4.0
家族ってなんだろう
女性漫画ジャンルなんですね。BL的な展開を望む方には肩すかしですが、ジャンルに囚われず幅広い層に読んでもらえていいかも。
あらすじに「お金を払って~」とあってちょっとひるむと思いますが、金銭のやりとりは食事をおごるおごらない程度の、お互い気を遣わないようにするための形式的なモノなのでご安心を。
途中から泣きっぱなしで、読了後も余韻でボーッとするような、とても考えさせられるヒューマンストーリーです。
奈良春樹、30歳。仕事は忙しく、クライアント、上司、同僚、後輩に振り回され、周囲とうまく関係を構築できない要領の悪い自分に落ち込み、心身をすり減らす毎日。
唯一の癒やしは父親との交流。とはいえ実の親子ではない。灰田克美はひょんなことから知り合った、まったくの他人だ。
奈良は遠慮がちで、自分の気持ちを表現するのがヘタクソ。真面目でワガママも言えない不器用な性格。上京してからすっかり家族とは疎遠。
一方灰田も、離婚して以降ひとりで寂しく暮らしていた。妻や娘の気持ちをないがしろにしていたことに後悔を感じている。
そんなふたりが疑似親子として、お互いを思いやりながら、少しずつ関係を深めていく様子が描かれる。
動物園、花火大会、クリスマス、初詣。
奈良が子どものころ、したくでもできなかったことをして、過去をやり直すふたり。
親だから子だからわかり合える、血がつながっているから思い合えるというのは、あくまで理想。家族ってそんなに簡単じゃない。
親なのに子なのに好きになれない気持ち、わかり合えない状況は本当に苦しいし、自分を責めてしまう。
家族と"ふつうに"やれている人にはピンとこない話かもしれないが、そうじゃない人には胸に迫る内容だろう。
私もこんなパパやママが欲しい。
ふたりとも本当の家族とはうまく関係が作れず、大きな後悔を抱えながら生きている。でもその経験があるからこそ、今度は間違えないようにとお互いを大切にできた。
物語は完結してしまっているけど、この関係を築けたふたりが、実の家族との関係を再構築するという続きがぜひ読みたい。
奈良の妹ちゃんと、出てきてないけど灰田の娘ちゃんに期待したい。
ふたりとも憂いなく、心から笑って、幸せに暮らしている様子が見たいなぁ。
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