三日に一度「私の日」が回ってくる!! 『ハレ婚。』が描く現代の一夫多妻制&あらすじ紹介
更新日:2017/03/06 10:00
一夫多妻制。文字通り、一人の男性が複数の女性を妻とすることを認める結婚制度です。
主にイスラム社会で多くみられ、近代に入ってからは減少の一途ですが、現在でもアフリカや中東の一部の国で採用されています。日本でも、跡取りを産むという名目で側室や妾を持つことが認められていた時代がありました。
さてそんな一夫多妻制を、現代日本社会に持ち込んだらどうなるか? この疑問に答えてくれるのが、「ハレ婚。」 (NON/講談社) です。「ハレ婚」とは「ハーレム婚」の略で、主人公の故郷の町は特別行政区としてこの一夫多妻制が施行されていたのでした。
「ハレ婚」は少子化・過疎化の対策となるのか。どんなライフスタイルとなるのか。というかそもそもどのように人間関係をつくっていくのか。今回は、ハチャメチャなラブコメディでありながらかなり実験的でもあるこのコミックの魅力に迫ります!
「ハレ婚。」 (NON/講談社) は、講談社の青年漫画誌『週刊ヤングマガジン』で2014年30号から連載を開始した作品で、作者は漫画家のNON先生。コミックスは10巻まで(最新刊は2016年12月発売)出ています。ヤンマガというだけあり、お色気シーンもそれなりに含まれているのも本作の魅力の一つです。
それではあらすじと登場人物紹介に入っていきましょう。
謎の男・伊達龍之介からの求婚
こちらは主人公・前園 小春(まえぞの こはる)、22歳。とにかく恋愛運がない女性で、付き合ってきた男性がことごとく既婚者だったという異色の経歴の持ち主です。
東京での生活にうんざりし、父親が入院中ということもあって、故郷の実家に帰り、今は父親が経営するお店「喫茶ルパン」を手伝っています。
手伝い初日、常連客として、髪の長い痩せた男性が入ってきました。彼は小春のことを前から知っているようで、小春の淹れた珈琲を飲んだ後、「あいかわらずキミは…可愛いだけの女だね」と言い捨てて去っていきます。
その後、母親からお店に差し押え寸前なほど多額の借金があることを知らされ、途方に暮れていた小春は、この不気味な男性に店がまずい状態であることを話します。
話を聞いた男性は、いったんお店を出たと思ったら、今度は二人の女性を連れて、珈琲代1日3杯30年分の1000万円を先払いしようとします。紹介が遅くなりましたが、男性の名は伊達 龍之介(だて りゅうのすけ)といい、本人曰く「昔頑張ったおかげで、今は働かなくても生きていける」という無職の25歳です。
同時に、「美しき僕の妻たちさ」と連れてきた二人を紹介する龍之介。ゆず(本名・伊達柚子)は画像真ん中のナイスバディな女性で、龍之介の第一夫人(25歳)。まどか(本名・伊達 まどか)は画像右のおしとやかなそうな女性で、第二夫人(21歳)だそうです。
あまりの展開に絶句している小春に対し、龍之介はさらに驚くべき言葉を口にします。「僕と結婚しないか?」
……この変人・龍之介は小春を3人目の妻として迎えるのが目的なのでした!
結婚するしか術はない!
