独占漫画家インタビュー:アキラ「闘病生活から知る漫画への愛」
更新日:2017/12/06 10:00
めちゃコミックで独占先行配信中の「恋愛不感症―ホントはもっと感じたい―」で、恋愛ベタな不器用女子と堅物なイケメン上司とのドキドキなラブストーリーを描くアキラさん。彼女が漫画家デビューしてからの人生は、波乱万丈だったようです。
――「恋愛不感症ーホントはもっと感じたいー」 (アキラ) 、単行本化おめでとうございます! ご自身の漫画が多くの人に読まれていることについて、どう思いますか?
最初はあまり多くの人に読んでもらえている実感がなかったのですが、色々な所で配信されるようになり、2017年12月15日には単行本化もされることになりました。たくさんの人たちがこの作品に携わり動いてくれたおかげで、楽しみに読んでくれている人がいるんだなと、今は実感しています。本当に感謝しています。
――同棲から始まるオフィスラブを描いていますが、ご自身も職場恋愛の経験がありますか?
同じ職場での恋愛経験はないですね。上司はあくまで上司と結構割り切るタイプなので、あまり恋愛対象として意識したことがないです。そういう意味では「恋愛不感症ーホントはもっと感じたいー」 (アキラ) の主人公・星名朱里(ほしな あかり)とよく似ています。例え一線越えても割り切った関係なら普通に接します。
――アキラ先生はどんな恋愛観を持っているんですか?
インスピレーションは重視しますが、すぐに相手に惚れこむことはありません。どちらかと言えば時間をかけて徐々に好きになっていくことが多いですね。最初のガードが堅くて警戒心も強いので、相手を好きだと認識するのに時間がかかるタイプだと思います。鈍感とはまた違うんですよね。
ちなみに朱里の恋愛観はほとんど私の恋愛観です。私は彼女のようにピュアでナイスバディではないですが(笑)、恋愛思考が似ています。朱里が今までの男に言われてきた「冷めてる」というセリフなども、私が今までの恋愛で言われてきた言葉でもあります。
――朱里はアキラ先生自身の考え方を反映させたキャラということですが、今まで描いてきた作品でもご自身の経験や周りの言動などを描くこともありましたか?
自分自身の経験は勿論、人の意見はかなり参考にさせて頂いています。仕事上、男女問わずよく周りの意見を聞かせてもらうんですが、ありがたいことに皆さん結構ノリノリです。漫画のネタに使ってくれと催促されることもあります(笑)。
「恋愛不感症ーホントはもっと感じたいー」 (アキラ) の浅倉浩之(あさくら ひろゆき)課長の朱里に対する上司としての言葉も、実際耳にした言葉だったりします。色々な人の意見を聞いて「意外に上司って細かくチェックして見てるんだな~口に出さないだけで」と思いました。
今まで聞いてきた話を総合的に考えてみると、恋愛面でも特に男性は女性に対して遠慮して本音を言えずにいるんだなと感じます。そういった男性側の意見なんかも女性は客観的に知りたいんじゃないかなとも。直接好きな人に聞くのは、さすがに恐いですからね(笑)。
――これまで描いてきた作品の中で、印象に残っているエピソードはありますか?
「あくまで奴隷!?」 (アキラ) は、今でも印象に残っています。自信を無くした女の子が幼なじみの男の子によって自信を取り戻していくという、よくあるストーリーなんですが、私も似たような経験があります。
主人公・及川みのり(おいかわ みのり)のように自信を無くし殻に閉じこもってしまった時期がありまして、そんな私をどうにかしようとしてくれた吉沢ヒカル(よしざわ ひかる)みたいな存在がいたんです。でも、当時の私にとって彼の言葉はすごくキツくて、内心疎ましく思っていました。
私が自信を取り戻した後に、身近な大事な人が以前の私と同じように殻に閉じこもってしまった時、私はどうにかしてあげたいと言う気持ちでいっぱいになりました。彼女にキツイ事を言ったりして、彼女にとって私は疎ましい存在だったでしょう。「彼女が元に戻ってくれるなら嫌われてもいい」とすら思いました。
その時初めて、私に厳しく言い続けた彼の気持ちがわかったんです。ああ、こんな思いだったんだなと。やり方が正しかったのかはわからないけど、そこに愛情があったんだなと。“優しさだけが愛情の形ではない”という話が描きたかったんです。
- 少女漫画 あくまで奴隷!?
- 3.5 (1854件)
一番気に入ってるキャラは「僕にオトナの恋を教えて」 (アキラ) の桜井ナオ(さくらい なお)ですね。萌えながら描いてました(笑)。ああいうワンコ系の男子は初めて描いたんですがハマりました!楽しくて癒されました!
――今までご自身が描かれてきた作品に、それぞれ思い入れがあるんですね。今までいろんな作品を描いてきたかと思いますが、小さい頃から描いていたんですか?
小さい頃はとにかく紙の『着せ替え』が大好きでして、4歳頃から着せ替えごっこで1人で1日中遊んでました。近くの店の着せ替えを買い占めに飽きたら自分で描いて作ってましたね。絵を描く事より、“ごっこ遊び”が大好きだったんです。リアルなオママゴトより、その時から2次元世界が好きだったようで、誰かになりきって演じ妄想するのが楽しくてしかたなかったんです。
小学生になりアニメや漫画に興味を持ち始めて、小学4年生の頃からストーリー漫画を描いてましたね。ストーリー漫画と言っても誰かの真似事だったんですが、中学生になってオリジナル漫画を描くようになりました。高校生でもなんだかんだ描き続けてて、それが止まることなく今に続いた感じです。
――以前めちゃコミック内のプロフィールで「お小遣い欲しさで賞金稼ぎをしていたことを担当に怒られ、プロを目指すようになった」と答えていましたが、プロになるまでは順調な道のりでしたか?
