解説:「アイカツ!」「プリパラ」の時代 平成女児アイドルアニメ・ゲームを牽引
配信日:2025/10/12 10:01

アニメやゲームなどが人気の「アイカツ!」と「プリパラ」がコラボした劇場版アニメ「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」が10月10日に公開された。「アイカツ!」「プリパラ」は2010年代の“平成女児アイドルアニメ・ゲーム”を牽引(けんいん)した存在だ。「アイカツ!」「プリパラ」の時代を振り返る。
◇玩具売り場の風景を変えた
「アイカツ!」はバンダイがアミューズメントゲームを展開し、バンダイナムコピクチャーズがアニメを制作している。一方、「プリパラ」は、タカラトミーアーツがゲーム、タツノコプロがアニメを手掛けている。ライバル関係にあるはずの「アイカツ!」「プリパラ」だが、2作の10周年を記念して前代未聞の“奇跡のコラボ”を実現した。
「アイカツ!」は2012年にアミューズメントゲームが稼働を開始し、同時期にアニメもスタートした。2010年7月にゲーム「プリティーリズム・ミニスカート」から始まった「プリティーシリーズ」に連なる「プリパラ」は、2014年7月にアニメとアミューズメントゲームの同時展開を開始した。いずれもアイドルをテーマにしたアニメ・ゲームだ。
2作のルーツにあるのが、2004~08年に展開され、当時、小学生女児を中心にブームを巻き起こしたゲーム「オシャレ魔女 ラブ and ベリー(ラブベリ)」だ。2005年に登場したアーケードゲーム「アイドルマスター」が原形という分析もあるが、「ラブベリ」の影響が大きいようだ。
誕生時から「プリティーシリーズ」をプロデュースしてきたタカラトミーアーツの大庭晋一郎さんは『ラブベリ』が終了してから数年、女の子がおもちゃ売り場からいなくなってしまった。女の子を売り場に戻したかったのが全ての始まり」と話していた。10年以上前、「アイカツ!」の担当者を取材した際も「ラブベリ」を意識したことを明かしていた。
「アイカツ!」と「プリパラ」を含む「プリティーシリーズ」は、女児向けアミューズメントゲームを再興し、玩具売り場の風景を変えた。
◇AKB48の影響
当時、破竹の勢いだったアイドルグループ「AKB48」の影響も大きい。「AKB48」がアイドルファンだけではなく、子供にも浸透したことで国民的アイドルに成長した。“アイドル戦国時代”に突入していった時代に、アイドルをテーマとした「アイカツ!」「プリパラ」は誕生した。
「プリティーシリーズ」の第1弾「プリティーリズム・ミニスカート」は、「AKB48」の研究生発のアイドルユニット「ミニスカート」とコラボしており、「アイカツ!」は、当時メンバーだった板野友美さんや島崎遥香さんがスペシャルコラボパートナーを務めるなど、コラボも盛んだった。
◇平成女児ブームとの関係
「アイカツ!」「プリパラ」を10年以上取材していると、イベントの風景が変わってきたようにも感じる。放送・稼働当時、声優や歌手が出演するイベントは、“アイカツおじさん”や“プリパラおじさん”などと呼ばれていた男性アニメファンを目にすることが多かったが、近年は女性ファンが増えている。10年以上続いている作品ということもあり、放送当時に子供だったファンが大人になり、イベントに足を運ぶようになってきたようだ。女性ファンを意識したグッズも増えている。
SNSなどで、平成時代に子供だった女性たちが夢中になった文化を再評価する“平成女児ブーム”が話題になったが、「アイカツ!」「プリパラ」も女性ファンに再注目されているのかもしれない。長年、愛を注いできたファンも多いだけに、“平成女児ブーム”と結び付けるのはやや乱暴かもしれないが、コラボアニメにノスタルジーを感じる大人もいることは間違いない。
2作は、単なるキャラクターコンテンツにとどまらず、ファッションや音楽、ライブなど多面的な文化を育んできた。平成から令和へと続く“女児カルチャー”の系譜を象徴する存在となっている。
提供元:MANTANWEB