みんなのレビューと感想「苦楽外」(ネタバレ非表示)
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その謎は煌めいているか
映画でも小説でも漫画でもそうなのだが、ある種の曖昧さや抽象性というものを保持したままで作品を閉じる、つまり、話の筋について「何が起きたのか」について明確な答えを提示しない、ということ自体は、私は否定しない。
映画の例で言うと、デイヴィッド・リンチという監督の一連の作品なんかはその最たるものだと思うが、私は大好きである。
ただ、この種のアプローチには間違いなく弊害もあって、どこの誰が発明したのかは知らないが、実際は大した話ではない、それどころか、下手をすればそもそも結末を考えていない、にもかかわらず、「とりあえず曖昧にしといたらええんやろ?」とばかりに結末を濁すことで、何かそこに深みのようなものを感じさせてやろう、という作品が生まれ得てしまうことも事実である。
それはちょっとまあね、ずるいわよね。
本作がそうだ、と断定したわけではない。
正直、私にはわからなかった。
そこに何かあるのか、それとも、何もないのか。
ただ、いずれにしても、こういうタイプの作品は、「そこにあるかもしれない何か」を探り当てたい、という読者の思いを喚起させられなければ、やはり成功とは言い難いのではないか。
謎の答えがどうであれ、その謎自体は、煌めいて見えなければならないのだと思う。
まあ、ショートムービーのような洒落た雰囲気、海中の描写の美しさには感心したけれど。by roka- 2
3.0