5.0
地獄にあっても幸せであれる程の愛の記憶
高尾滋先生の作品はコミック化している物は全て拝読していてどれも大好きなのですが、そうなるきっかけとなった作品がこちらでした。
花とゆめ連載当時から読んでいたのですが、こんなにも深い情がこの世に存在するのかと、当時中学生だった自分はそれまでの自分の人生における物事への理解の範疇を超えた内容に驚嘆しながら読んでいた記憶があります。
特に最終章にかけての主人公二人のやり取りは今読み返してもバスタオルが絞れるくらい泣けます。
物語の作り込みという面で語らせて頂いてもやはり素晴らしく、詳細な近代日本史や美しいゲーテの詩、最初の方で歌われた鉄道唱歌から最後の愛宕山での別れのシーンなど、深い知識がさらりとふんだんに盛り込まれていて、物語は知識に裏打ちされて深みを増すものなのだと学んだものでした。
あれから20年近く経って外国生活なども経てみて再読すると、更に胸にせまる描写が多く感じられます。
異国人差別、階級差別、北アフリカ戦線…。
隣に想い人はいなくても、その記憶があればどこであっても意義をもって戦える。地獄であっても幸せでい続ける事ができる。
それは途方もない愛の形だと思います。
この作品に出会えた事は、私の一生の宝物です。
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ゴールデン・デイズ