5.0
漫画なのに小説の様な余白がある
漫画はどうしても二次元の世界、つまりおとぎの世界の中に留まる物語になりがちだけれど、この作品はわたしたちの生きる日常まで登場人物が下りてくる生々しさがある。どうしてそう感じるのか考えてみたら、作品の中に「余白」がある気がした。作者は宵ちゃんと琥珀くんの関係性のすべてを絵と文字で語らない。小説の様に、読み手に二人の関係の奥行きを想像させる「余白」が開けてある。読み手である私たちは、想像力という、いわば日常の体験から紡がれる産物によって余白を補完していく。だからこそ、生々しい。手に取るように、宵ちゃんや琥珀くんのもつ感覚や感触が分かってしまうのは、そういう追体験を読者ができるからだと思う。良質な読み物。大好き。
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うるわしの宵の月