独占漫画家インタビュー:コナリミサト「漫画は全部自分の責任」
更新日:2018/01/16 10:00
周りの空気を読むことに頑張りすぎて、疲れ果ててしまった女子のリセット生活を描く「凪のお暇」。仕事にプライベートに忙しい女性から共感を呼んでいる本作を描く漫画家・コナリミサトさんがインタビューに登場です! コナリさんと主人公・凪との共通点は……!?
- 女性漫画 凪のお暇
- 4.3 (15875件)
社会で生きていくために漫画を選んだ
――「凪のお暇」 (コナリミサト/秋田書店) の人気ぶりについて、ご自身の実感としてはどうですか?
Twitterのフォロワーさんがちょっと増えました(笑)。漫画の中で凪(なぎ)がやっている「すいとん」を読者の方も実際に作って再現してくれて、それをTwitterにアップしてくれて、めちゃくちゃうれしいです。
――漫画の中によく登場するレシピなどの節約術は、コナリさんも普段からやっているものなんでしょうか?
そうです。ちょっと工夫して作る貧乏飯が好きなんですよ。「凪のお暇」は、最初こういう節約ネタを入れる漫画を描きたいと思って始めたんです。それをやるためにはどんな主人公が良いかなと考えて、凪が生まれて、そこから色んな設定やストーリーを肉付けしていきました。
――節約ネタ以外にも、凪をはじめとするキャラクターとその心理描写だったりお話だったりが、多くの女性の共感を呼んでいますね。話作りなどはどのようにして?
自分の経験だったり、友達と飲みながら話すこととか、数人の友達を足したり引いたり薄めたりして、キャラクターを作ったりもしています。
――「凪のお暇」以外にもこれまで数々の作品を生み出しているコナリさんが、漫画家になったキッカケは?
高校卒業後、雑貨屋さんに就職したんですけど、凪的な理由もあったり色々で辞めてしまって、そこから、飲み屋でアルバイトをしながら漫画を描き始めました。
――どうして漫画だったのでしょうか?
子どもの頃から絵を描くのが好きで、人生で一番絵が上手かったのが小学5年生のときだったんですよ。りぼんキャラの絵を描いたり配ったり、遠足のしおりの表紙イラストを描いたり、栄光時代ですね。中学に上がってからは漫画を描くって何となく仄暗いイメージというか、当時はそんなにオタク文化に寛容じゃなかったから描くことから徐々に離れていってしまったんです。高校に入るとさらにぱったりと描かなくなりましたね。
――しばらく描かない時期があったんですね。
雑貨屋を辞めたときに、私は社会で働いていくことが無理かもしれないって悩んで、自分一人でできる仕事がないかなって考えたんです。それで漫画が思い浮かびました。漫画はどうなろうと全部自分の責任、自分の力でやっていけるのが良いなって。
――漫画家を目指し始めた最初の頃はどんな作品を描いていたんですか?
とにかく絵や漫画から離れていたので、最初は漫画の描き方も何もわからず、見よう見まねでハイテックでコチョコチョしながら8ページのショートを描きました。それを太田出版さんに持ち込みしたら、載せてもらえたんですよ。
南Q太さんがすごく好きで、憧れの漫画家さんと同じ雑誌に載りたくて太田出版さんに 行ったんですけど、南先生は載せてもらえた号は休載されていて、本誌に一緒に載るという夢は果たせなくて。
そんなこんなで、最初は申し分ないくらい出だし好調で「行けるぜ!」って思っていたんですけど、その後はなかなか苦戦が続いて…。とにかく勉強する意味でも、好きな作家の漫画をたくさん読んでいました。
――特にどんな作品が好きなんですか?
小さい頃から「らんま1/2」(高橋留美子/小学館)がものすごく好きで、高橋留美子先生の作品はいっぱい読みました。ラブコメが大好きなんです。
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言えるのが凪、言えないのが私
――コナリさんはどのようにして漫画のアイデアや構想を考えていますか?
「凪のお暇」に関しては、今の時点から数話先のゴール地点を決めて、そこに持っていくためにはキャラクターをどう動かして、どういう風に話を持っていけば良いかを考えながら作っていきます。
――凪を取り囲むキャラクターたちも個性的ですよね。特に我聞慎二(がもん しんじ)とゴンさんがこの先、凪とどういう関わっていくのか気になります。
もう、ゴンがね……。3巻はゴンに期待してもらいたいです。担当編集さんも「フゥー! 慎二よりヤバイ!」って興奮していました。
――凪の元カレ・我聞(慎二)と隣人のイケメン・ゴンさんというタイプが違う二人ですが、コナリさんご自身としてはどちらの男性が?
