パンダに人権、おじさんロボ化!設定が魅惑の超展開漫画
更新日:2016/07/19 10:00
予想を裏切られると嬉しくなるという人……いませんか?
ちまたには驚くほど様々な漫画が溢れています。恋愛、友情、家族、ファンタジーにビジネス系、グルメに職業に音楽にスポーツ。そんな豊富な作品を前に、なんとなく結末が読めてしまうと興ざめするとお困りの方にピッタリの特集をご用意しました。
それがこの『設定が魅惑の超展開コミック』。
頭に描く淡い予想と想像を見事にぶち壊してくれる面白くて秀逸な超展開作品たちを、自信を持ってご紹介いたします!!
ズリぃよ……お前かわいいじゃん…
キラキラ女子にはあまり馴染みのなさそうな雑誌『別冊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて、華麗に連載スタートしたのが「ささひと」 (花月仁/日本文芸社) です。
※『別冊漫画ゴラク』の休刊にともない、2016年現在は『漫画ゴラクスペシャル』にて連載中(ともに日本文芸社発行)。
見て下さいよ、このパンダ然とした可愛らしい見た目。こちらに手を伸ばし歩いてくる子パンダをかわいくないという人など、この世に存在するでしょうか?
本作はこのパンダちゃんを巡る、心温まるほんわかドラマ……と思ったら大間違い。痛い目にあいます。
東京の動物園に生まれたジャンアントパンダ・ロンロン。その鳴き声は『おんぎゃああああ おんぎゃああああああ』と人間の赤ちゃんそのもの。どっからどう見てもパンダなのに。
そんなロンロンは、成長するにつれて天才パンダとして各国からも熱い視線を寄せられるほどの影響力のある存在となります。
そして6歳になった時、ロンロンはみずから人間であるとして人権を主張(!)。里親を得て、人間の子ども“鈴木笹人”となるのですが――。
最初の驚きポイントは、やはり人権を主張する瞬間。
テレビ中継で、パンダと人間のパネルを前に自分はどっちだと思うか尋ねられるロンロンは、手に持っていたルービック・キューブを落とし、おもむろに口を開きます。
すごい、すごく理路整然。
“文化的な最低限度の生活を営む権利”―― そんな憲法の一文すら思い出させる理路整然とした主張、人間の大人でもおそらく8割はこんなにストレートに要望を伝えることはできないでしょう。私にはまずできない。
あと、初めての里親の家で自己紹介するときも見逃せません。
好きな映画にトトロとテッドを上げる当たり、「わかってるな」感が半端ありません。CMを何本も抱える人気子役のような、そんな完璧な自己PR。
そう、そこなんですよ。この作品のポイントは。こいつ(=笹人)はですね、賢いんですよ。正確に言うと、基本とてもずる賢い。
そしてその賢さを惜しみなく注ぐ先、それが『エロ』!
愛らしい容姿を引っさげ、子どものフリして無邪気に近づき、たぷんたぷんと里親ママの胸を揉みしだき、ディープキスを迫り、かつ服を脱がそうとするのです。
お気づきですか?そう、こいつはただのゲス。ゲスパンダ。
実は笹人、6歳なんですが…人間でいうと繁殖期を迎えた大体15歳。奴は可愛い顔して思春期まっただ中なのです。
この本性に気付いているのは、とりあえずは里親先の娘・ひまりちゃん(6歳)のみ。さあ、エロ権化・笹人を前に、健気なひまりちゃんはどう立ちまわるのか。
好みがハッキリわかれる作品ではありますが、個人的には笹人の卑怯っぷり、特にニヤリ企む笑顔がたまりません。
パンダとエロと卑怯とゴラクが好きな方にとっては、またとない珠玉の作品となっていますので、お心当たりの方はすぐにでもお読みください。
「え゛え゛え゛ええええ!? そっち!!??」誰にも言えない男の秘密
ええ、そりゃあ、生きていれば辛いことはたくさんありますよ。不幸とは意外に重なるもので、ひとつ嫌なことがあれば坂を転がり落ちるように、アレヤコレヤと…。ああん、イヤッ! 思い出したくもないわ!!!!
ということで、次にご紹介するのは『イブニング』(講談社)で連載中の「いぬやしき」 (奥浩哉/講談社) です。
タイトルの『いぬやしき』とは、主人公の苗字です。犬屋敷壱郎さん。いい名前です。
犬屋敷さんは、58歳のサラリーマン。表紙のおじさまです。生意気ざかりの高校生の娘といじめられっ子の中学生の息子、そしてザ・中年という風貌の奥様(スーパーでパート中)の4人家族です。で、この犬屋敷さん。カバー絵の正直58歳とは思えない老け込みようからも分かるように、心が痛くなるほどに冴えない日常を送っていらっしゃいます。
電車で若者に絡まれてもじっと見つめることしかできず……、
帰りがけに街で牛丼食べてりゃ、中学生に遠くからバカにされ……、(しかも奥にいるのは犬屋敷さんの息子)
その息子といえば、なんか達観してるし……、
その上…………
えええええ、胃ガンなの? しかも、余命3ヶ月!?
