とどまることのない女の欲望を描いた『タブーを犯した女たち』
更新日:2016/10/12 10:00
性欲、所有欲、金銭欲…女の欲望は尽きることを知りません。
親子間や姉弟間の近親相姦、お金を目的とした殺人など、歯止めのできない“タブー”を、彼女たちはなぜ犯してしまったのか。
読者の実体験の投稿をもとにした本作では、タブーを犯してしまった彼女たちの生態を「欲望」という観点から紐解いてみます。
大切なものはそばに…【所有欲】による歪んだ愛情
「タブーを犯した女たち~巣箱の中で~」 (和田海里/竹書房) は、息子への捻じれた愛が行き過ぎた所有欲を生んでしまった話。
7年に及ぶ不妊治療の末、ようやく息子を授かった利恵子の友人・直子。
直子は彼女の息子・直人を溺愛。利恵子はその様子に多少の違和感を覚えていたものの「息子べったりはやめたほうがいいと思うよ」と軽く忠告をするくらいでした。
ある日、利恵子は“離婚祝い”と称し、彼女の家に招待されます。なかなか子どもを授からなかったことで夫の実家とも折り合いが悪く、またあまりに息子ばかりに目を向けていたせいで夫に浮気されてしまっていたのです。息子の助言もあって、彼女に有利な形で離婚を進められたそうですが、利恵子はその“離婚祝い”という響きに何か引っかかるものを感じます。
そして実際に彼女の家を訪れた際に、その異常さをはっきり目の当たりにすることになるのです。
まるで恋人同士のような食事の光景に、言葉も出ない利恵子。なんと二人は、お風呂や寝室まで一緒だと言います。
ただならない雰囲気を感じ取った彼女は、居心地の悪さに翌朝は早々にお暇することにします。
後日、久しぶりに会った彼女は、どことなく表情が生き生きとして、キレイになったように見えました。
何気なくたずねてみると、衝撃的な事実を告げられます。
なんと彼女が泊まったあの日以来、息子と肉体関係を持っているとのこと。
いつも一緒のベッドで寝ていても、その日までは特に何もなかった二人。しかし、彼が女性の身体に興味を持ち、直子もまた女としての反応を示したせいで、直人の性欲を目覚めさせてしまったのです。
あまりに常識はずれなことを赤裸々に語る直子に対し、利恵子は彼女と距離を置くことを決めます。
そんな中、主人公のもとへなぜか直子の息子から一本の電話が…。彼は利恵子に一体何を伝えようとしているのか?
結末まで読めば、サブタイトル『巣箱の中で』の意味がわかることでしょう。
女性は男性よりも嫉妬心が強く、束縛をしてしまいがちだといいます。
そんな女性の多くが抱えるのは「所有欲」。好きなものや大事なものはそばにおいておきたい、片時も目を離したくない、という思いからそんな欲望が生まれてしまうようです。
息子が成長するうち、息子にとっては私だけ、という思いが強くなっていく直子。
しかし、夫婦間の問題までも息子の言いなりになってしまっていた彼女は、逆に息子の所有欲を満たす対象でもあったのです。
過度な依存や支配は、やがて抱えきれないほど大きな「所有欲」となります。
あなたの周りにも、息子に異常な執着心を持つ母親はいませんか?
彼女たちだって、いつ「親子」という名の歯車が狂い出すかは誰にもわかりません。
異常な【金銭欲】が生み出した悲劇
好きな服を着て、好きなものを食べて、広い家で何不自由なく暮らす…そんな生活に憧れている人も多いのではないでしょうか。
しかし現実は厳しく、望み通りの生活が送れる人なんてほんの一握り。ほとんどの人が、何もかも満たされた生活に夢を抱きつつも我慢を強いられています。
次に紹介する「タブーを犯した女たち~歪んだ願い~」 (牧原もも/竹書房) の主人公は、金銭欲が暴走し悲惨な人生を歩むことになってしまった芳恵。こちらは実際にあった事件の犯人の半生を元にしたお話です。
夫を殺し、バラバラにして鍋で煮込むというあまりにセンセーショナルな事件。
犯人である妻・芳恵は保険金目的だったというが、特に生活に困窮しているわけではありませんでした。平和な生活を投げ出してまで、彼女を犯行に走らせたものは一体何だったのでしょう?
実は、彼女が殺人をおかしたのはこの時が初めてではありませんでした。
初めて殺したのは、喫茶店の経営をしている親戚。親戚に度々お金を借りていた芳恵は、あるとき彼女と口論になり、衝動的に殺害してしまったのです。
彼女はなぜお金にこだわるのでしょうか?
それは彼女の家庭環境にも由来するのかもしれません。
父親は仕事をサボって朝から飲んでいるような怠け者。身体の弱い母親も内職をして必死に家計を支えましたが、無理がたたって病死してしまいます。
さらには母の死後すぐ、父親が新しい恋人を連れ込み、子どもの前だろうとところ構わず破廉恥なことを繰り返すように。芳恵には二人の兄がいましたが、劣悪な家庭環境の中、家を空け非行に走るようになります。
「お金さえあれば…」
彼女は結婚したり仕事先を変えたりする中、ことあるごとにそう思いました。お金さえあれば、自分の人生は満たされると思っていたのです。
しかし、彼女がこの半生で愛を注いだのは、愛犬のムクのみ。
たとえば彼女が、貧乏だとしても周りからの愛情を一心に受けてきていたのなら、お金への執着や欲望をここまで膨らませずに済んだのかもしれません。
幸福感や満足感はお金でしか得られないと思ってた彼女もまた、被害者なのでしょうか? ふとそんなことを考えさせてしまう作品です。
【性欲】は理性的手段になり得るか?
本シリーズで、タブーを犯した女の特徴の一つとして表現されるのが性欲。
「タブーを犯した女たち~巣箱の中で~」 (和田海里/竹書房) も、愛する息子に気圧され、また自身も女としての久々の快感に目覚め、肉体関係を続けてしまいます。
抗えない生理的欲求の一つとして印象的ですが、唯一「タブーを犯した女たち~愛の記憶~」 (緑川あきら/竹書房) では、思いを断ち切るための理性的な方法として表現されています。
優と杏奈は血の繋がった姉弟。小さな頃、結婚しようと約束した二人でしたが、姉には結婚したばかりの夫がいました。
しかし、二人は“姉弟だから”の理由で互いに思いを秘めていたものの、実は相思相愛だったのです。
そこで二人が思いを断ち切るために、一度だけ身体を重ねます。明日からはまた姉弟に戻ろう、と約束をして。
性欲は生理的欲求の一つですが、そこに理性が介入するとき、それは単なる欲求ではない何かになるのではないでしょうか?
人間は女に限らず、煩悩にまみれた生き物。
本シリーズでは、たがが外れてしまえば誰だってタブーを犯しかねないという恐ろしさもまた感じることができます。
皆さんも欲望に支配され、禁忌を犯すことのないよう気をつけてください。
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作者
ヘルシー鮫
漫画と猫と今川焼きが好きなゆるいオタク。テニプリは青春にしてホーム。永遠に千石清純に恋してる。【twitter】@herusamecochan
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