来ましたね(笑)。私は慎二の方が可愛げがあって良いなと思っています。昔、飲み屋でバイトしていたときに、男尊女卑的なことを言うお客さんがいて、でも飲んでいるから終盤は情けなくなっていくんですよ。私は「普段は強がったりしているけど弱いところもあるんだろうな」という感じでウットリしながら見ていました。慎二はそういう可愛げみたいなものをすくい上げながら作ったキャラクターです。良い人に見える人が実は悪い人で、悪い人に見えるけど実は良い人っていうのが好きですね。
――凪さんはどうですか? ご自身のことや実在の誰かを投影していたりは?
八百屋さんで会計が間違っているのを店員さんに言えないのが私で、言えるのが凪なんです。レジに人が並んでいるし、なんだか恥ずかしいし、でも本当はちゃんと言いたい。だから、自分ができないことを凪にはやってもらっている。そういう願望みたいなものも込めています。
――会社を辞める前の凪さんだと、周りに合わせて空気を読んで行動しがちでしたね。
凪と会社の同僚たちとの会話シーンとか、あんなにわかりやすくマウンティングしてくる女子って私の周りであまり見ないんですけど、日々薄っすらと感じるようなマウンティングをちょっと色濃くして漫画で描いています。
――変わると決心した(会社を辞めた)後の凪さんが婚活パーティーで、マウンティング女子に言い返すシーンがありましたよね。
凪がバーッと言い返してすごくすっきり! …と思いきや「でも自分だってそうだよね」ってなるのが、やっぱり凪なんですよね。
――読者の中には凪さんと同じように、仕事で色々なストレスを抱えて「もう辞めたい!」と悩んでいる人もいると思いますが、励ましの意味も込められているのでしょうか。
そうですね。でも「じゃあ辞めちゃえば」って無責任には言えない問題ですよね。会社を辞めて、今のところ滑り倒している凪の姿を見て「こんなに大変だよ」って考え直すのもアリだと思います…。
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凪にとっての幸せを得て、“お暇”を終えてほしい
――日々お仕事で忙しいと思うのですが、気分転換したい時やオフなどはどう過ごしていますか?
飲みに行くくらいしかないんですけど、趣味で手芸を始めたいと思っています。今はまだ手縫いでちょこっとやる程度なんですけど、本格的にやろうって。凪がボンボンのアクセサリーを作っていたけど、ああいう手芸ネタも漫画に入れていきたいですね。最近、担当編集さんと二人で漫画手芸部というのを作って、飲みに行ったとき、一緒に手芸をやっています。部員大募集中です。
――同業者(漫画家)さんとの交流はありますか?
仲の良い漫画家さんと飲みに行ったりもします。漫画論を語るわけでもなく、やっているゲームの話とか、好きなアイドルの話とか仕事中に聴いているラジオ番組の話とかをしています。私はTBSラジオの伊集院光さん、アルコ&ピースさんやハライチさんの番組が好きでよく聴いています。
――仕事中のお供にラジオを聴いているんですね。
音楽を聴いたり、あと誰かとスカイプをつなぎっぱなしにしておいて仕事するスタイルが多いです。同業の漫画家さんとつなげていると、作業音とかが聞こえてくるから隣りで描いているような臨場感があって、よし私もやるぞ!って刺激になるんですよ。あとは、「もう夕方だね」「豆腐屋が来てる」とか他愛もない話も気軽にできるので、スカイプをやっていないと逆に集中できないくらいですね。
――いよいよ「凪のお暇」最新3巻が発売になり、これからさらに盛り上がっていきそうですが、今後の目標はありますか?
まずは「凪のお暇」を無事に描き切りたいですね。まだ先になるんですけど、きっと最終回は凪が自分にとっての幸せを得てお暇を終えてほしいなって思います。
自分の仕事としての目標はたくさんあるんですけど、職業柄どうしても不規則な生活になりがちなので、健康にもっと気をつけたいです。やっぱり第一線で活躍している作家さんはきちんとした生活を送っていると聞くので、私も見習わなくちゃって。朝早く起きてラジオ体操をしてから仕事に取り組む、みたいな規則正しい生活を目指します!
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場の空気を読みすぎて、他人にあわせて無理した結果、過呼吸で倒れた大島凪、28歳。仕事もやめて引...
楽しいお話ありがとうございました! 節約術に手芸などなど、女子力バリバリのコナリさんが描く「凪のお暇」、続きを楽しみにしています。
プロフィール
場の空気を読みすぎて、他人にあわせて無理した結果、過呼吸で倒れた大島凪、28歳。仕事もやめて引...