瀬戸麻沙美:「薬屋のひとりごと」インタビュー 子翠と楼蘭を「地続き」で演じる “大立ち回り”を「やり切りました」
配信日:2025/06/27 7:01

日向夏さんのライトノベルが原作のテレビアニメ「薬屋のひとりごと」で、子翠、楼蘭を演じる瀬戸麻沙美さん。物語が進む中で、おしゃべりで明るい虫好きの下女・子翠の正体が、現帝の妃で上級妃・四夫人の一人の楼蘭であることが明らかになった。子翠、楼蘭という難役に挑んだ瀬戸さんに収録の裏側を聞いた。
◇子翠、楼蘭の根っこは一緒
「薬屋のひとりごと」は、ライトノベルがヒーロー文庫(イマジカインフォス)から刊行されており、コミカライズも人気を集めている。原作のシリーズ累計発行部数は4000万部以上。舞台は、とある大陸の華やかな後宮で、毒見役の少女・猫猫が、後宮管理者・壬氏と共に陰謀やウワサのひしめく後宮で起きる事件に巻き込まれていくことになる。テレビアニメ第1期が日本テレビ系で2023年10月~2024年3月に放送された。第2期が日本テレビのアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で放送中。
子翠は第2期から登場した新キャラクターだが、楼蘭は第1期にも登場していた。実は、瀬戸さんは第1期でも楼蘭役として出演していたが、キャストはクレジットされていなかった。子翠=楼蘭というネタバレを避けるための配慮だったのだろう。
「第1期は、息のお芝居がメインで、セリフとしては壬氏様に『ごきげんよう』と言うところだけでした。クレジットにも出ていなかったので、第1期の時は周囲に『薬屋』に出ています!という話をしていませんでした。今回、オーディションではなかったのですが、最終回の収録後、長沼総監督からお話を聞くタイミングがあり、別作品のオーディションで私のお芝居を見てくださっていて、楼蘭役ができると思い、お声をかけていただいたのがきっかけだったそうです」
天真爛漫(らんまん)でテンションが高い子翠、上級妃らしい落ち着きを備えた楼蘭は一見、全く別のキャラクターのようではあるが……。
「演じ分けが難しいという感覚はそんなにありませんでした。表情も声色も全然違いますが、根っこは一緒なので、私としては差をあまり感じていなかったんです。自分の中で地続きという印象でした。第2期で子翠が初登場した際、『もっとテンションを高く』というディレクションをいただきました。もちろん天真爛漫であることは分かっていたのですが、私の想像以上でした。第2期の最終回に向けて楼蘭との差を大きくしたいから、子翠はすごくテンションを上げてというディレクションでした。最終回を見据えてのテンションの高さだったんです」
◇子翠は“そうありたかった自分”
子翠は、正体が明らかになる前から意味深な発言で、楼蘭としての顔が見え隠れするシーンもあった。ただの天真爛漫な下女ではない“匂わせ”がちりばめられていた。子翠が無意識で匂わせてしまっているシーンがあれば、意識して匂わせているシーンもある。
「無意識に出てしまうところは猫猫目線、意識的にやっているところは子翠目線でそれぞれ描かれていると思っていました。無意識にポロッと出てしまっているシーンは、猫猫だから気付いていると思いながら演じていました。猫猫は人をよく見ていますからね」
子翠、楼蘭は複雑なキャラクターだ。複雑な思いを心に秘めながら、母・神美がもくろむ謀反に従う。
「楼蘭は、神美の理想のお人形さんで、諦めた姿だと思っています。母に合わせて、感情を殺して生きてきた。アニメでは描かれていませんが、元々は天真爛漫なところが根っこにあったと思うんです。それを抑制されて、本当の自分が分からなくなったのかな?と想像していました。楼蘭を演じる時は、楼蘭の書いている台本通りにしゃべっているイメージです。やることや言うことが決まっていて、言葉を発している。強く言うセリフもありますが、それは強く言うタイミングだから言っているだけ。彼女は楼蘭を演じていたんだと思います。猫猫や小蘭に見せていた子翠としての顔は、彼女が“そうありたかった自分”なのかもしれません。子翠を演じているので、猫猫、小蘭との3人での思い出は、全部ウソだったのかもしれない……。でもそう思いたくないし、多分そうじゃないんです」
◇ここで決めねば!と挑んだ第47話
第45話で、猫猫が「子翠」「楼蘭」のどちらで呼ぶのか迷いながら、「子翠」と呼びかけると「なあに」と返すシーンも印象的だった。
「猫猫が『子翠』と呼んだ後の“間”に、子翠の心の動きが見えます。本人もうれしかっただろうし、あの“間”に答えが詰まっていると思います」
猫猫役の悠木碧さんと共演する中で刺激を受けた。
「あおさんとは10代の時からご一緒させていただいていますが、『薬屋』で一気に距離が近くなったとも感じています。お話しさせていただく機会が多くて、あおさんのことがより好きになりましたし、猫猫はすごく難しいキャラクターだと思うので、やっぱりすごいなあと見ていました。心が動くようなお芝居を一緒にできたので、あおさんのことをより知れた気がします。」
楼蘭は子翠という自分の素直な面を持ちながらも、楼蘭として母の人形になりきっている。それを演じる瀬戸さんは……と難役ではあるが、「楽しかった!」と笑顔を見せる。
「第2期の軸になるキャラクターですし、しっかり演じようとしました。彼女を理解して演じることが楽しみで、やりがいを感じていました。しっかり思考したら、その分だけ答えが返ってくるような作品、役どころなので、考えて、演じる時間が楽しかったんです」
瀬戸さんは、6月27日放送の第47話について「ここで決めねば!という思いがありました。やり切りました」と話す。
「子翠として猫猫、小蘭の3人で過ごした日々は、猫猫を利用するためだった、ウソだったんじゃないかと思う方もいるかもしれません。第47話では、楼蘭がどうしてこんな大きなことをやろうとしているのか?という答えが出ます。楼蘭の一世一代の大立ち回りをぜひ見届けていただきたいです。ますます楼蘭、子翠に引き込まれるはずです」
第2期の2クール目のエンディング映像では、子翠、猫猫、小蘭の何気ないけど美しい日常が描かれているのが印象的だ。この日常はウソだったのか? そんなことはないはずだ……。楼蘭の「一世一代の大立ち回り」、「やり切った」という瀬戸さんの演技にぜひ注目してほしい。
提供元:MANTANWEB