妄想が覗かれている!?『高台家の人々』と送るラブコメディ
更新日:2016/08/25 10:00
妄想が好きという人、いませんか?学校や職場で、何か出来事があるたび、とりとめもないストーリーやヘンテコなキャラクターを思い浮かべて、ぼーっとしてしまう、そんな方。
その妄想が、実は、好き勝手覗き見されていたとしたら、どうでしょう? しかも、憧れの相手に……。
漫画雑誌『YOU』で連載されている「高台家の人々」 (森本梢子/集英社) は、そんな妄想好きOLと、相手の心を読める能力を持つ高台家の長男であるイケメン社員との恋愛模様を描いたラブコメディです。2016年6月に実写映画化もされ、話題を集めているこの漫画の魅力を、たっぷりご紹介します!!
あらすじに入る前に、作者の紹介を。森本梢子さんは、1985年に『YOU増刊VIVID YOU』(集英社)でデビューすると、『YOU』を中心に執筆活動を行い、「ごくせん」 (森本梢子/集英社) や「デカワンコ」 (森本梢子/集英社)はテレビドラマ化され、大ヒットを記録しました。「ヒットメーカー森本梢子」とも呼ばれているそうです。
そんな作者が描く「高台家の人々」は2013年から『YOU』で連載が始まり、現在5巻まで発売されています。(2016年8月現在)
妄想が笑われている!?
主人公・平野木絵は、幼いころから空想癖があり、他人と話すのが苦手な29歳のOL。あるとき、風邪をこじらせて4日間会社を休みました。寝床で会社が謎の集団に占拠されて機能停止に陥っているという空想を繰り広げつつ。
会社に復帰すると、何か社内の様子が変わっていることに気づきます。朝早くからとにかく女子社員が多い……?
原因はニューヨーク支社から来た超イケメン社員・高台光正でした。
彼はイギリス人の血を引き、名門である高台家の長男。オックスフォードへの留学経験があり、目はブルー、身長180センチ、27歳独身、趣味はスポーツ全般……と、もう超絶ハイスペック。典型的な王子様です。
イギリスと聞いて、木絵はこんな妄想を繰り広げます。
……もちろんドダリー卿は重要人物ではありません。木絵はこういう妄想が仕事の邪魔になるとはわかりつつもなかなかやめられません。
その後、エレベーターで一緒になったり、仕事で遭遇したり、信号待ちで出くわしたりと、不思議なくらい高台光正と出会います(オマケにいつも何かクスクス笑っている)。しかも、話したこともないのに、いつの間にか木絵の名前まで把握されていました。
吹き出すタイミングが妄想とリンクしている……?
この直後、木絵は光正から食事に誘われ、会社内は騒然となります。地味系女子とイケメンエリート社員の恋とかいう、絵に描いたような組み合わせですから、当然っちゃ当然です。
心が読めるの?
しかし、光正はなぜ木絵に興味を持ったのか? 不思議になって、木絵は光正に「人が考えてることがわかる…の?」と質問しますが、光正は「もしそんなことができたら不幸だよね」とちょっと悲しげに返します。
テレパス、すなわち他人の心が読めるということは、相手の嫌な面や感情までもわかってしまうこと。便利な能力のように見えるけれど、人と深く付き合えなくなってしまう……。相当生きにくい人生です。
木絵も「絶対イヤだ!!」と答えます。妄想を覗き見されるなんて恥ずかしすぎる、と。しかし、高台さんになら、考えるだけで気持ちが伝わったらいいかも、とも思います。そして妄想まじりに、こんなことを考えます。
光正は、またクスクスと笑いながら、この思いに答えます。
こうして、冴えない女の子とイケメン王子という少女漫画の王道ともいえるカップリングの、不可思議ラブストーリーが幕を開けます。
高台家の恋模様
さて、あらすじはこのくらいにしておいて、高台家一族の紹介を。タイトルがそれとなく示しているように、テレパス能力を持つのは光正だけではないのです。
妹の茂子と、弟の和正。彼らも光正と同じくブルーの目で超美形。二人を紹介された木絵はさっそくこんな妄想をします。
……ちなみに彼らは邪な心を持つダッフンヌ神父に追われて日本にやってきたそうです。
言うまでもなく重要設定ではありません。
ついつい笑ってしまう3人。そう、茂子も和正もテレパスなのです。
