萌え絵が苦手な漫画家・田中光が秋葉原のメイド喫茶で本場の“萌え”を学んでみた

萌え絵が苦手な漫画家・田中光が秋葉原のメイド喫茶で本場の“萌え”を学んでみた

更新日:2018/12/20 10:00

悩める漫画家、メイド喫茶初潜入!

シュールギャグ漫画「サラリーマン山崎シゲル」で名を馳せているお笑い芸人・田中光。漫画家としてさらなるスキルアップを目論む彼が最近悩んでいるのは、「女の子を可愛く描けない」こと。売れる漫画の一つの要素として「萌え」はやっぱり外せません。

(左)田中光さん (右)第18回「独特な武器のあぶなそうな奴」より抜粋(この夫婦は止まらない/©田中光)

(左)田中光さん (右)第18回「独特な武器のあぶなそうな奴」より抜粋(この夫婦は止まらない/©田中光)

そこで、“萌え”のプロたちから学ぶべく、田中さんと向かうのは、萌えの聖地・秋葉原にある老舗メイド喫茶「メイドカフェぴなふぉあ 壱番星劇場店」。

萌えとは今まで一切関わってこず、メイド喫茶も初体験になる田中さん。お店の前で待ち合わせをすると、ヒゲを蓄えた怪しげな男性が…。

店の前に置いてあるフリーペーパーを漁る田中光さん

店の前に置いてあるフリーペーパーを漁る田中光さん

スタッフ「何やってるんですか」

田中「いや~、秋葉原だけあって、フリーペーパーも資料になりそうなものが満載ですね!さあ、萌えを学びにいざ出陣~! 早く行きますよ!」

普段はテンションの低い田中さんもやる気満々です。

萌えのスペシャリスト降臨

店内で待っていたのは、「まんがタイムきららMAX」(芳文社)で「サジちゃんの病み日記」 (アサギユメ/芳文社) を連載中の漫画家・イラストレーターのだんちょ/アサギユメさん(以下「だんちょ」)。

ちっぱい(ちっちゃいおっぱい)好きの漫画家・だんちょさん

ちっぱい(ちっちゃいおっぱい)好きの漫画家・だんちょさん

繊細な画力で、ロリっ子をフェチ感たっぷりに描いた作風で萌えファンから支持を得ているだんちょさん。現在連載中の「サジちゃんの病み日記」 (アサギユメ/芳文社) では、ストーカー少女のヤンデレ萌えを描いています。

表紙

表紙

サジちゃんの病み日記
(c) アサギユメ/芳文社
青年漫画 サジちゃんの病み日記
アサギユメ
評価:2.3 2.3 (10件)
  • 完結
  • 恋愛
  • ダーク

サジちゃんには好きな女の子がいます。その純粋すぎる感情は他人には理解されないけれど、きっと真実...

なぜか、だんちょさんのことを男性だと思い込んでいた田中さんは、予想外のキレイな女性の登場に少しオドオドしています。

田中さんとだんちょさんの対面が済んだところで、まずは実物のメイドさんからあふれ出す“萌え”をよく観察していきましょう!

ピンクのチェック柄と萌えイラストでまとめられたかわいいメニュー

ピンクのチェック柄と萌えイラストでまとめられたかわいいメニュー

「omoideセット」のお絵かきドリンクという何やら気になるメニューを発見。深みのある味わいのカフェラテの上に、メイドさんがお絵描きしてくれるサービス付き!

「永遠の5歳児です☆」と元気いっぱいに挨拶してくれたメイドの「たから」さんにお絵かきドリンクを注文してみました。


たからさん「できました~☆ めしあがれ☆」


田中「……」

たからさん「田中さん、どうされましたか?」

田中「あ、今、ファミレスで注文来たときくらいのテンションで見てました。すいません…」

どうやら、まだまだ萌えアンテナがさびついている様子です。

萌えイラスト講習スタート!

注文が届いたところで、早速イラスト講座を開始します!最初は、それぞれ自身の絵柄で描いてもらうことに。せっかくなので、メイドの「しゅり」さんにハートのポーズをお願いしてみます。

萌えオーラ満点の「しゅり」さんですが、「東京に住んでいる普通の21歳です。踊るのが好きなのでメイドになりました」と、しっかりとした受け答えをするリアリスト。

しゅりさん「萌えビーム☆」

しゅりさん「萌えビーム☆」

メイドさんの可愛さに心乱すことなく、真剣な顔でデッサンを進める田中さん。


「しゅり」さんは手をハートの形にして胸の位置でキープしたまま、笑顔を絶やすことなく静止し続けています。これぞプロフェッショナル。

徐々にイラストも形になってきます。

既に萌えの雰囲気が漂うだんちょさんのイラスト

既に萌えの雰囲気が漂うだんちょさんのイラスト

一方の田中さんは……。

何か別の世界観が漂っています

何か別の世界観が漂っています

メイドの笑顔が消えた

「しゅり」さんをモデルにした、二人のイラストが完成です。

やっぱり、同じモデルを描いても全然変わるものですね。


それぞれ、イラストのポイントを聞いてみると…。

だんちょ「しゅりさんの表情や、頭からちょこんと出ている猫耳が可愛いので、あえてポーズは控えめにしてみました」

作・だんちょ

作・だんちょ

だんちょ「ロリっ娘二人を絡ませたくて、サイドにもう一人メイドさんを配置してます。メイド服ならではのスカートのふわっとしたシルエットやフリルの繊細な描写など、ディティールにもこだわりました」

