4.0
すごいな高校一年生……
両親を亡くした後家族を支えながら生きてきた優等生雪灯。彼が高校に入学した時、祖母が倒れて入院することになった為、祖母と妹を支える為に、雪灯は希望していた剣道部入部を諦めることにする。幼馴染み遥夏一家に助けられながら前向きに生きる『真面目で優しい優等生』の雪灯。けれど少しずつ溜まった鬱屈に心が悲鳴をあげかけた時、雪灯は一人の少女に出会った………。
と云う冒頭の通り、雪灯と出会った少女結以との恋が作品のメイン。10歳にして家族を守る側になり、優等生として誰も傷付けないように本心を抑圧して生きてきた雪灯。自分を敵視する実母と自分を異性と見る義父から逃げる為に、全てを諦め心を殺して生きてきた結以。その二人が誰かを傷付けてでも、幸せになる為に生きられるようになるまでのお話。
その雪灯側の最大の試練として描かれたのが、幼馴染み遥夏との関係。ここは掲載時にでも荒れたと云うのが良くわかる。なにせ遥夏がとにかく良い子。ずっと好きだった雪灯が結以に惹かれているのを知った彼女は、優しい彼が断れない状況と知った上で告白をしてしまう。そして、やっぱり雪灯は断れなかった。遥夏とは家族ぐるみの付き合いで、両家族がそれを望んでいるから。なにより雪灯自身が遥夏を泣かせたくなかったから。そしてきっと自分は、気づいてしまった結以への気持ちを隠して、遥夏とのキスもそれ以上も上手くやれてしまうと考えていたから。………けれど、結局は出来なかった。どうしても諦められない本当の気持ちの為には、自分は良い人間ではいられない。誰かを傷つける事が出来てしまう。そう云う、周囲に望まれている自分を脱ぎ捨てて本心で生きる為に必要なイベントだったんだと思う。脱ぎ捨てた本性は意外と喧嘩っ早いし腹くくってるし好きな子相手への手も早いしで驚いたけど。
当の結以も好みが分かれるヒロイン像ではあるけれど、読んでいくと彼女が自分を軽く見るようになった理由が分かって胸が痛い。所謂当て馬と言われるキャラが良い人たちな分だけ、雪灯と結以の行動に不快感を抱く人がいるのも分かる。けれど、やっぱり必要で出会った二人だったんだと思う。色々なことを諦めていたまだ高校生の二人が、ちゃんと自分の、自分の人生の幸せの為に生きられるようになる為には。この出会いがなければ、なんだかんだと自分を殺して生きる人生には、いつかは行き詰まっていたかもしれない。
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ハロー、イノセント