東山奈央:「機械じかけのマリー」インタビュー “ロボットメイド”難役に挑む 濃密だった収録
配信日:2025/10/05 12:31

あきもと明希さんのマンガが原作のテレビアニメ「機械じかけのマリー」が10月5日からTOKYO MX、読売テレビ、BSフジで順次放送される。人間嫌いのアーサーにとある事情で“ロボットメイド”として仕えることとなったマリーが、日々襲い来る暗殺者からアーサーを守り、職務を全うしていく。「マリーの役作りは、3時間くらい語れちゃうくらい難しさがありまして……」と語るマリー役の東山奈央さんに収録の裏側を聞いた。
◇ずっと淡々としているわけでは…
東山さんが演じるマリーは、元天才格闘家の少女で、人間を嫌う御曹司・アーサーの専属“ロボットメイド”として仕えることになります。実は人間だとバレないようにしながらも、アーサーを狙う暗殺者から彼を守ろうとする。暗殺者など物騒なワードが並ぶが、笑って泣けるハートフルラブコメディーだ。
「原作のテンポがよく、サラサラと読める面白さがあります。登場人物がみんな生き生きしていて、マンガの中で、キャラクターたちが動いているんじゃないか!というくらいなんです。アクションやハートフルな要素があり、殺し屋も登場しますが、どのキャラクターもコミカルで憎めない魅力があります。音響監督の横田(知加子)さんからも『殺し屋だけど、人の良さが見えるようなコミカルさがあって、一生懸命こう任務を全うしようとしているから面白おかしく見えるようにしたい』というお話がありました。マリーは、人間であることがバレてしまったら、命を狙われるかもしれないという危機の中で、必死に生きています。でも、どこか抜けていて、平和な感じがするのがミソになっていると思います」
マリーはロボットのように振る舞っているが、本来は表情豊かなキャラクターだ。そこが可愛くもある。これまでも数々の可愛いキャラクターを演じてきた東山さんは、マリーの可愛さをどのように表現しようとしたのだろうか?
「マリー自身が可愛いので、私自身としては可愛く演じようとは一切思ってなかったんです。淡々とした無機質なしゃべり方で、内心はコロコロ感情が変わるので、 お芝居の濃淡をくっきりさせるのが、私の使命と思っていて、可愛さを意識していなかったんです。ただ、第1話のアフレコが終わった後、原作者の先生が『マリーがこんなに可愛いんだ!と改めて気づきました』と言っていただけて、すごくうれしかったんです。マリーは本当にいい子で、真っすぐに生きているので、アーサーとのやり取りに純粋に驚いたり、照れたりします。その素直なところが可愛さの理由なんじゃないかなと思っています」
マリーはロボットメイドとして働いている際は、感情を表に出さない。一方で、心の声は感情が忙しく変化する。このギャップが作品の魅力になっているが、演じるとなると一筋縄にはいかないはず。東山さんは「難しくて……」と明かす。
「マリーは淡々としていて機械っぽいのが個性ですし、無機質だけど、少し可愛らしさが残るところを大事にしようとしました。マリーが主人公なので、セリフも多いのですが、ずっと淡々としていると、作品全体のメリハリがつきづらくなってしまうかもしれません。内面の喜怒哀楽が激しい女の子でもあって、マンガを読んでいると、そこが鮮やかに伝わり、メリハリもあるのですが、声で表現しようとすると、感情のアップダウンがつきすぎて、皆さんの思い描くマリー像から離れていっちゃうようにも感じていました。口から出ているセリフ、モノローグの差別化を図るのがすごく忙しかったです」
東山さんは「挑戦させていただけてすごく光栄でした」と話す。
「監督から、マリーは淡々とした機械っぽい女の子であるという約束事を見ている方に分かっていただかないといけないというディレクションをいただきました。後半になると、恋を自覚して、表情豊かなところも見えてきますが、前半は約束事を分かっていただく必要があります。ツッコミのセリフもありますが、前のめりになりすぎないように微調整して演じていきました。前半は抑えるお芝居をしていて、そこが難しいところでした」
◇難しいのが楽しい
マリーはモノローグも多く、切り替えが大変そうだ。セリフが多いと、オンとオフのセリフを別々に収録することもあるが、なるべく別録りはしないようにしたという。
