独占有名人インタビュー:TKO「人生を変えるほどの影響力が漫画にはある」
更新日:2017/06/30 10:00
実力派コント師として知られ、幅広い世代に人気のお笑いコンビ・TKO(木本武宏さん・木下隆行さん)。これまで読んできた数々の漫画、登場キャラから色々な影響を受けてきたという二人。彼らのクオリティの高いコント、ネタ作りのセンスを培ってきたものは、もしかすると漫画なのでは!?
TKO 木下隆行
木下:めちゃ犬君、めちゃ可愛いですね。同じ白いパグを飼っているから、最初見たとき「僕の犬や」って思いました(笑)。
――お二人は電子で漫画を読むことはありますか?
木本:iPadでよく読むんですけど、持っておきたいのは現物で買って、それ以外は電子ですね。レンタルで読んだりもします。
木下:僕も電子漫画読みますよ。飛行機とか長時間の移動では欠かせないです。
“漫画のモテ男”に憧れて迷走した青春時代
――どんな漫画が好きですか?
木下:少女漫画なんですけど、「ホットロード」 (紡木たく/集英社) は青春時代に読んでハマってましたね。学生の頃、兄貴が貸してくれて「お前もこういう男になりや」というメッセージだったんじゃないかと。春山洋志( はるやま ひろし)という暴走族の少年が、かっこよくて憧れていましたね。
TKO 木下隆行
――きょうだいから勧められる漫画の影響って大きいですよね。
木下:春山は16歳で、高校へ行かずにガソリンスタンドでバイトしているんですけど、読んでいた当時の僕も16歳で、高校を辞めたときだったので、何となく春山にシンパシーを感じながら読んでいました。あと、主人公・宮市和希(みやいち かずき)のような、ちょっと大きめ袖長めのトレーナーでロングスカート、みたいな女の子を僕も探していましたね。
――当時、特に女子の間で絶大な人気があった作品ですが、木下さんも読んでいたとは意外でした。
木下:「ホットロード」 (紡木たく/集英社) の春山がNIGHTS(ナイツ)という暴走族のチームに入っていて、僕らの時代は暴走族が多かったので正直憧れていたんです。でも、僕はビビりだったので、現実は一人寂しくバイクに乗って、暴走族から近からず遠からずの距離をとって走って、少しでも春山の気分を味わおうとしていました。
木下:チームが交差点へ入る前に、春山が単独で突っ込んで他の車を止めるシーンが一番かっこええなって。僕もバイクで交差点に入るときは、このシーンの気持ちになってました。一人でしたけどね。
――「ホットロード」は、2014年に三木孝浩監督で映画化もされましたよね。
木本:木下とは中学からの友人なので、もちろん「ホットロード」 (紡木たく/集英社) もそうだし、お互いが読んだ漫画の話をよくしました。青春時代に好きだった漫画が映像化されるのはすごく嬉しかったですね。のんさんも登坂広臣さんも、すごくハマってましたね。でも、今の若者にあの世界観って伝わっていたのかな?
木下:最近はもう暴走族は古い感じだからなあ……当時はカッコイイものだったから、今の人が見るとまた違った感覚なのかも。
木本:当時の若者の多くが、何かモヤモヤがあって、仲間と集まって憂さを晴らしたい、バイクに乗りたい、みたいな雰囲気があって。
木下:今みたく、ネットとかゲームだったりファッションだったり、楽しいことが少なかったからね。そういうストレスが当時の若者を動かしていたのかなあ。
TKO 木下隆行 (左)/木本武宏(右)
- 少女漫画 ホットロード
- 4.4 (1123件)
――他にはどんなものを読んでいましたか?
1巻表紙
右曲がりのダンディー©末松正博/講談社木下:「右曲がりのダンディー」 (末松正博/講談社)ですね。
木本:「ホットロード」 (紡木たく/集英社) とぜんぜん毛色違うやん(笑)。
――かっこよくてモテ男ではあるけど、春山とは大分キャラが違いますね(笑)。
木下:「右曲がりのダンディー」 (末松正博/講談社)も兄貴に渡されました。「今度はこういう男になりや」というメッセージだったのかなあ。18、19歳くらいの頃、同世代は高校を卒業する時期に、僕はディスコの従業員をやったりフラフラしていたんです。そんなとき「右曲がり」と出会って、「ホットロード」 (紡木たく/集英社) の和希を探していたウブな僕が、本格的に女性に目覚め、今度はホストになるっていう。
――特別、印象に残っているシーンはありますか?
