【ネタバレあり】ハイスコアガールのレビューと感想
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あの頃の愛に報いを
ゲームが取り柄の主人公と、神がかったゲームスキルを持つお嬢様ヒロイン・大野の変則ラブコメ。
「ストII」をはじめとする格ゲーが一世を風靡した90年代を少年として過ごした読者、特にかつてのゲーミングキッズであれば、刺さるとかいうレベルではなく、本作の時代描写だけでもう、懐かしさに卒倒しそうになるだろう。
それは、押切蓮介が本作で描いた90年代という舞台が、単に正確であるからではなく、ゲームに対するほとんど病的なまでの愛情で塗り固められているからだ。
何と言っても、主人公と大野の愛らしさが素晴らしい。
特に大野は、作中ひとつも台詞らしい台詞がないにも関わらず、である。
私は漫画を読んでいて、これほどヒロインを可愛いと思ったことが多分ない。
このヒロインに出会うだけでも、本作を読む価値がある。
あの頃。
勉強もスポーツも出来ない、ルックスもパッとしない、トークスキルもない、そんな冴えない少年たちも、「ストⅡが強い」だけでヒーローになれた、あの頃。
それは大袈裟ではなく、新たな時代の幕開けだったのだと思う。
しかし、ゲームなんかをいくら愛しても、その愛に基本的に見返りはない。
本来、見返りを求めないのが愛なのかもしれないが、まあ、それは置いといて、である。
プロゲーマーもYouTubeでのゲーム配信も選択肢にある現代とは違って、あの頃はなおさらそうだった。
ゲームなんか上手くなったって何にもならないのよ。
その残酷な事実は、私たちが保護者から浴びせられた「ゲームばっかりやって」という批判の核心そのものだった。
けれど、もしゲームに注いだ愛に、何かしら、報いがあるとすれば。
本作は、ラブストーリーであり、ゲームの物語であり、そして、狂気じみた愛をゲームに注ぎ込んで少年時代を送った作者による、究極のファンタジーでもある。
もしも、愛したゲームから愛されることが、あるとすれば。
それを漫画だからこそ出来る形で提示して見せたラストに、私はもう、涙が止まらなかった。by roka- 2
5.0