「続けて演じた方が作品全体の仕上がりのイメージができやすいですし、続けて演じるからこそ、違いを出しやすいところもあるので、忙しいのですが、続けて収録することになりました。セリフとモノローグではトーンが違うけど、感情としては地続きなので、つなげて演じた方が私としてもスムーズですし、マリーの気持ちを最優先にしようと思って。だから、ずっと難しくて……。こんなのは初めてでした。最初は、台本のチェックの方法が定まらなくて、3話くらいからコツを見つけました。セリフは赤ペン、モノローグは青ペンにすることで視覚的に分かりやすくしたので、台本がカラフルになりました。台本のチェックにすごく時間をかけないと、本番で振り落とされそうになりますし、マリーの感情の変化をすぐさまつかめるように、目に飛び込みやすいようにメモをしました。監督や音響監督も私の悩みに寄り添って、温かく包み込んでくださりました。チームワークも良く、大先輩のスタッフの皆さんとも仲間意識が芽生え、アットホームで楽しい現場でした」
マリーを演じるのは難しかったようだが、「難しいのが楽しかったんです」とも語る。
「ラブコメディーなので、キュンとするところも大切なんですけど、ギャグシーンもすごく魅力的なので、どこまではっちゃけて演じられるかも大事になってきます。音響監督の横田さんから、ギャグシーンを面白いと思ってやると、面白くなくなってしまうし、必死に生きているところが滑稽に映るようなギャグにしてほしいというお話がありました。そのさじ加減を考えて演じました。マリーとしても命がかかっているので、必死に頑張ります。表情がコミカルに崩れたりもするので、表情に負けないようにお芝居しようとして、すごく楽しかったです」
アニメ制作には、映像にセリフやBGM、効果音などを合わせるダビングという工程がある。一般的に役者がダビングに立ち会うことはあまりないが、東山さんはダビングを見学した。
「皆さんの作業の邪魔にならないように、ダビングを見させていただきました。収録する中で難しさを感じていましたし、リテイクも細かくあったので、どのテイクが採用されたのか知りたかったんです。マリーとしての正解がまだつかみきれていなかったので、スタッフの皆さんが思い描いているゴールを共有させていただくことで、収録がスムーズになると思い、お願いしました。なかなかできない経験です。新人の頃は、お願いして見学させていただいたことはありましたが、最近はなかったですし、そういった意味でも気合いが入っています。もちろん全ての作品に全力で臨んでいますが、いろいろな方のこだわりに気付くこともできて、すごくいい経験になったと思っています」
◇バレてはいけない!? ヒヤヒヤの経験
細部までこだわり抜いたこともあり、収録を終えて、達成感もあった。
「ディスカッションもしっかりさせていただける現場で、セリフのことで少し気になったことも聞きやすい温かいムードを作ってくださっていて、それぞれのシーンにこだわって作り上げていった実感がありました。収録があっという間だったなあ……と感じることも多いですが、今回はいい意味で濃密でした」
キャスト、スタッフが一丸となって「機械じかけのマリー」は完成した。
「ポップで、恋心がキュンキュンと刺激されるような素敵なお話になっています。原作ファンの方にも喜んでいただけるすごくクオリティーの高いアニメーションになっていますし、キャラクターがキラキラしているんですよね。色彩も鮮やかで、動きも生き生きとしていて、こだわりが随所にちりばめられています。音楽もここで壮大な音楽!?とギャグや恋を盛り上げていて、初めて見た時、びっくりしました。ダビングも見学させていただき、その経験を還元することができたと思います。スタッフ、キャストのみんなで力を合わせて、すごく充実したアニメーションになっていますし、絶対楽しんでいただけると思います。初めての方も原作のファンの方も第1話から最後まで笑顔で見ていただけたらうれしいです」
マリーは正体がバレてはいけない……とヒヤヒヤ、ドキドキしている。東山さん自身はそんな経験はあるのだろうか? 最後に質問してみた。
「自分が関わらせていただいた作品が映画館で上映されていると、プライベートで見に行くことがあるのですが、先日も父母、祖母と4人で見に行きました。近くに、私を応援してくださっている方がいらっしゃって、私は気付いていたのですが、家族といたので、静かにしていました。意外とバレていないみたいです(笑)。ショッピングモールを歩いている時、私のライブTシャツを着た方とすれ違って、全く気付かれていなかったこともありましたし」
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