変な向きで用を足す一条
右曲がりのダンディー©末松正博/講談社木下:やっぱり主人公の伊達男・一条まさとの“右曲がり”度合いが強烈で。トイレも横向き、エッチも横向き。「そんなになるまでするか!?」って思ってました。都内のマンションに住んで、ポルシェに乗って、スケジュールが女性で埋まるくらいモテまくりの東京ライフ。大阪の田舎者としては憧れだったし、純粋に男としてもうらやましかったですね(笑)。
恋愛モノの淡~い雰囲気が好き
――一方、木本さんはどんな漫画が好きなんでしょうか。
木本:「ホットロード」 (紡木たく/集英社) もそうだけど、妹が少女漫画や恋愛モノの漫画をいっぱい持っていたので、僕も結構読みました。少女漫画の淡~い感じが好きなんですよ。もちろん少年漫画も好きで、「キャプテン翼」 (高橋陽一/集英社) 、「釣りキチ三平」 (矢口高雄/講談社) 、「うる星やつら」(高橋留美子/小学館)あたりを読んでいました。
TKO 木本武宏
――「ホットロード」で木下さんがバイクで走り出したように、木本さんが漫画から受けた影響はありますか?
木本:少年時代に、「キャプテン翼」 (高橋陽一/集英社) でサッカー、「釣りキチ三平」 (矢口高雄/講談社) で釣りを始めたので、大人になった今でも続いている趣味は、漫画から影響を受けたものが多いです。
――最近はどんな漫画を読みましたか?
木本:しばらく少女漫画から離れていたんですけど、最近になって「あ、そういえば少女漫画っておもろかったよな」と思い出して、また読み始めました。とりえあえず、映像化されていたり、話題になっている作品から読もうと思って、「俺物語!!」 (アルコ・河原和音/集英社) 、「逃げるは恥だが役に立つ」 (海野つなみ/講談社) 、「東京タラレバ娘」 (東村アキコ/講談社) とか。特に「俺物語!!」 (アルコ・河原和音/集英社) はビジュアル的にも気になっていて、読んでみたらドンハマりで。
――「俺物語!!」のどんなところが好きですか?
木本:主人公の剛田猛男(ごうだ たけお)に尽きますね。見た目いかつくて、不器用で、彼女もいたことがない、というモテない男の代表みたいな存在なんだけど、男子からの人望は絶大で、自分と対極にあるような流行りものやイケメンとかを否定するわけでもなく、本当に純粋で真っ直ぐなやつなんですよ。男の良い部分をすべて凝縮したような男というか。
――数ある少女漫画の主人公の中で、猛男は異色ですよね。
木本:面白い少女漫画は色々あって、僕も好きでたくさん読んでいるんですけど、優しくてキラキラしていて王子様的な男子、というのはパターンとしてよくありますよね。僕はそれをカッコイイとは思うんだけど、本当に憧れるまでは行かないんですよ。その点、猛男は男から見ても女から見ても、全人類から見ても一番素敵な男だと思うんです。
大和凛子(やまと りんこ)を奪おうとするイケメンのパティシエ・一之瀬(いちのせ)に対しても、猛男は嫉妬心を感じつつも、逆に力になってあげるんですよね。男である女であるという以前に、人としての思いやりを大切にしている猛男だからこそ、最終的にはみんながハッピーになるという流れが本当に良いなって。
木本:猛男がなかなか大和を下の名前を呼べないところもグッときます。僕なんかは猛男と正反対で、女性に対して厚かましいので、仕事で一緒になる子をすぐ下の名前で呼んでしまう。猛男みたいな朴訥な男がいかに素敵か、彼の生き様に触れたことで、自分の中に隠れていた、元々なりたかった理想の男性像を発見できた気がします。
- 少女漫画 俺物語!!
- 4.6 (3897件)
剛田猛男は高校1年生。身長2m・体重120kg(いずれも推定)。好きになった子は、いつも幼馴染...
もし自分が強大な力を手に入れたらどうするか
――少女漫画以外だと、最近はどんな漫画を読んでいますか?
