ノアは、1979年に放送を開始したガンダムシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」で出会ったブライト・ノアとミライ・ヤシマの長男だ。「閃光のハサウェイ」を解説する連載の第1回として、ハサウェイと宇宙世紀作品の関係をひもとく。
◇「Zガンダム」では子供だったハサウェイが!
宇宙世紀(U.C.)0079、ジオン公国が地球連邦政府に宣戦布告し、一年戦争が勃発する。「機動戦士ガンダム」では、この一年戦争が描かれる。地球連邦軍の士官候補生であったブライト・ノアは、人員不足からホワイトベースの艦長に任命される。ガンダムのパイロットとなるアムロ・レイら民間人も成り行きで戦うことになり、後にブライトの妻となるミライもその一人で、ホワイトベースの操舵士を務めていた。
ブライトはミライに思いを寄せていたが、“ホワイトベースのおっかさん”とも言われるミライは、実はモテモテ。婚約者のカムラン・ブルームが出てきたり、ミライはスレッガー・ロウのことが好きだったり、ブライトの恋路は一筋縄にはいかなかった。だが、U.C.0080に一年戦争が終結した後、ブライトとミライは結婚し、ハサウェイが誕生する。
1985年放送の「機動戦士Zガンダム」では、一年戦争から7年後のU.C.0087に起きたグリプス戦役を描く。ティターンズとエゥーゴという地球連邦軍組織の内部対立から始まり、ティターンズを掌握する木星船団のパプテマス・シロッコ、ジオン再興を窺うハマーン・カーンのアクシズなどが参戦し、混沌を極める。
ハサウェイは「機動戦士Zガンダム」でアニメに初登場する。ブライトは、エゥーゴに参加し、アーガマの艦長となる。ミライは軍を離れ、ハサウェイ、長女のチェーミンと共にホンコンに逃れていた。3人はは、ティターンズに拉致されて人質となってしまうが、アムロ、ハヤト・コバヤシ、カミーユ・ビダンによって救出される。
放送当時、ハサウェイを主人公とした「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」が生まれるとは思いもしなかった人も多いはず。ちなみに「機動戦士Zガンダム A New Translation」でファ・ユイリィとチェーミンを演じた新井里美さんは「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」でミライを演じることになる。
1986年放送の「機動戦士ガンダムZZ」の第一次ネオ・ジオン戦争には、ハサウェイは登場しないが、グリプス戦役後もエゥーゴに残った父親のブライトは、アーガマの艦長を務めており、ドック艦ラビアンローズの艦長代理エマリー・オンスから熱烈なアプローチを受けるなど“モテ期”もあったが、ミライと子供たちへの愛情から理性を保ち、不倫関係にはならなかった。
◇ハサウェイの人生を大きく変えた「逆襲のシャア」
1988年公開の「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」には13歳に成長したハサウェイが登場する。U.C.0093、第二次ネオ・ジオン戦争で、シャア・アズナブルを総帥とする新生ネオ・ジオンと、アムロ、ブライトらのロンド・ベルが激突する。ミライはハサウェイとチェーミンを連れ、ブライトと合流すべく宇宙へと上がる予定だったが、連邦政府高官アデナウアー・パラヤの割り込みによって断念し、ハサウェイのみを宇宙に送り出す。
ハサウェイは、アデナウアーの娘のクェスと出会い、恋心を抱くが、クェスは、シャアに惹かれ、ネオ・ジオンのパイロットになる。ハサウェイは、ブライトが指揮を執るラー・カイラムに密航し、クェスを救出するために、ジェガンに乗って無断で出撃してしまう。
ハサウェイは、クェスの戦死、そして、アムロが搭乗するνガンダムが起こしたアクシズショックを目の当たりにして、その後の人生が大きく変わることになる。
◇世界を変えようとするマフティー=ハサウェイ
「閃光のハサウェイ」は、ガンダムシリーズの“生みの親”として知られる富野由悠季監督が1989~90年に発表した小説をアニメ化した作品。「逆襲のシャア」から12年後、U.C.0105が舞台となる。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙に連行する非人道的な政策“人狩り”も行っていた。反地球連邦政府運動マフティーは、連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始する。リーダーの名は、マフティー・ナビーユ・エリンで、その正体はハサウェイだった。
「逆襲のシャア」の後、ハサウェイは、短い軍役を経て、地球でアマダ・マンサン教授の元、植物監視官として訓練を受けている。ハサウェイは、アムロとシャアの理念と理想、意志に影響を受け世界を変えようとする。連邦閣僚が開催するアデレード会議襲撃の準備を進めており、最新鋭MS(モビルスーツ)、Ξ(クスィー)ガンダムのパイロットを務める。
ハサウェイは、コロニーの農業ブロックからの帰り、乗り合わせたハウンゼン356便でマフティーを名乗るハイジャックに遭遇。軍仕込みの身体能力で撃退し、多くの閣僚たちの称賛を受ける。そこで、連邦軍大佐のケネス・スレッグと謎の美少女、ギギ・アンダルシアと出会い、その運命を大きく変えていく。ギギは、ハサウェイの正体に気づき、ハサウェイは、ギギとかつて思いを寄せたクェスを重ね合わせる。元はMSパイロットで「逆襲のシャア」の“シャアの反乱”の際にも戦闘に参加していたケネスは、ギギとハサウェイに運命的なものを感じる。
「逆襲のシャア」で、地球連邦政府の腐敗に絶望し、地球の重力に縛られた者たちを粛正するために立ち上がったシャア、最後まで人類の可能性と未来への希望を信じたアムロの二人から大きな影響を受け、「世界を変える」ため、地球連邦政府に反旗を翻した。それは「機動戦士ガンダム」から続く、壮大な物語の系譜にある。「逆襲のシャア」を含めた宇宙世紀をたどると、ハサウェイが幼い頃より目の当たりにしてきた世界、そして今、マフティーとしての責任を負うまでの葛藤や思いを感じられるはずだ。
「閃光」とは、瞬間的な強い光のことだが、「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケ―の魔女」で、ハサウェイはどんな光を放つのだろうか?(阿仁間満/MANTANWEB)
提供元:MANTANWEB











