4.0
ほんの少しの歪みが拡がっていく恐ろしさ
静子の狂気ばかりに目がいくが、そもそも静子は何故静一の父と結婚したのだろう?
静子の実家が全く出てこないので天涯孤独なのだろうか。
だとしたら、静一の父はもっと静子を労ってやろうとか、自分しか静子を守れないのだとか考えるべきだったと思う。
それができなかった理由は何なのだろう。
静一の父も幼い頃、父親にひたすら従うのが良い母親、という雰囲気の家庭環境で育ったのだろうか。
しかし、そこで解せないのが「朝はん」のメニューである。肉まんかあんまん…あれは静子のチョイスなのか。
それをとがめ立てせず受け入れる夫。優しいのか何なのかわからない。
そして連日訪問する伯母と従兄弟。従兄弟は静一を下に見ているようだが、実は従兄弟自身、何か悩みを抱えていて、静一を馬鹿にすることでその悩みから逃げ出そうとしていたのか…
それぞれの登場人物の価値観の歪みが、重なりあって、更に溝を深めていく、そんな恐ろしさを感じた。
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血の轍