木本:今だと「いぬやしき」 (奥浩哉/講談社) が超面白いです。絵がキレイで映像みたいだし、テンポも良いので、全話通しても一時間半くらいで読み終わりましたね(笑)。冴えないおっちゃん・犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)さんが、ある日突然、強大な力を手にする……というかロボット人間になるんですけど、最初はかなりびっくりしました。
木本:犬屋敷さんは手に入れた力を善意、人を助けることで生きていく証にするけど、同じように力を手に入れた青年・獅子神皓(ししがみ ひろ)は、人を殺めることで生きていく証にする。物語はこの対極にいる二人の対決になっていくんだけど、読んでいくうちに「自分も同じような力を手にしたら、何するんやろうな」って考えさせられます。そういう意味では、テーマがはっきりしている漫画を好んで読んでいるのかな。
- 青年漫画 いぬやしき
- 4.1 (954件)
その男には誰にも言えない秘密がある! 58歳サラリーマン2児の父。希望もなければ人望もない冴え...
――お二人とも色んな漫画を読んでいて、そこから何かを受け取ったり、考えたりするんですね。そういうものが、芸人としての糧にもなっているのでしょうか。
木本:僕から見て、木下の方が子どもの頃から色んな漫画を読んでいて、そういう感性みたいなものが染み付きながら大人になっているから、芸人としてええなって思います。
「ぬいぐるみがしゃべる」みたいなTKOのネタがあるんだけど、漫画でもよくあるパターンですよね。でもお笑いのネタ作りでは漫画のままやるのではなく、「でも実際にしゃべって動いたらめっちゃ怖くない?」というように、それを逆手に取ってまた別のものを生み出すことができるんです。
木下:漫画の中では正義だったり感動だったりするものが、よくよく現実に置き換えると「おかしいやん」っていうツッコミどころがたくさんあって、そこにネタって転がっていることがあると思うんですよね。
世の中まだまだ面白いことはたくさんある
――めちゃコミ10周年にかけて“10年”という数字に、お二人はどんな思いがありますか?
TKO 木下隆行 (左)/木本武宏(右)
木本:歳を重ねていくと、色んなことに「どうでもいいわ」って鈍感になりつつあるんですけど、全然どうでもよくなくて、世の中まだまだ面白いこといっぱいあるし、気にしないとあかんこと、突っ込まなきゃいけないことはいくらでもある。僕にとって漫画とは、何かに対して面白いなと思う感性、芸人としているべきステージにいさせている接着剤というか、脳みそを柔らかくするための教科書なのかなって思います。
木下:……めっちゃ色んな例えが出たな。“10年”で言うと、僕らが東京進出して10年目。振り返るとあっという間で、「ああ、東京で10年生活してるんや」っていまだ新鮮に感じます。芸歴も25年を超えて、正直こんなに長く続けられるとは思っていなかったですね。飽きっぽいし。
木本:職業柄どの現場でも色んなことがあるので、やっていて飽きないですよね。楽しいからこそ、ずっと続けてこれたところもあるし。
木下:あと少しで結成30周年だけど、これまで10周年も20周年も25周年も、特に何もしてこなかったので、フワッと過ぎていくのかな。でも、今日と明日、今と来年、まったく同じことはしていないと思うし、自らそういう変化を作っている部分もあります。相方も言っているように、この先もまだまだ面白いことはたくさんあると思うので、一日一日着実に楽しくやっていければ最高ですね。
TKO 木本武宏(左)/木下隆行(右)
自身が影響を受けた漫画について熱く語ってくれました。常に面白いことを探して、自分の行きたい方向へ進んで行く彼らの姿勢、見習いたいですね!
写真:原 恵美子
プロフィール
TKO(てぃけーおー)
ツッコミ担当の木本武宏(1971年生まれ・大阪府出身)と、ボケ担当の木下隆行(1972年生まれ・大阪府出身)からなるお笑いコンビ。中学時代の友人同士で、1991年にコンビ結成。芸歴25年を超え、数々の人気バラエティ番組に出演するほか、映画やドラマへの出演など、第一線で活躍し続けている。
◆木下隆行さん Twitter
https://twitter.com/tkokinosita
◆木本武宏さん Twitter
https://twitter.com/tko_kimoto
◆松竹芸能株式会社 TKO公式プロフィール
http://www.shochikugeino.co.jp/talents/01/post-70.html
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