言うまでもなく、伊達家は一夫多妻家族。序文でも触れましたが、あらためて説明すると、小春の故郷の町は条例によって、ひと家族4人まで奥さんを持つことが可能となっているのです。
龍之介一家を見るまでそのことを知らなかった小春。わけがわからず、その場で龍之介の求婚を断固拒否し、お金も受け取らず帰してしまいます。当然と言えば当然の反応です。
しかし一夫多妻の生活について想像は膨らむばかり。お店の借金も消えてなくなるはずもなく、龍之介の申し出が頭から離れません。
借金の返済が来週に迫り、このままでは前園家は破綻してしまう。なんとかならないか、やっぱり龍之介を頼るしかないのかと神にお祈りする小春。
結局、龍之介の豪邸におもむき、小春はお金を受け取ります。ところが、母親からお店の借金が3000万にのぼることを知らされ、龍之介のお金でも足りず、絶望する小春。そんな彼女を見た龍之介は、なんと自宅を売却。
その気になればいつでも離婚できる、と考えつつ、ついに小春は結婚を承諾するのでした。
一人の夫・三人の妻の結婚生活スタート
さて、ここまでは物語のプロローグにすぎません。波乱万丈な一夫多妻の生活は今より幕を開けるのです。
まずは新居。今までの家は売り払ってしまったため、市がハレ婚家族のために提供している古民家に住むことになりました。中はそれなりに広いのですが、ところどころ傷んでおり、お金もないためしばらく贅沢はできないようです。
そして結婚式。実は龍之介はゆずともまどかとも結婚式を挙げておらず、「小春が結婚を承諾して4人一緒にやるならOK」となっていたのでした。
伊達家の未来を祝してみんなで食事。料理はゆずの手料理です。
3番目であることや借金のこともあり、どうしても立場が低い小春は、ゆずやまどかに嫌味を言われつつ、前途多難な結婚生活をスタートさせたのでした。
夫の寝屋はローテーション!?
伊達家には様々なルールがあります。
たとえば、いついかなる時でも「龍之介の言うことは絶対である」というものや、仲間外れを禁止するための「やるならみんなで、やらないならやらない」というものなどなど。実は先述の結婚式は、今挙げた二つのルールが適用されて執り行われたのでした。
しかし、小春をいちばん驚かせたのは、寝所のシステム。
そう、「龍之介の寝屋は問答無用でローテーション」であること。つまり、三日に一度夫と同衾する番が回ってくるということです。「夫婦なんだからフツーでしょ!!」と怒るゆずに対し、「回転寿司みたい」と反論する小春。まあ、困惑して当たり前です……。
参考までに、夜のゆずとまどかの様子を見ていきましょう。
こちらはまどかの場合。恥らいまじりのこのセリフは龍之介に言わされています。やや無愛想で、感情に乏しいまどかですが、龍之介への想いは相当強いようです。
こっちはゆずの場合。元々が明るくサバサバとした性格のためか、まどかとはまるっきり違います。声の我慢の話になっているのは、隣の部屋が小春のため。ちなみにゆずは声を我慢する気は全くありません。
さて、結婚初日、小春がお風呂から挙がると、まどかの部屋から小さな声が漏れてきていることに気づきます。次は自分の番。結婚したとはいえ、覚悟がまだできていない小春は明日の夜が怖くなります。
そして、当日。自分を殺して龍之介と向かい合い、適当にやりすごしてしまおうと瞑想します。
しかし龍之介はそんな小春の気持ちを見破り、少々荒っぽく迫ります。反発した小春と乱闘気味になり、ムードもへったくれもありません。
ここで、小春は一つ打ち明け話をします。こういう行為は初めてではないが、気持ち悪くて仕方ないのだと。小春の乱暴な口調や行動はこれを隠そうとしたためだったのでした。
龍之介としては、嫌がっているところを無理矢理するような悲しい行為をしたくはない。そこで、小春に「リハビリ」として、添い寝だけするという提案をします。
「他の男がどうとは関係ないの。僕は君を治す。だからやらない」
お金のためと割り切っていたはずが、龍之介の本気っぷりに気圧され、小春は徐々に感情を軟化させ始めます……。
小春と龍之介の最初の出会いやら、謎めいた龍之介の過去やら、気になるポイントはたくさんありますが、あまり踏み込むとネタバレとなってしまうので、今回はここまでとします。
いかがでしたでしょうか。物語はこのあと、妻のあいだでの嫉妬やらいがみ合いが本格的となり、争いを見かねた龍之介からの「お仕置き」があったり、新たな夫人候補である女子高校生・うららが登場したりと、どう完結するのかさっぱり見当がつきません。こういうてんやわんやを楽しむ話なので、リラックスして読むことをおすすめします。結末がとても気になる作品です。