病院から帰ってきた夜。家族に病気を打ち明けようとするも、上手く言い出せなくてきっかけを失い、唯一の友である犬のはな子を連れて散歩に出る犬屋敷さん。
ちゃんと話せば家族のみんなは泣いてくれるだろうか。そう独り言を口にしたあと、はたと足を止め、次の瞬間、彼は走り出します。
そうして辿り着いた野原で…
そりゃあ泣くよ。この58年、何のために頑張ってきたかわからないじゃないかあ。
もうやめて、やめてあげてよ!犬屋敷さんをイジメないでええええええええ!!!!!!
と、スマホ画面に絶叫したところで。
ん? なんか光った?
と思ったら…………えっ?
は?
えええええええええ??????
ええ。同意見ですよ、犬屋敷さん。ほんと、「なんてこった」。
ていうか、何がどうしてこうなった。。。
この作品については、詳細を語るよりも見るが易し。
事情は抜きにしても超展開っぷりは伝わったと思いますので、ご興味がある方は素晴らしい作画やコマ運びとともに、じっくり味わっていただければ幸いです。
ちなみに、同じ作者さんの手がけた漫画「GANTZ」 (奥浩哉/集英社) はアニメ化、ゲーム化、ノベル化、そして実写映画化と、メディアミックスの花道を駆け抜けました。実写映画の主演は嵐の二宮和也氏。
もしこの『いぬやしき』が実写化されるとするならば、誰が主演になるのでしょうか?
小日向文世氏あたりが妥当な気がしますが、あと一歩情けない感がほしいところ。うーん。絶対、背は小さいほうがいいからな……あ!
ミスターオクレ師匠!! そうだ、意外にいいかも!
師匠、元気ですか? 出番ですよ!!!!(師匠をご存知ない方はググッてください)
幸も不幸も“皮”ひとつ! 愛憎渦巻く究極の人間ドラマ
ネットのニュースを見ているときに表示される様々な広告。まちがえてエロサイトのリンク踏んでしまい、穏やかな朝の社内でもろエロが全画面に表示され、後ろに立つ人の視線が辛く感じた経験、ありますよね? ないはずがない。そう、ないはずがない。
そんな数あるコミック広告の中でも、群を抜いて目立つ上に、続きが気になってしょうがないと話題なのが「愚者の皮」 (草野誼/ぶんか社) 。
なんでそんなに目立つのかって、すべてはその衝撃的な絵です。
一番有名なコマからいきましょう。
なになになになになに???
これを見た誰もが、「なんでこんなことになってるのか?」と疑問を持たずにはいられない、パワー全開の作画。でもですね、実はこの“目をそらしたくなるほどのグロテスクさ”こそが、この作品の真骨頂というか、深~いテーマなわけです。
誰もが羨む美しい見た目に、澄んだ心を持ち合わせた女性・あよ。片や旦那さんも、仕事もできてイケメンで、なおかつ心も優しい完璧な男性。
なんせ初登場のシーンから、「ゆきずりのホームレスの人にコートをあげちゃうなんてあなたらしい」と言われるほどですから、普段から奉仕の心に満ち溢れているのでしょう。
そんな2人は超ラブラブ。幸せな日々を過ごしているわけですが、ある時あよは交通事故に会い、綺麗な顔に大きな傷を負ってしまいます。そのころから、なんとなく冷たくなる夫。
愛する旦那さんに「いつ治るの?」と聞かれ、心を痛めていたあよは、無理な整形手術でかつての美貌を取り戻そうとします、が――。
残念ながら、あよの整形手術は失敗してしまいます。そして前述の見た目になってしまったわけです。
旦那さん……そりゃないぜ。いい人だって信じてたのに。
冒頭に「幸福と不幸を分かつものはただひと張の薄皮のみである」とあるように、本作のテーマをまとめるならば“美醜”と“真実の愛”。衝撃的なイラストはそのテーマを際立たせるためにあります。
あんなに固く誓い合ったはずの愛が、皮一枚の違いで豹変してしまう悲しさ。読み進めるにつれて、現実的にはありえないなあと思いつつも、深く考えさせられるところがあります。
この先、あよと旦那さんはどうなるのか、気になって仕方ないのではと思います。が!この作品ほど筆舌に尽くしがたい展開はありませんので(=文字に起こせば起こすほど混迷してしまった)、こちらも続きはぜひ本編をご確認いただければ。
まだ迷っている方には、個人的に一番好きなこちらのコマをお送りします。ひとコマ毎、とにかく細かいところまで味わい深いのがこの作品の大きな魅力。
さて。どうして、彼女は花壺に入ってゴロンゴロンしてるのか……。気になって仕方ないでしょう? フフフフフフフ。
いかがでしたか?現実にはありえないこと世界を違和感なく表現できるのも、漫画の大きな魅力のひとつ。
これを機会に、超展開な漫画を思う存分満喫してください!
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作者
上原クラーケン
科学系から歴史ものまで、ジャンルを問わず、依頼があればなんでも引き受ける骨なしライター兼へっぽこ編集者。最近やっと長年の疑問であった餅の美味しさを知り、とても満ち足りた気持ちで暮らしている。記事タグ
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