【画像で紹介】「進撃の巨人」名言・名台詞は「駆逐してやる!」だけじゃない
更新日:2016/04/13 10:30
まったく興味がない人でも、これが野球漫画でないことくらいは知っている大ヒット作「進撃の巨人」 (諫山創/講談社) 。2009年から別冊少年マガジンで連載を開始し、2015年には実写映画化もされました。
塀の中に閉じこもって生きるしかない人類と、外敵の巨人という設定の魅力もさることながら、極限状態に置かれている登場人物たちのセリフは、たくましく、またときには狂気を感じることもあり、この作品を盛り上げている要因だと思います。
今回は主人公のエレン・イェーガーはもちろん、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト。そしてこの人抜きに巨人は語れない、リヴァイ兵長のセリフを振り返りながら作品をみていきたいと思います。
「進撃の巨人」とは
人間を食う巨人がいる世界で、人々は高い壁の中で暮らしています。しかし外の世界への憧れを抱く主人公エレンは、あえて外の世界へと踏み出していく調査兵団に入り、自由のため、復讐のために巨人との戦いに身を投じるというファンタジーバトルです。
ファンタジーといいましたが、作品の根底に流れる問題意識は現実世界とも通じるものがあり、キャラクターたちの声は、現代を生きる読者に単なるセリフを超えて響くものがあるのかもしれません。
エレン・イェーガーの名言
作品の主人公であるエレンは、ミカサやアルミンと幼なじみで、巨人の襲来以来、3人で力を合わせて混乱のなか生き延びてきた少年です。もともと外の世界への憧れは抱いていましたが、母親の復讐という動機も加わり、調査兵団に入っていくことになります。
「駆逐してやる!! この世から… 一匹… 残らず!!」
(c) 諫山創/講談社
物語で、特に巨人の謎が明らかになっていく前、エレンの戦う動機は復讐です。そんなエレンが何度となく口にする言葉が「駆逐してやる」です。
突然エレンから日常を奪った巨人への復讐という軸は、もうひとつの軸である自由への憧れとともに、読者を物語世界へと一気に引き込んでいきます。
「戦わなければ勝てない…」
(c) 諫山創/講談社
幼い頃のエレンがミカサに戦うことを求めるときに言ったセリフがこちら。このセリフの前後で、名字の違うふたりがなぜ姉弟のように暮らしていたのかなど、エレンとミカサの関係性が明らかになります。
調査兵団で戦うようになったあと、追い詰められた訓練兵の仲間を鼓舞するために、ミカサもこのセリフを言うことになります。
「オレ達は皆生まれた時から自由だ それを拒む者がどれだけ強くても関係無い」
(c) 諫山創/講談社
壁の穴を巨人の力でふさごうとするときの言葉です。
死に物狂いで戦う調査兵団の団員たちや、エレンがかつてミカサを守るために武器を手に強盗に立ち向かったときの絵にかぶせて、このセリフがあります。
「オレ達は自由なんだ」というシンプルな言葉が、単なるエレンのセリフを超えて、作品メッセージとして伝わってくる名言です。
「調査兵団に入って…とにかく巨人をぶっ殺したいです」
(c) 諫山創/講談社
巨人化の力を巡って捕らえられているエレンが、リヴァイ兵長から「お前がしたいことは何だ?」と聞かれたときの答えがこれです。
「黒騎士物語」(日本出版社)や「Cat Shit One」(ソフトバンククリエイティブ)などの戦場劇画で知られる、小林源文先生の作品などにもよく見られますが、戦場で剥き出しにされる狂気ともいうべきものが感じられる、魅力あるセリフだと思います。
「この…腰抜け共め… いいから黙って全部オレに投資しろ!!」
(c) 諫山創/講談社
兵法会議にかけられたエレンが、身勝手な大人たちに怒りをぶつける有名シーンより。
この頃より作品全体としても、単に巨人だけを相手としたバトルものというより内なる敵も意識させるような展開になっていきます。巨人とだけ戦い続けるというような、ルーティンにならない展開も本作が読者を惹きつけている要因だと思います。
ミカサ・アッカーマンの名言
エレンを常に見守っているミカサは、調査兵団に入る前からも入ったあともエレンより常に強い女の子です。
まるでターミネーター2のT-800のように、滅私でエレンを守っていますが、その動機は自分のためにかつて戦ってくれたずっと幼い頃のエレンにあるようです。
「まだアニと戦うことを… 躊躇してるんじゃないの?」
(c) 諫山創/講談社
地下で退路をふさがれてしまったときに、巨人化してミカサとアルミンを守ろうとするエレンだが、うまく巨人化できないエレンにミカサが言い放つセリフがこちら。
