5.0
予測できない!
紹介文だけ見て、ありがちな話かなと思いきや設定もキャラも想像よりもずっと深かった
まず死に戻りとも違うので、過去に戻れる理由もハッキリしている
そして転生ものではないので、主人公レオニが自分の人生をしっかり生きている
母親を虐げて死なせた上に自身のことも蔑ろにした父親のその家族、
顔と家柄しかないと何度も結婚させられて夫や子供を失うことになる原因を作る人間、
最初こそ彼らへの復讐に燃えているけど、相手が結局のところ悪人ばかりなので復讐を果たすことで世のため人のためになり
レオニ自身も復讐だけでなく平和な世界のために働くようになる
レオニの異能は「絵を介せばわりとなんでもできる」という、正直チートにもほどがあるのに無双状態にならないのが上手いなと
・状況を把握できていれば、絵に描いた時間と場所に行ける
・自分が描いた絵と同じ風景の絵がある場所なら、絵を通ってその場に行ける
・絵を被せれば他者の姿も変えることができる
・絵の中に世界を作って、その中に人を閉じ込められる
・過去を変えたので未来も変わるはずなのに、回帰する前の未来にも自由に行ける
ここまでできるというのに、「どうせ簡単に切り抜けるんでしょ」という展開だけにはならない
スカっと安心して読める部分と、予想外のことが起きてハラハラしながら読む部分のバランスがいい
回帰前の未来に行ける時点でその世界が消えてなくなったわけではないと分かるけど、
現在の子供なレオニ相手にかつての夫が特別な激しい感情を抱いていたり、
現在はレオニ以外に異能者はいないはずなのにレオニでない異能が関わってきたりと謎も多い
予測不能なストーリーで失速したり中だるみしたりがなく、キャラクターの心情も丁寧に描かれていて飽きない作品
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私の破滅を願う人々へ