【ネタバレあり】[小説]寵愛の枷のレビューと感想

屈折した愛

掟に忠実に従う元首と細工師。掟通り貞淑な妻となる為生きてきた細工師のヒロインに、自分のやり方を通し結婚を拒む元首。 何とか信じて貰おうと健気に体を開きひたむきに愛し、徐々に元首も惹かれ打ち解け、二人の関係が近づいて安心した頃突如別れが訪れ…。器用な主人公が多い中、自分をなかなか変えられず、でも大切な女性を不器用に愛し欲する姿が狂気であり切実でもある。最後、どんな家庭を築いたのかみたかった。

ヒロインが一途

ヒロインの一途さ、幼い頃からの刷り込みの狂気染みた恋が花開くように愛情に変化する様子がとても良かったです。ヒーローの歪み、こちらも幼い頃からの刷り込みから生まれる狂気がヒロインへの愛情で解かれて行く様も細やかに伝わってきて。歴史や文化、海の花嫁のしきたりなどの設定、ストーリー全体の構成もとてもしっかりしていて、楽しく読ませていただきました。

うーん。お話はとても素敵だったし、ヒーローとヒロインの心や昔からのしきたりという事が原因ですれ違ってしまったのは納得いったんですが、側近の言動が納得いかなかった上に最後まで、結局彼の言動を誰も咎めなかったのが1番ひっかかりました。

私の知識にかすかにある、ヴェネチアと、ガラス細工の島を想像しながら読んでいました。気が狂うほど愛され、受け入れ、ちゃんと苦労もしてきたヒロインを応援しながら読みました。