モデルになってくれた「しゅり」さんも、可愛い絵にご満悦のようす。

しゅりさん「嬉しい~☆」

しゅりさん「嬉しい~☆」

だんちょさん作のイラストに「すご~い☆可愛い~☆」と喜ぶ「しゅり」さん。

一方、田中さんの絵はというと…?

田中躍動感を意識しました」

作・田中光

作・田中光

だんちょ「“シュッ”て…何かエンカウント感がありますね」

これには先生も微妙な反応。でも、それまで笑顔をキープしていた「しゅり」さんならきっと…

しゅりさん「……ありがとうございます」

しゅりさん「……ありがとうございます」

…やっぱり、今日はとことん萌えを学んでいきましょう田中さん!

表情のデフォルメが肝! だんちょ流“萌えの極意”

だんちょ先生にも、田中さんのイラストをチェックしてもらいましょう。


だんちょ全然だめですね」

田中さんのビフォーイラストをばっさり一刀両断。

だんちょ「第一に…萌えが足りないですね。顔が簡略化されているので、もっと顔に描き込みを入れると良いと思います」

田中「ハート型の手のディティールに気を取られて、顔は最後にパパっと描いただけになってしまいました…」

だんちょ「萌えを描くのに一番重要なのは、顔です。“可愛い”を強調するために、顔のパーツをデフォルメして目・鼻・口の距離を縮めると、それだけで可愛くなります。鼻は描かなくてもいいくらいで、私はいつも“ちょんっ”と点を打つだけ」

だんちょさんのイラストは、目が大きく、鼻はほとんど描かれていません

だんちょさんのイラストは、目が大きく、鼻はほとんど描かれていません

だんちょ「あと、デッサンがとれていて良いんですけど、頭身がリアル過ぎちゃうと、萌えとの結びつきが弱くなってしまうので、もっと子どものような骨格を意識すると良いかも」

田中「たしかに僕の絵、手足や体つきがゴツいですね」

だんちょ「女性特有の丸みもプラスしてみましょう」

女性特有の丸みを指導。分かりやすいです

女性特有の丸みを指導。分かりやすいです

だんちょ「このイラストに点数をつけるとしたら…【可愛さ20点・面白さ100点】。田中さんの持ち味の“面白さ”はすごく出ているんですけど、もっと“可愛さ”を意識すれば、表現の幅が広がって、さらに魅力的な絵が描けると思います」


田中「なんででしょう…ショックを受けつつも、【面白さ100点】で喜んでいる自分がいます」

果たして“萌えの極意”はつかめるか!?

「面白い」の一言で満足しかけている田中さんですが、それでは終われません。だんちょさんに教わったポイントを参考に、再び萌えイラストに挑戦していきます。

次のモデルは、メイドの「たから」さんにお願いしました。

たからさん「萌えポーズってこんな感じですか?」

たからさん「萌えポーズってこんな感じですか?」

“顔を丁寧に描き込む”というアドバイスを踏まえ、イラストを描き出した田中さん。

瞳を大きく、鼻を小さくデフォルメ。ポイントをしっかり取り入れていますね!

瞳を大きく、鼻を小さくデフォルメ。ポイントをしっかり取り入れていますね!

果たして完成はどうなることでしょうか…。

ぴなふぉあ名物・ライブステージ!

二人がガリガリとイラストを描いていたところ、店内に明るいBGMが流れ始めました。どうやら「メイドカフェぴなふぉあ 壱番星劇場店」名物のメイドさんによるライブパフォーマンスが始まるようです。

まず登場したのは、最初のモデルを担当してくれた「しゅり」さん。アップテンポの曲に合わせて小動物のように如くぴょこぴょこと可愛く踊っています。「踊りたくてメイドになった」というコメントに恥じない、キレのあるダンスです。

笑顔で踊る「しゅり」さんと、黙々と作業する田中さん。

笑顔で踊る「しゅり」さんと、黙々と作業する田中さん。

集中してキャンバスと向き合う田中さんですが、周りのお客さんの歓声でようやく目線を上げました。

ステージにじぃーっと目をやる田中さん

ステージにじぃーっと目をやる田中さん

…何を考えながらメイドさんの姿を見ているのでしょうか。


田中「普段、自分も芸人として舞台に立つので、どうしても演者側の立場になってしまいますね。もっと空間を大きく使った方が彼女の魅力が引き立つと思う」

…やや辛口のステージ評が飛び出しました。

田中「まあこんなヒゲ男がアリーナで絵を描いてたら、やりづらくてしょうがないですよね」

“萌え”と“面白さ”の共存

その後、「たから」さんもステージで可愛らしい歌声を披露し、パフォーマンスは終了。と同時に、イラストも完成したようです!