もともと、ミカサは主義主張というよりはただエレンを守るためだけに闘い続けるわけですが、他の誰よりもエレンをみているからこその鋭いセリフですね。
「仕方無いでしょ? 世界は残酷なんだから」
(c) 諫山創/講談社
エレンを守るために、アルミンとミカサのどちらかが犠牲になる覚悟で別々の方向に脱出を計る場面で、アニと戦うことにそれでも躊躇するエレンに向かっていうセリフです。
この「世界は残酷」というのも作品テーマとなって何度も繰り返し放たれるメッセージ。
「次は無い… 次はもう…無い」
(c) 諫山創/講談社
ついに、巨人は壁の外にだけいるわけではないということがわかってきた頃の場面より。 仲間だったはずのふたりが裏切り、巨人化されてしまったときのミカサのセリフです。
彼らが巨人化する前に、急襲するチャンスがあったのに、首をはねそこねたという自責の念からミカサはこうつぶやきます。私情を挟まずに淡々と巨人を狩るミカサが、珍しく怒りではなく後悔の念を表す場面でもあります。
「私が尊重できる命には限りがある」
(c) 諫山創/講談社
連れ去られたエレンを取り戻しに来たときに、ユミルには情けをかけられないという状態でいうセリフ。
このあとに続く、「なぜなら今は心の余裕と時間が無い」というセリフは心の問題と時間的余裕というリアルな問題を、疑うことなく同列に扱っていて、ゾクッとするほど冷たく緊迫しています。
「マフラーを巻いてくれてありがとう…」
(c) 諫山創/講談社
激しい戦いのさなか、珍しくミカサがエレンに気持ちを伝えるシーン。
マンガですから音はないのですが、このシーンだけはそれまでの戦闘の音がフッと消えて、エレンとふたりだけの世界が広がる演出がまるであるかのような錯覚がする、印象的なシーンです。
アルミン・アルレルトの名言
ミカサ同様、エレンの幼なじみです。アルミンは見た目通り腕力もさほどなく、直接巨人をバタバタ倒せるような力は持っていません。
ただし知略に優れていて、調査兵団で巨人を研究しているハンジとともに、勝つための戦略を練ります。
「100年壁が壊されなかったからといって 今日壊されない保証なんかどこにもないのに…」
(c) 諫山創/講談社
幼い頃から頭の切れるアルミンならではのセリフです。
常識を疑え、というこの姿勢は兵団に入ってからも続き、ハンジとともにさまざまな戦略や分析をする役どころへつながっていきます。そしてアルミン自身も、力が無いために自分は役に立たないのではないかという殻を破って、自信を得ていくことになります。
「何も捨てることができない人には 何も変えることはできないだろう」
(c) 諫山創/講談社
女型の巨人を罠にかけた際に、作戦を立てたエルヴィン・スミス団長をアルミンはこう表現しました。
直接戦うことは少ないアルミンは、状況を俯瞰するようなセリフも多く、こちらも単なるキャラクターの言葉というよりは、作者のメッセージが土台にあるように思えてきます。ホームズの活躍を描くのにワトソンが欠かせないように、エレンの物語にはアルミンの視点が必要なのだと思います。
リヴァイ兵長の名言
圧倒的な強さと粗暴な口調で、主人公のエレンよりもある意味キャラが立っているリヴァイ兵長。
なぜこのような性格なのか、生い立ちなどは物語が進んでいくなかで明らかになりますが、この人がいるからこそ調査兵団が厳しい状況をくぐり抜けてきた強者揃いだということが説得力を持つのだと思います。
「お前は間違ってない やりたきゃやれ」
(c) 諫山創/講談社
女型の巨人に追われている最中、突破をもくろむリヴァイ班のメンバーに、エレンが戦うべきだと言い出したときに兵長が言ったセリフです。
兵長は自身の経験から、自分を信じても仲間を信じても、結果は誰にもわからないと考えていて、「まぁ、せいぜい… 悔いが残らない方を自分で選べ」と続けます。
「教会の中でやってた妄想と少し違ったか?」
(c) 諫山創/講談社
ニック司祭から話を聞き出すために、リヴァイ兵長は彼を巨人から逃げてきた人たちのところへと連れて行きます。力で脅すわけではなく、壁が突破されたことの現実を見せるのが目的でしょう。
これだけでも、リヴァイ兵長というキャラクターが単に最強というだけの人ではなくて、厚みのあるキャラクターであることが伝わってきます。
「これからは力を合わせて 巨人に立ち向かおうじゃないか」
(c) 諫山創/講談社
ついに憲兵団も戦闘に借り出されてきた場面でのやりとりから。
巨人との戦闘にならなかったため「おれらの獲物はどこだ?」とのんきなセリフを吐く憲兵団に対して、リヴァイ兵長が気のない表情で言うセリフです。
慇懃無礼とはまさにこのこと。痛快です。
「何言ってんのかわかんねぇなクソメガネ…」