本気で疑ってはいないけれど、木絵は3人とも心を読めるのではないかと考えちゃったりしています。それより一緒に食卓を囲んでいる最中に妄想するのはどうなんだ……?と、まあ和やかな雰囲気ではありますが、その能力のために、いろいろと苦労をしてきた一族でもあります。特に恋に関しては。
まず、長女・茂子。彼女には、岸本浩平という長い付き合いの男がいます。
友達以上、恋人未満といったところでしょうか。男というのはしょっちゅう下世話なことを考えてる生き物で、そういう心を読み取ってきた茂子が信頼できる友人なのですから、ひじょうに魅力的なのでしょう。
ところが、彼にアプローチを仕掛けている女の子の存在を知り、茂子の心は複雑に揺れ始めます。無神経にも、岸本がその女の子を連れて現れたので、混乱はより深まってしまいます。
読みたくもない心を読み取ってしまうつらさ。嫉妬に耐えきれなくなった茂子はその場から逃げだし、木絵の妄想に浸って逃れようとします……。
一方、和正は、ペットの猫(ヨシマサという名前)を診てもらうため、茂子の同級生で現在獣医をしている斉藤純という女の子と再会します。
10年近く光正に思いを寄せ続けている純を、和正はちょくちょくからかってきました。人の心が読める能力のために意地悪な性格に育った和正にとって、純はついちょっかいを出したくなるタイプだったようです。
そんな二人の関係を目撃した木絵は、和正が純に片想いしているんじゃないかとメルヘンチックな妄想を展開。それを覗き見た和正は、動揺しつつも、実は自分が兄貴にヤキモチ焼いていたという気持ちを発見します……。
そう、木絵のあどけない妄想によって、光正だけでなく、高台家全体にも変化が起きていくのです。
テレパスの発端はおばあちゃん!
良くも悪くも高台家に受け継がれてきたテレパスですが、ではその力の源は誰なのか。
時代は少し古く、1958年のイギリス。サー・ローレンス・ペドラー伯爵の一人娘、レディ・アン・ペドラーは、22歳という年齢にたがわず、その美貌でさまざまな男から言い寄られて、いつも体裁よく突っぱねてきました。なぜなら……
テレパスだったからです。そんなわけで、恋愛にはひどく冷めていました。しかし、パーティ会場で、見慣れない考え方をする人物を見かけ、心境が一変します。
光正たちとよく似た彼は、高台茂正。日本からの留学でイギリスに来ていたのでした。彼に惹かれたアンは、茂正のもとを幾度となく訪れては、彼をとりこにしようと企みます。日本に許嫁がいることを読みとっていながら。
そしていつの間にか、自分が茂正のとりこになっているのを悟ります……。
こうして光正たちの祖父母にあたる二人の恋という高台家の歴史も絡んで、物語は加速していきます。
そんな「高台家の人々」ですが、その人気ぶりから、今年の6月には土方正人監督のもと実写化された映画が公開。キャストは、平野木絵を綾瀬はるかが演じ、3きょうだいは、光正役が斉藤工、茂子役が水原希子、和正役が間宮祥太朗といった実力派を揃えています。また、岸本浩平を坂口健太郎、茂正を大野拓朗、アンをシャーロット・ケイト・フォックス、光正たちの母親を大地真央、父親を市村正親が演じています。
評判もよく、原作を読んでいるのなら必見の内容となっています!
いろいろと書いてきましたが、この漫画の最大の魅力は、ともすればシリアスや悲恋の展開になりがちなテレパスというSF的要素を、コメディとして上手く昇華している点でしょう。感想も「ほのぼのした」「爆笑した」「微笑ましい」と、明るいものばかりです。
人の暗いところや嫌な部分はついつい目が行ってしまうもの。他人の心が読めるとなると余計にそうです。しかし、心からの優しさや友情もあるんだと思わせてくれる、そんな作品であります!
この記事をSNSで共有する
作者
にしのともき
1992年生まれ、長野県出身のフリーライター。活字を読むことが生きがいの中毒患者。小説、漫画、映画すべて楽しみ尽くしたいと手当たり次第むさぼる日々。好きな漫画は『寄生獣』。だいたい自宅か神保町にいます。記事タグ
この記事で紹介された作品
copyright(C)2016-2024 アムタス > 利用規約
サイト内の文章、画像などの著作物は株式会社アムタスあるいは原著作権者に属します。文章・画像などの複製、無断転載を禁止します。
- めちゃコミック
- おすすめ無料漫画コーナー
- めちゃマガ
- 妄想が覗かれている!?『高台家の人々』と送るラブコメディ