当時は漫画家なんて夢のまた夢。口に出す事すら恥ずかしい事だと思っていて、自分の中でリアルに考えていませんでした。でも、「自分の漫画がどれほど通用するのか一度チャレンジするのもいいかな」「もしそれでお金が貰えれば……」と、軽い気持ちでセミナーに送ってみたら、小さいですが賞に入っちゃって。プラス期待賞も付けてくれました。
賞金が現金書留で送られてきたので親にバレてしまって、親は応援してくれたんですが、私は正直戸惑っていました。漫画描くのは大好きでしたがプロになれてもなんの保証もないし、そもそもプロになりたいのか?と。周りの後押しはあるけど、当の本人は煮え切らず中途半端な気持ちのままでした。そんな私をみかねた担当さんに怒られ、ちゃんと自分の将来を考え始めたんです。でもお金を稼ぐと言う以外にプロになる目的がなくて、漫画家にこだわる理由が思いつきませんでした。
そんな時、たまたま趣味でやっていたバイオリンをキッカケに、近くのホールでバイオリニストがプロデビューコンサートをすると知って、聴きに行ったんです。クラシックコンサートは初めてだったんですが衝撃的でした。奏でる側と聴く側とが一体化して作り出す空気に圧倒され、その時あやふやだった私の将来のビジョンがハッキリ見えました。分野は違うけど、私も自分が作る世界をこんな風に誰かと共有出来たら素敵だなって。もう迷いはありませんでした。その後バイオリンを題材に漫画を描きデビューまで後一歩だと言われ、その次に描いた「恋愛バロメーター」でデビューしました。
――デビューしてから漫画を離れることもあったんだとか?
私の場合、デビューするまでよりデビューしてからの方が大変でした。物凄い競争率が高くて1~2本しかない空きを20人以上で奪い合うコンペとか。落ちまくりで何作描いたか覚えてません。しかも実家は自営業をしていて、家で漫画を何作も描いても雑誌に載らない娘を遊ばせてくれる余裕などなく、手伝いさせられまくりました。何度か各地に逃亡しましたが連れ戻されました(笑)。
あと、実はバセドウ病を患っていたんです。歌手の絢香さんもなった病気と同じです。この病気、本当にしぶとい。普通に生活していても、疲労が半端ないんですよ。10代の時に患ってから、薬治療で治しては再発を繰り返していました。本当に厄介なことに、全身がずっと震えるんです。漫画家にとって手の震えは致命的ですよね。
自然に描くペースが減って、編集者さんにも「頑張ってもっと描こうよ」と言われましたが、理由を言えばそのまま切られてしまうと思って、ごまかしていました。調子のいい時は出来るだけ描いて、体調が悪く描くのを辞めてというのを繰り返して……。ストレスで胃潰瘍になり、イライラしながら描く私を見て、家族から「もう漫画を描くの、辞めたら?」と言われ「それは私に死ねと言う事か」と答えた記憶があります。
――描きたいのに、描けない時期が続いたんですね。
その後も結婚や引っ越しなどが重なって過労で2年寝込んでしまい、自分が落ち着いたと思ったら父親が倒れ、もう全力で走り続ける事に疲れてしまって……。それで3~4年くらい、漫画から離れていたんです。
その間に父も元気になり、私は無事に娘を出産して、そうしたら嘘のように病気が安定したんですよ。バセドウ病の患者にはよくあることらしいのですが。今、薬を飲まずにまたこうやって描かせてもらっているのは、娘のおかげだと思っています。漫画を再開しましたが、ブランクもあるし、育児・家事・仕事の両立が困難で、復帰後しばらくは夜な夜な一人で泣きながら仕事してました。でも、描けなかった時の辛さに比べたら喜びの方が勝ってますね。
――今の作風やご自身の人生など、影響を受けた作品はありますか?
色々なジャンルは見ますが、その中でめちゃハマったのが原作になった漫画の方の「風の谷のナウシカ」(宮崎駿/徳間書店)ですね。今ハマってるのはWEBで配信されている「まめきちまめこ ニートの日常」(まめきちまめこ)です。仕事で疲れた時、休憩に見て笑って癒されてます。
――今後、描いてみたいジャンルやストーリーはありますか?
青年漫画ですね。デビュー前はもっと男性寄りの絵と話で少女漫画に初投稿して編集者さんに「送るトコ間違ってない?」と言われたことがありました。全体的に男主人公の話は評価が良かったので、もっとリアルな男視点の話も描いてみたいなぁと。個人的には2枚目より3枚目キャラの方が描くのが好きなのでダメンズ的な話とか(笑)。
――最後に、作品を楽しみに読んでいるユーザーに一言ください!
色々ありました、が、今は本当に楽しく漫画描いてます。1人遊びの趣味で終わるより、私の作る世界を1人でも多くの人と同じものを感じ笑い泣き合えたら幸せです。今後ともよろしくお願いします。
山あり谷ありの漫画家人生を送ってきたというアキラさん。描けない時期があったからこそ、漫画を描くことを誰よりも楽しめているのかもしれません。これからも、女子なら誰でもドキドキしちゃう、胸キュンな男性を描いていくことでしょう。ダメンズも楽しみにしてます!
プロフィール
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作者
都築みやこ
少女漫画から青年漫画まで、多ジャンルを好む雑食系。休日は家に引きこもり、誰かのオススメ漫画を読み漁っています。好きな作品は「女王の花」「この音とまれ!」「賭ケグルイ」など。
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