5.0
大作映画を観た気分です
物語の進み方やセリフの一言ひとこと、どれもとても素晴らしく、とても素晴らしい文学作品だと思います。
まだ前半のカイドとシャーリーの婚約するまでを読み終えたところですが、ここまでで既に大作映画を1本観終えた気分です。
シャーリーは前世では『ライウスの宝花』と呼ばれ、屋敷の中で大切に箱入り娘として育てられ幸せに暮らしていた。悪領主の家族が贅沢三昧するせいで領地の人々が困窮している事など全く知らずに。。
婚約者のウィルがいたけれど、屋敷で働くヘルトと恋に落ちます。
ある日そんな幸せな毎日が一変します。革命軍に攻め込まれ、家族は焼け死にライウスの宝花は捕まります。
革命軍の代表は、カイド・ファルア
それは恋人ヘルトの本当の名前
彼女は、絶望の中でも愛しい彼を想い、わざと知らなかった悪事を告白し悪態をつき『ライウスの徒花』と領民に罵倒されながら処刑される事を選びます。
そして、前世の記憶を持ったまま生まれ変わります。前世の事を恨む事なく、家族の悪事を贖い、笑うことも幸せになることも自分に禁じて15年間生きてきます。
養護院の院長が幼いシャーリーに
『あなたのその姿は断罪を待つ悲しい宗教画に見えるわ』
と手を握り涙ながらに言う言葉。これ以上にない程の悲しい情景で、号泣してしまいました。
シャーリーの周りはとても温かい人ばかりです。院長は、シャーリーが16歳に修道院に入ることを心配して、遠い遠いつてを辿り現領主邸のメイドの仕事を探してきます。そして、15年ぶりにカイドに会い専属メイドとなり、物語は動き出します。屋敷には清楚で優しい宝花だった彼女を慕っていたカンロをはじめ沢山の人が働いています。15年経った今も断罪され処刑されたことを悔やんでいます。ジャスミンやサムアのように前世を知らず、ただシャーリーを大切に想う人たち。
カイドを温かく見守る執事長のアルタム。
カイドを支えてくれたギミー領主のイザドル。
そんな優しい人たちの気持ちに触れ、シャーリーは心から癒されカイドと一緒に生きていく事を選びます。
同僚のティムがウィルの前世の記憶があるのには驚きでした。ティムとしてだけでは生きられない恨みや悲しみ、葛藤なども上手に描かれているので簡単に悪人と切り捨てる事ができず複雑な気持ちになりました。
これから後半を読みますが、カイドとシャーリーそして皆んながどうか幸せになりますように。。
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狼領主のお嬢様