櫻井孝宏:「鬼滅の刃」インタビュー 冷たく、熱い冨岡義勇の魅力
配信日:2025/08/02 7:31

吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんの人気マンガが原作のアニメ「鬼滅の刃」の新作劇場版アニメ「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」が7月18日に公開された。「無限城編」では、鬼殺隊と、鬼舞辻無惨ら鬼たちとの最終決戦が描かれる。第一章では、竈門炭治郎と鬼殺隊最強の剣士・柱の一人、水柱の冨岡義勇が、上弦の参の猗窩座と激闘を繰り広げる。2019年4月に放送を開始した「竈門炭治郎 立志編」から冨岡義勇を演じているのが声優の櫻井孝宏さんだ。冨岡の魅力、演技のこだわりについて聞いた。
◇目に焼き付いている竈門兄妹の後ろ姿 冨岡義勇の裏表
冨岡は、「竈門炭治郎 立志編」第一話「残酷」に登場し、炭治郎と禰豆子の兄妹が初めて相対した柱。「無限城編」第一章では、猗窩座と戦う炭治郎を目にした冨岡が第一話「残酷」での出会いを思い返し、炭治郎の成長を感じる場面が描かれる。櫻井さん自身も、第一話の収録が「ずっと目に焼き付いている」と語る。
「限られたキャストでの、緊張感のある丁寧な収録でした。作画に力を入れている作品だなということが見て取れました。序盤の悲劇が起こるくだりは、マイク前の炭治郎役の花江(夏樹)君と禰豆子役の鬼頭(明里)さんを、私はずっと見ていたのですが、その姿がすごく印象に残っているんです。2人の真剣な後ろ姿がずっと目に焼き付いてます」
第一話「残酷」では、冨岡は炭治郎に厳しい言葉を投げかけるキャラクターとして登場した。当初、櫻井さんはどのように冨岡にアプローチしていったのだろう。
「セリフを情報として考えました。まだその当時は原作も連載中でしたし、セリフだけの情報で行こうと。先を知りすぎるのは、私的には余計な情報になりそうだなと。かつ、第一話の冨岡は、視聴者、読者にも分かるようにこの作品の世界の仕組みを一気に語ってくれる。苛烈に厳しく炭治郎を叱責するのですが、その実、心の中は彼をおもんぱかるような言葉に溢れている。私にしてみると、この裏表が彼を推し量るにあたってのヒントになって、冷たくも熱い、そういうバランスの人なのかなと思いました」
◇印象的だった「俺は嫌われてない」
その後の冨岡の登場シーンで、櫻井さんが「すごく印象的だった」のが、「俺は嫌われてない」というセリフだという。那田蜘蛛山で、蟲柱である胡蝶しのぶに「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」と言われたのに対するセリフだ。
「人を遠ざける、拒絶するような態度を取っている人であれば、『それならそれでいい』と返しそうなものですが、『俺は嫌われてない』と。それがすごく印象的だったんです。そして話が進むにつれて、恐らくこの発言こそが彼の本来の人間性を表しているのではないかと。錆兎との別れがあって深く傷ついた彼は、結果的に柱まで上り詰めたのだけれど、それでも自分で自分を呪ってしまう、追い込んでしまうループから抜け出せなかったんでしょうね」
その結果、「俺は水柱じゃない」という発言に繋がったのではないかと分析する。
「でも、本来の彼は『柱稽古編』で解放された後の『不死川におはぎをあげよう』と言ってしまうような、炭治郎っぽい人間なんだと思います。それが本来の彼の性格なんじゃないかなと。どこかあどけなさを感じる、子供のような表現の仕方をする。柱のスキルとのギャップを感じますが、恐らくそれはギャップに見えてギャップではないのではないかと」
「無限城編」第一章では「冨岡の新たな面も見せようとした」と語る櫻井さん。目まぐるしい戦いの中で、櫻井さんら声優陣が表現しようとした心の機微を劇場で感じたい。
「鬼滅の刃」は、家族を鬼に殺された竈門炭治郎が、鬼に変異した妹・禰豆子を人間に戻すために鬼殺隊へ入隊する……というストーリー。原作は、2016~20年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された。コミックスの全世界累計部数は2億2000万部以上。テレビアニメ「竈門炭治郎 立志編」が2019年4~9月に放送され、2020年10月公開の劇場版「無限列車編」が国内累計来場者数約2897万人、国内歴代興行収入1位となる約404億円を記録した。「遊郭編」が2021年12月~2022年2月、「刀鍛冶の里編」が2023年4~6月、「柱稽古編」が2024年5~6月に放送された。「無限城編」は三部作。
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となる。 ※鬼舞辻無惨の「辻」は点一つのしんにょうが正しい表記となる。
提供元:MANTANWEB