2.0
美化し過ぎ
骨格のデッサンは狂っている所が意外と多く少々気になるが、まぁそこそこ綺麗な絵だし、女の子達も個性豊か、それぞれのテーマに沿ったタイトルも面白い。
店長は女の子達一人一人の性格や事情、背景をきっちり把握してプライベート面でもしっかり支えるとても良い人。
でも実際はこんな性格イケメン店長居ないし嬢達もこんな前向きに生き生きとしている子ばっかな訳が無い。
自分は風ではなく水の方だが地元版歌舞伎町の様な繁華街でバーテンをしているので、近隣の風俗店の黒服や嬢達とも親しくしてる。
現実の夜の世界をリアルで知っているだけに、この話が如何に理想だけで描かれた夢物語かよく解る。倉科作品が好きで購入したが、らしくないなと思った。
夜の世界はこんな綺麗じゃないよ!もっとドロドロした汚い出し抜き合い、陰口や苛めの温床だよ!
店長やオーナーにとって女の子はただの金儲けの為の商品で、悩みや苦しみなんか知ったこっちゃ無いって扱い、無断欠勤なんかしたら心配して訪ねて来てくれるなんてナイナイナイ。
罰金取られて店によっては暴力も振るわれるのが『普通』。ウチのオーナーも平気で店の女の子を殴る蹴る罵倒するの嵐ですから。
男バーテンダーなんてサンドバッグ以外の何物でもない。女の子を庇ってオーナーに暴力振るわれまくって、毎日吐きながらそれでも仕事そのものは好きだから辞めないでいるだけ。とことん報われない。
この店長も黒服には厳しいけどちゃんと叱る内容に筋が通ってるから羨ましいね。プライベートで機嫌悪くしても当たられまくるのが寧ろ普通なのがこの世界。
三上店長が客側だった頃に綾さんが『三上ちゃん店長やってよ!女を金儲けの道具としか見てないオーナーや店長と違って風俗嬢を人間として見てくれるから、そんな店があれば私達はもっともっと頑張れるから』
と言って彼を風俗業界へと誘(いざな)ったその言葉の通り、こんな店長居たら良いな、こんな店があったら良いなとは思うけどね…。
風俗が世の中に必要な大切な仕事なのは日頃から実感してる。風俗が無ければ性犯罪で溢れ返るのも事実。白眼視されるべき仕事じゃない。
性産業への偏見を持った人には是非とも読んでみて欲しいかも。でも、こんなに綺麗で前向きな世界じゃないって事もちゃんと理解していて欲しい。
短編集だから読み易いとは思います。
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