5.0
蘭丸くんの健やかさが割と救いです
とにかくヒロイン2人の格差がひどい。「お嬢さまのシオちゃんが没落と共に闇堕ちしてゆき、健気で貧乏なモエちゃんがスターダムにのし上がるの?」と思わせといて、実はモエちゃんの方が闇堕ち担当。貧乏になった直後、シオちゃんには超太客の若社長が近寄ってきて、金にモノ言わせて婚約者という名のパトロン契約をしてくれます。美しいけれども人に対して無関心無愛想だったシオちゃんは、逆境の中で少しずつ人の情けを知り、自分自身のドロドロの嫉妬心を知り、承認欲求の渇望も知り、プロとしてお金を稼ぐ厳しさも知り、叶わぬ恋の苦しさも知り…と、結果的に人間的に良い方へと成長してゆく。対してモエちゃんは成長というよりは、意地悪した人に仕返ししたり、シオちゃんに嫌味を言ったり、ドンドンすれていっちゃう。いや、この子はシングルマザーの母ちゃんが超アレだし、小さい頃からお金の苦労してて気の毒だとは思うんだけど、恋人にすると重すぎてめんどくせえ女じゃないかなあ。押し切られてやっちゃってましたけど若社長。「男ってこういうタイプの女に情で迷うこともあるもんなのよ」と一条先生に諭されてる気もします。にしてもな、この2人の留学先での雲泥の差よ。ホントに一条先生、残酷。モエちゃんのイタリア留学先は、下宿が手違いで住めない、大家はアバウトで責任取らずにモエちゃん放り出される、しかも下宿先手配した若社長んとこは完全シカト。これだけでも相当不運なのに、こっから更に…ちょっともう…言葉を失うほどの人間不信トラウマ確定コース。片やウイーンのシオちゃんは、若社長の秘書が同行して何もかも手配してくれて、特別枠の空席オーディションにも合格して、豪華なアパルトマンで留学生活のスタートを切るセレブコース。その後もなんやかんやで良い師匠に巡り合い、仲間もでき、チャンスを掴むために必死で努力し、報われてゆくとこは心があたたまります。
しかし、問題は賛否両論のラストです…さすがはあの「デザイナー」の一条先生、「砂の城」の一条先生ですよ。一筋縄の単純なハッピーエンドにしていただける訳がございません。いーい感じにモヤモヤ〜っとする終わり方なんだよなあ。まさかのモエちゃん●●!私同様に驚嘆した読者も多かったことと思います。
ちなみに私の推しは、蘭丸くんが弟子入りする境界性人格障害ぽい天才女性ピアニスト。こいつの性格マジ最悪笑 でもそこが好き笑
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