5.0
ロマンと史実とフィクション、漫画の醍醐味
少年/青年漫画で、これだけ明治の戦争帰りの人達と北海道アイヌを活き活きと人間らしく描いた作品はないのではと思う傑作だと思う。
自分が好むのはリアリティとロマン(フィクション)の融合。残酷なシーンも多く、シンデレラストーリーやファンタジーがお好みの方にはお勧めしない。
あらすじ。
日露戦争後、親友の頼みのために一攫千金を狙って北海道で砂金を探していた杉元の前に現れたアイヌの少女アシリパ。砂金どころではない金塊の秘密を持つことが共通にあることがわかったことかは事態が動く。
アシリパが云う北海道アイヌの生活はとても興味深いし、文化的にも面白いし、グルメも豊富。(食べられるものなら食べてみたい←ただの興味)
道中に出会う人物像も一筋縄ではいかないが、ときにファンシーな描き方に笑いとほっこり感をもらう。腹が捩れるくらい笑う癒しが最高。
ただ時代が時代のため、ときどき恐ろしいまでの激動を見せつけられて戦慄する。裏切り者は誰か、疑心暗鬼にさせる。
戊辰戦争や蝦夷共和国の残り香にロマンを感じる一方で、「たられば」に大きく心を動かされるし期待に心が踊るし、そこをうまく着地させるのも素晴らしい。日本史は苦手だったので、何度も検索して歴史を辿った。それだけでも多くの学びと気づきがあり、史実の人間が描かれていることに興味がつきない。
かと言って、好き嫌いはあれど、敵ですら彼らにも不穏な日本の空気の中で生き抜いてきた、執着してきた背景があり、おそらく感情移入するのは読者それぞれだろうと思う。
途中で息をするのが難しいくらい圧倒されて苦しかった。
ついでに全く関係ない、個人的な話。
亡くなった祖父は、第二次世界大戦でシベリア抑留で捕虜になった。ついぞ話してくれなかったが。
話してくれなかった分、この作品の中に垣間見るものがあったのか定かではではないが、想いを馳せることができたことにも感謝。
リアタイで読みたかったな。
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ゴールデンカムイ