(c) 諫山創/講談社
ハンジの「巨人は人間なのかも」という言葉を受けてのリヴァイ兵長のセリフです。
本当にわからなくて言ったのではなく、今まで自分が殺してきたのは人間だったのか? というリヴァイの気持ちの表れているセリフです。
だからといって巨人との戦いをやめるわけではないし、和解できるとも思っていないでしょう。これからも当然戦って行くという前提があって、巨人が人間だなんてわかりたくもない、ということなのかもしれません。
その他の調査兵団員の名言
今みてきた以外にも、常に死と隣り合わせの調査兵団員がいうセリフには素晴らしいものがたくさんあります。
最前線で戦いながら巨人を調べるハンジ・ゾエなど、注目に値する調査兵団員たちのセリフをまとめてみていきましょう。
「私達に見えている物と実在する物の本質は… 全然違うんじゃないかってね」/ハンジ・ゾエ
(c) 諫山創/講談社
巨人を捕らえ、調査しているハンジがいうセリフです。
狂気の人というイメージもありますが、現象に対しては公平な見方を常にしていることがわかりますね。
「何言ってんの? 調査兵団は未だ負けたことしかないんだよ?」/ハンジ・ゾエ
(c) 諫山創/講談社
もう負けたんだ、と弱気の発言をするリーブス商会のどら息子に対して、ハンジが切り返すセリフ。この頭のネジがおかしくなっているような、戦場の狂気は作品の魅力ですね。
「森なめたら死にますよあなた!!」/サシャ・ブラウス
(c) 諫山創/講談社
狩人出身のサシャがミカサにいうセリフです。ミカサも油断しているわけではないのでしょうが、ミカサはこの直後に「悪い予感がめっぽう当たるサシャ」といっており、この先の激戦を予感させる会話です。
「人は戦うことをやめた時初めて敗北する」/分隊長ミケ・ザカリアス
(c) 諫山創/講談社
勝算がないんじゃないか?…そんな絶望的な状況に置かれたときの分隊長のセリフです。
このセリフも、作品テーマといっていいのだと思います。エレンの「戦わなければ勝てない」とつながってきますね。
「彼らの死を利用するな」/ユミル
(c) 諫山創/講談社
塔に追い詰められたとき、クリスタの「一緒に戦って死ねるのに…」というセリフに対するユミルの返答がこちら。
クリスタの死に対する想いを知っているユミルならではのセリフですね。
「何いい人ぶってんだよ!! そんなにかっこよく死にたいのかバカ!!」/クリスタ
(c) 諫山創/講談社
クリスタの死生観を鋭くついたあと、秘密にしていた力で巨人と戦っているユミルに対して、今度はクリスタが言い放ったセリフ。
ふたりの本音がぶつかり合ういいシーンです。
「うん… まずくもうまくもねぇ… いつも通りだ」/ハンネス
(c) 諫山創/講談社
巨人の戦いに負けて、エレンが連れ去れたとき、落ち込むミカサに食料を渡していうセリフ。
この世界では、大人は手助けしてくれる存在でもなければ、導いてくれるわけでもない。ハンネスもそんな大人のひとりで、強いわけでも頼りになるわけでもないが、ここだけは、よき大人の意見という印象が強いセリフですね。
「今まで俺が巨人に何百人食わせたと思う?」/エルヴィン・スミス団長
(c) 諫山創/講談社
巨人に右腕を食いちぎられたエルヴィン団長がリヴァイ兵長に言うセリフです。
調査兵団を率いて、今まで何人もの団員を作戦遂行のために失ってきた団長ですが、貴い犠牲だったなどといいわけをする気はなく、その報いは受けるだろうし、団員が自分の作戦で死んでいったという事実はずっと忘れないという覚悟が読み取れる言葉です。
おしまいに
エレンのセリフをご紹介した際にも取り上げましたが、「進撃の巨人」 の名ゼリフには、戦場劇画で有名な小林源文先生のセリフ回しに通じる快感があるような気がしています。 戦争と、巨人との戦い。相手が違うという差はあれ、命のやりとりをする、極限状態におかれた人間のつぶやく言葉は、粗野なものであっても本質的というか、聞くものの心に訴えかける力が強いように思えます。
アンソロジーなどを読むと気づくことが多いのですが、物語を進めるためのセリフがほとんどである作品と、状況がキャラクターにセリフをいわせていることが多い作品があります。
戦記物では、状況はキャラクターたちの都合に関係なく変化していくものですから、後者の方が有効だと感じることが多いです。
「進撃の巨人」 は、めまぐるしく変化する過酷な状況に翻弄されるキャラクターたちが、ときに悪態をついたり、強い意志を示したりと、セリフの読ませ方が本当に優れています。
巨人と戦うという設定もさることながら、この素晴らしいセリフ回しも「進撃の巨人」 のヒットを支える大きな原動力だと思います。