ドヤ顔で見せつける田中さん

ドヤ顔で見せつける田中さん

初回こそ振るいませんでしたが、今回のだんちょ先生の講評は…?

だんちょ「柔らかい雰囲気で、すごく良くなってます。リアルよりだけど、あったかい感じ」

得意げに鼻を膨らませる田中さんを横目に、だんちょさんは「でも…」と続けます。


だんちょ【面白さ】が全くなくなっちゃってる。この女の子に、何か喋らせてみましょうか」

田中「え~!?」

田中「……大喜利だな」

田中「……大喜利だな」

少し考えた後、「これだ!」と田中さんがセリフを描き込みました。

メイドさんが絶対言わないセリフ

メイドさんが絶対言わないセリフ

だんちょ「面白要素も付け足されて、よくなったと思います。点数としては【可愛さ70点・面白さ30点】くらいですね」

田中【面白さ30点】…か……」

お笑い芸人としてはショックだったようです。

オリジナルキャラクター「サチコ」をかわいく描いてみる

だんちょさんから厳しい採点をもらい、落ち込んでしまった田中さん。いつも描き慣れているもので、気を取り直してもらいましょう。

田中さんが「めちゃマガ」内で無料連載中のギャグ漫画「この夫婦は、止まらない!!」のヒロイン・サチコをだんちょ流“萌えの極意”を踏まえて描いてもらいました。

赤丸で囲んでいるのがサチコです。

赤丸で囲んでいるのがサチコです。

田中「できましたー」


だんちょ「なんかこれ『カリオストロの城』のクラリスっぽくないですか?」

田中「あっ…たしかに。じゃあ…」


サインを「みや●きはやお」に偽装し、右上には既視感のある人物を描く田中さん。

だんちょさんが楽しそうに「これ、サイン変わってる!」と笑うのを見て、田中さんもご機嫌なようす。

だんちょ「「サチコ」の素朴な魅力がよく出ていると思います! 頬の赤みもアクセントになっていてかわいいです。あとは、田中さん自身の“女性へのフェチ”を入れることによって、よりかわいく女の子を描くことができると思います。今後萌えイラストを描く時のためにも、ぜひ田中さんの好きなフェチを見つけてみてください!」

ちなみに、萌えを学ぶ前と後に描いた連載中の漫画のサチコの比較はこちら。


↑ビフォー「サチコ」:第23回「ペガサス」より抜粋(この夫婦は止まらない/©田中光)


↑アフター「サチコ」:第24回「棒高跳び」より抜粋(この夫婦は止まらない/©田中光)

表情がかわいくなり、以前より垢抜けた印象です。同じ髪型でも「おかっぱ」から「ボブ」に変わったような気がします。

取材を終えて…最後に、今回モデルを務めてくれたメイドさんたちと記念撮影。

美女に囲まれ、今日初めてちゃんとした笑顔になった田中さん

美女に囲まれ、今日初めてちゃんとした笑顔になった田中さん

田中「なんだか接近すると思わず微笑んでしまう。これが“萌え”なのかもしれない!」

メイドさんのふるまいに「うんうん」と優しく頷く田中さん。その表情からは、どちらかというと“親心”を感じましたが、今まで萌えとは無縁だった田中さんに新しい世界を知ってもらえたということで良しとします!

メイドさんの萌え言動に触れ、だんちょさんの的確なアドバイスを聞き、充分に“萌え”を教わった田中光――…。“萌えの極意”への道は今開かれたばかりです!

撮影=都築みやこ

今回ご協力いただいたお店「メイドカフェぴなふぉあ 壱番星劇場店」の詳細はこちら。
今年で15周年を迎える、老舗メイド喫茶です。ライブステージは毎日開催中!

【メイドカフェぴなふぉあ 壱番星劇場店】 地図

https://loco.yahoo.co.jp/place/g-lKmPcR5n6b2/

※上記リンクは外部サイトに接続します

プロフィール

田中光

芸人/漫画家

お笑い芸人でありながら漫画家としても活躍している。自身のSNSに投稿した1コマギャグ漫画「サラリーマン山崎シゲル」で一躍ブレイク。同作をはじめ、「レタス2個分のステキ」「私たち結婚しました」「カラオケ流星群」など、数々の作品が単行本化された。

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作者

都築みやこ

都築みやこ

少女漫画から青年漫画まで、多ジャンルを好む雑食系。休日は家に引きこもり、誰かのオススメ漫画を読み漁っています。
好きな作品は「女王の花」「この音とまれ!」「賭ケグルイ」など。

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