永久のユウグレ:津田尚克監督インタビュー テーマは“価値観の揺さぶり” アンドロイドは人類の浪漫
配信日:2025/10/05 11:01

「true tears」「SHIROBAKO」などのアニメ制作会社「P.A.WORKS」によるオリジナルテレビアニメ「永久のユウグレ」が、MBS・TBS系の深夜アニメ枠「スーパーアニメイズムTURBO」で放送されている。AIの技術が発展した未来の世界を舞台とした本格ラブストーリー。最愛の恋人・王真樹トワサと愛を誓い合った主人公・姫神アキラが長年にわたるコールドスリープから目覚め、戦争によって荒廃した街を目にする。アキラの前にトワサと酷似したアンドロイド・ユウグレが現れ、世界のどこかで生きているはずのトワサと再会できると信じて、共に旅をすることになる。監督、シリーズ構成の津田尚克さんに制作の裏側を聞いた。
◇人間が人間である意味は?
ーー今作で担当したことは?
ストーリーを考えて、絵コンテを描いて、スタッフにこういう作品を作りたいんだと熱く語り、みんなが目指すべき部分を示す係です。 読んで字の如く、作品の監督が役割でしょうか。
ーー作品のテーマは?
テーマはずばり“価値観の揺さぶり”です。ラブストーリーを描く前提でこのテーマを決めました。常日頃から自分の価値観が揺さぶられて答えが出せないまま、このままではいけないと思いつつ、ずるずる過ごす日々に何かしらの答えが出ないかという試みでもあります。SFなのは単純に自分の趣味です。SFはハードなものからソフトなものまで何でも好きです。
ーーディストピアや管理社会を“あり得る未来”や現代の鏡として描こうとしている?
ディストピア世界を舞台にすることにしたのは、描き方次第で現代の写し鏡として機能してくれると思ったからです。管理社会という制限は、別に未来だけの話でなく、大なり小なり過去未来現在に共通する部分です。描くテーマが少し煩雑かもしれないと思ったので、「自分たちのよく知っている世界が、“あり得る未来”としてディストピアになっている」というのが視聴者に共感しやすくなるといいな、という気持ちで設定しました。
ーー企画の始まりについて「遠い未来で目を覚ました時、超絶綺麗で可愛いアンドロイドに結婚を迫られたらこりゃ堪らんと思ったところからでした」とコメントされていました。
アンドロイドは人類の浪漫だと思います。できれば実際にアンドロイドが一般家庭に普及するまでは生きていたいです。アンドロイドは人間に似ていながら人間ではない、という部分に物語を感じます。それは悲喜交々、さまざまなドラマで描かれているのですが、人間が人間である意味は?など、存在価値を考えるきっかけをくれるし、人間に似せることの意味も同時に考えます。最終的に、アンドロイドが人類に取って代わってもなんら不思議はないですしね。
ーー結婚とはまた違う新しい“エルシー”と呼ばれる制度も登場します。“エルシー”は物語の核になっていく?
“結婚”“エルシー”という二つの制度は、この作品のテーマである“価値観の揺さぶり”を描く上で共感を得やすいモチーフだと思って設定しました。やはり、身近な問題でないと話も入ってきにくいですから。このアニメを見て、友達と“結婚”派か“エルシー”派かなんて話で盛り上がってもらえたら、こちらとしてはシメシメという感じです。
◇それぞれの価値観で愛を証明しようとする
ーー第0話の舞台を現代ではなく少し未来にした理由は?
現代にした場合、アンドロイドがまだまだ先だな、という気持ちになりますが、少し未来ならここ数年で話題のAIもあって、「くるな」と思ってもらえると感じたからです。
ーー第1話以降は、戦争によって荒廃した世界が舞台になります。鉄道が走っているなど原始的な世界ではないようですが、どの程度の文明レベルを設定した?
ポストアポカリプスな世界を描きたいと思っていました。ただ、あまりに荒廃した世界だと管理社会に説得力を出せるかな、という懸念もあったので、独自の文明が形成されたポストアポカリプスでディストピアな世界ということにしました。都市部から離れるほど文明レベルが下がる、という決まりごとを設定して、あとは1900年代初頭くらいをイメージして世界観を組んでいきました。
ーーシリアスな展開が中心としてなると思いきや、コミカルなところもあります。バランスが絶妙です。
とにかくキャラクターを好きになってもらいたかったからです。好きなキャラの恋愛事情は、本当に気になるので。自分の中で、キャラを好きになる瞬間ていくつもあるのですが、小気味よい掛け合いは何度も見てしまいます。このアニメを見てくれる人にも、同じ気持ちになってもらえるとうれしいな、と。
ーーアクションシーンのこだわりは?
ユウグレは“美しくてカッコ良くて可愛いくて、激強いアンドロイド“を目指しました。ファンタジー作品にあるような魔法などはない世界ですが、人間には不可能な動きが可能なアンドロイドというこtで、動き幅の大きい躍動感のあるアクションを狙っています。
ーーP.A.WORKSならではの美しい映像も魅力です。P.A.WORKS作品の魅力は?
P.A.作品の魅力はたくさんありますよね。“お仕事もの”や“透明感”などが良く上がる部分ですが、個人的には特に「人生を積み上げるような作品」に魅力を感じます。地味で根気がいる作業ですが、そこを丁寧に描こうとスタッフが前向きに取り組む姿を目の当たりにして、映像の魅力は人が作るもの、と感銘を受けています。
ーー最後にメッセージをお願いします。
この作品は、魅力的で可愛いキャラたちが、喜怒哀楽全ての感情で自らの愛を証明しようとする作品です。アキラ、ユウグレ、アモル、トワサ、みんなそれぞれがそれぞれの価値観で愛を証明しようとします。彼らがどんな選択を迫られ、答えを出すのか、一緒に見届けて下さい。後悔はさせません!
提供元:MANTANWEB