岡本信彦:「ヒロアカ」インタビュー 爆豪復活回の収録秘話 「クソが!」と言い続ける理由
配信日:2025/10/25 9:31
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された堀越耕平さんのマンガが原作のテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」の最終章となる“FINAL SEASON”が、読売テレビ・日本テレビ系で毎週土曜午後5時半に放送されている。10月18日放送の第162話「ラスボス!!」では、前シーズンの第7期で死柄木弔に倒され心停止していた爆豪勝己が復活し、オールマイトの窮地を救うという熱い展開が話題になった。2016年に放送を開始したテレビアニメ第1期から爆豪勝己を演じてきた声優の岡本信彦さんに“FINAL SEASON”への思い、収録の裏側を聞いた。
◇前シリーズの「すごくグロいシーン」
“FINAL SEASON”では、約9年にわたり描かれてきたヒーロー、敵<ヴィラン>の物語がついにクライマックスを迎える。ここまでたどり着いたことに、岡本さんは「複雑な心境」と語る。
「振り返ってみると、早かったなという印象が強いです。アニメが始まった2016年の頃は、プロデューサーさんが『10年続くコンテンツにしたい』とおっしゃっていて、『10年!?』と思っていたのですが、もうそんなにたったんだと。作品やキャラクターに必死に向き合ってきたからこそ、一瞬のように思えるんだなと感じます。『ヒロアカ』ファンとしては、FINALというのが結構寂しくもあり、『終わってほしくないな』という気持ちもあるんですけど、『終わりをちゃんと見届けたい』とも思う複雑な心境です。そういう矛盾した感情を僕ら演者みんなが持っているんじゃないかなと思います」
前シリーズの第7期では、爆豪が死柄木に倒され、心臓が止まってしまうという衝撃的な展開となった。
「爆豪って、ずっとプライドをズタズタにされる毎日なんです。オールマイトに『凝り固まってた自尊心』と言われていましたが、それを壊されまくるんですよね。第7期も、ようやくみんなで共闘することによって自信が付いてきたのに、やっぱり足りない、届かなくて死柄木にやられるという描写があって、相当ショッキングな、苦しい展開だなと思いながら演じていました」
爆豪は死柄木に倒されてしまうものの、その前には覚醒の片鱗(へんりん)が見えるようなシーンも描かれた。満身創痍(そうい)の爆豪の「なァ出久 俺まだおまえに追いつけるかな」というモノローグも印象的だった。岡本さんは同シーンを「すごくグロいシーン」と表現する。
「爆豪は、出久より自分のほうが上だと思っていたのが、途中から同列に来たと思っていて。そんな人が、改めて死柄木と対峙することによって、実はもう出久のほうが自分より先に行っているということを、モノローグでも言葉にするっていうのはなかなかだなと思いました」
◇復活の爆豪 叫びたかったが…
第162話「ラスボス!!」では、そんな爆豪がエッジショットによって、彼の“個性”である体を薄く細く引き延ばせる紙肢によって命を繋ぎ止め、オール・フォー・ワンとの戦いで絶体絶命の状況に追い込まれるオールマイトを救った。復活した爆豪は、オール・フォー・ワンと戦うことになる。岡本さんは、どのような思いで収録に臨んだのだろうか。
「収録は難しかったです。立ち上がってからの演技がめちゃめちゃ難しくて、自分的には結構叫びたかったんです。完全復活をやりたかったんです。ただ、肺に血がたまり、体はボロボロで、腱も骨もギリギリでエッジショットがつなぎ止めてくれている状態だから、声が出るのもやっとの状態のはずだという演出をいただいて、『確かにその通りだな』と。嘘を入れようとしすぎたなと反省しました。だから、どちらかというと、今までみたいに元気にバーっと叫ぶというより、詰まり気味で必死に戦っている声になっていると思います」
第7期では「追いつけるかな」だったモノローグが、今回は「なんか今、追い越せる気がする」と変化したのも印象的だ。
「『追い越せる気がする』もはつらつというより、戦いの中で思わずポロっと出てしまったくらいの言葉になっています。ちょっと力強さみたいなものを入れたかったんですけど、体がボロボロとなると、どうしても出しきれない部分ももちろんあるんだろうなという」
爆豪が復活したことで、戦いはデクVS死柄木、爆豪VSオール・フォー・ワンという構図になり、デクと爆豪の2人が最強の敵とそれぞれ戦うことになった。岡本さんはこの展開に「堀越先生、めちゃめちゃ天才だと思いました!」と語る。
「出久と爆豪が共闘するのかな?とずっと思っていたんです。だから、1対2になるのかなとか思っていたんですけど、2対2にするんだと驚きました。ただ、納得もできて、死柄木は敵<ヴィラン>の中から生まれた努力型の人と考えたら、出久と若干境遇が似ていると思うんです。オールマイトに出会うか、オール・フォー・ワンに出会うかによって、全然変わったかもしれない二人が最後に戦うのがめちゃめちゃエモいなと思います。爆豪は、オールマイトに対して自分がNo.1ヒーローを終わらせちゃったという思いがある中で、その人が真っ二つにされる前に救出できた。かなりカタルシスがあった気がします」
満身創痍ながらも、これまでの雪辱を果たすかのようにオール・フォー・ワンに挑む爆豪。改めて岡本さんに爆豪の魅力を聞いた。
「爆豪は『くそが!』とか『死ね』とか最初からずっと強い言葉を言い続けているんですけど、そこにきっと意味があるんだろうなと考えると、相手にそれを言うことによって、自分のハードルを上げているというか、ずっと戦っている感じがします。言い方の悪いストイックな人みたいな。A組はみんなストイックではあるんですけど、特に狂気的にストイックなのが出久と爆豪というイメージです。それはなぜかというと、多分オールマイトがそうだからかなと。オールマイトの教え、意志、方向性みたいなものを受け継いでいる二人だからこそ、そうなっているんだろうなと思います」
提供元:MANTANWEB











