さすが、BL漫画の名作です。過去の傷を癒せないまま生きてきた二人が、出会い、依存しあい、葛藤し、少しずつ認め合いながら、一人の人間として好いて、10項目の療法で克服していく話。
この話の凄いところは、城谷のトラウマである出来事をカウンセラーの黒瀬に自ら打ち明ける事なく(回想のみ)、黒瀬も聞くことはありません。また、黒瀬も自分の過去をむやみやたら話したりしません。話したから、楽になる。話したから、信頼している。そんな簡単なものではないのですね。同情されたいわけでもない。共感されたいわけでもない。誰かに必要とされたい、されたくない。自分を許したい、許したくない。波のように押し寄せてくる身体と心の乖離。どんなに素敵な言葉を投げかけられても、どんなによく効く薬をもらっても、そこに愛情がなければ、結局、人は強く生きていけないのだと。
ラストシーンで冒頭と同じシチュエーションに戻ります。初めは、普通の患者と心理士。最後は、恋人としてのカウンセリング。やっと、スタートラインに立った二人のテンカウントが始まります。なんだか、暖かい春の陽だまりに包まれたような、希望の光に満ちたラストに、愛しくて胸が痛むと同時に肩の荷が下りた 晴れやかな気持ちになりました。続編があればいいなと思う作品です。
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5.0