ルパン三世:原点回帰の「LUPIN THE IIIRD」 手描きだから表現できる躍動感 小池健監督インタビュー

配信日:2025/06/29 7:01

「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」のビジュアル 原作:モンキー・パンチ (c)TMS
「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」のビジュアル 原作:モンキー・パンチ (c)TMS

 故・モンキー・パンチさんのマンガが原作の人気アニメ「ルパン三世」の完全新作となる劇場版アニメ「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」が6月27日に公開された。「LUPIN THE IIIRD」シリーズの最新作で、モンキー・パンチさんが初めて監督を務め、1996年に公開された「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」以来、約30年ぶりの2D劇場版アニメとなった。「LUPIN THE IIIRD」シリーズの「次元大介の墓標」「血煙の石川五ェ門」「峰不二子の嘘」「銭形と2人のルパン」と同じく小池健さんが務めた。小池監督に「LUPIN THE IIIRD」シリーズの制作の裏側を聞いた。

 ◇ならではのシズル感

 「ルパン三世」は、1971年にテレビアニメ化されて以来、劇場版アニメやOVA(オリジナル・アニメ・ビデオ)などさまざまな名作が生まれてきた。「LUPIN THE IIIRD」シリーズは、ハードボイルドな世界観、手描きならではの味が魅力で、モンキー・パンチさんの原作のマンガへの“原点回帰”を目指している。現代のアニメ制作ではデジタル技術は欠かせないものになっているため、全てがアナログというわけではないが、あえて作画(手描き)にこだわってきた。「約30年ぶりの2D劇場版アニメ」ということだが……。

 「2Dがメインではありますが、3Dも使ってはいます。デジタルなのですが、ルックを2Dのように落とし込んで作っています。ツールとしてCGは便利ですが、自分自身は手描きで動かすのが好き。ダイナミックで、少しゆがんだ表現は躍動感を見せる時に効果的なんです。自分で自由にコントロールできますし。それで作画にこだわっているんです。手描きでできるところはできるだけ表現していますが、CGも使っていて、バランスよく付き合っていければと思っています」

 “原点回帰”ではあるが、自由な発想でアニメを制作している。

 「モンキー・パンチ先生の原作は劇画調だったり、アメコミ調だったりする雰囲気があり、そこを踏まえつつ、躍動感のある映像に落とし込もうとしています。先生ご本人はすごく優しい方で『好きにやっていいですよ』と言ってくださり、その言葉をいただいてからも、伸び伸びやらせていただいています。アニメーションはやっぱり動かしてなんぼみたいなところがありますし、躍動感のある映像に心が動くタイプなので、そこを大事にしようとしています」

 原作には、1960~70年代当時の独特のハードな空気感がある。

 「クリエイティブ・アドバイザーの石井克人さんは『シズル感』という言葉をよく使っています。あえて強調して、ビジュアルにインパクトを付けようとしています。全て描き込むのではなくて、引き算もありますし。立たせたいところがあれば、ほかは情報量を減らすなどコントロールする必要があります。このシリーズがほかの『ルパン』と違って見えるとしたら、そこにこだわっているからでしょうか。テレビアニメ第1シリーズの初期、第2~9話辺りの雰囲気を漂わせたいと思っていて、あそこら辺に入っていてもおかしくない作品を作ろうとしています。1970年代前後に設定しているので、携帯電話も出てきません」

 ◇“レジェンド”友永和秀の仕事ぶり

 「不死身の血族」にはこれまでの「LUPIN THE IIIRD」シリーズと同じく、アニメーターの友永和秀さんが参加している。友永さんは「ルパン三世 カリオストロの城」で有名なカーチェイスシーンを手掛けたことでも知られている。

 「このシリーズは友永さんがメインで入っていただいています。友永さんはレジェンドですが、現役バリバリで、一番多く手掛けられているんじゃないですかね。中堅、若手に負けないパワーがありますし、画力、質、量のどれもが素晴らしいんです。誇張した動きの表現が独特で、ケレン味もあります。ご本人から『自分が思っているよりも1.5倍くらい大きく動かさないと迫力が伝わらない』と聞いたことがあります。本当に勉強になります」

 友永さんのような大ベテランが現場に入ることで、ほかのスタッフも刺激を受けている。

 「若手や中堅は、身近で友永さんが描いているのを見ていますしね。見ているだけでも刺激を受けますし、若手も伸びています」

 ◇「LUPIN THE IIIRD」でやり切った

 小池監督は「LUPIN THE IIIRD」シリーズで、演出、キャラクターデザイン、メカニックデザイン、作画監督の全てを手掛けている。

 「これまでと同じく、全部を担当したのですが、今まで800カットだったけど、今回は1200カットで全然多いんです。メインキャラクターそれぞれに見せ場を作りたかったので、これまで以上にボリューム感がありました。作監がなかなか追いつかなくて、いろいろな方に手伝っていただきました。いろいろな人に助けられた、みんなで作ったっていう印象が一番強い作品です」

 小池監督は自身について「欲張りなんでしょうね」と語る。

 「ぼんやり流しちゃうと、流れていくので、それはできるだけ避けたい。どの画面もクオリティーを維持したい欲求があるんです。自分でやりたいところが多いし、全てに目を通しておかないと、自分がイメージしたものを具現化できない。チェックしておきたいっていう部分が多いんです。任してしまえばと思われるかもしれないですし、今回は任せてしまうところは任せることを実感したので、次回からはやり方を考えないといけません」

 「LUPIN THE IIIRD」シリーズは、次元、五ェ門、不二子、銭形、ルパンとメインキャラクターにそれぞれ焦点を当ててきた。今後の展開も気になるところではあるが……。

 「私の『LUPIN THE IIIRD』はこれで終わりです。私のやりたかったことは果たせました。『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の前日譚となるようなエピソードをやりたいというピースも埋められて、美しく完結を迎えたと自分では思っています。12年間もやらせていただけたことは、とてもありがたいですし、私としてはやり切りました。私は幸運なんです。アニメの業界の中では『ルパン』は特別で、やりたいという方もたくさんいらっしゃいます。だから、ほかの方が作る『ルパン』を楽しみにしています」

 「LUPIN THE IIIRD」シリーズは「やり切った」ということではあるが、小池監督の挑戦は今後も続く。

 「いろいろなものに挑戦していきたいです。私は子供の頃に映画の『銀河鉄道999』や『ルパンVS複製人間』を見て、クリエーティブな衝動に駆られたのですが、自分が作ったものが、そういう衝動の後押しができればうれしいですね」

提供元:MANTANWEB

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