5.0
手を放さないこと
他サイトさんでも読んで、大好きなお話です。
主人公二人の感情のやり取りが、年齢や環境の移り変わりとともに、とても繊細に描かれています。
どこかノスタルジーを感じる絵柄も、作品に合っていると思います。
特筆すべきは、高校生時の、思春期の世界の狭さ、形は曖昧で言葉にできないのに、もて余す程の感情の鮮やかさの表現です。
主人公二人は、どちらも「いい子」ではありません。ズルいところもあれば、過ちも罪もおかすし、ずっと後になるまで、そのことに気づかないこともあります。
とくに序盤は、イジメや非行の描写があり、人によっては抵抗を覚えるかもしれません。
それでも読み進めていくと、どちらも親からの扱われ方が、そのまま外での振る舞いになっているのではないか、本人なりの自己防衛だったのかと思えてきました。
高校時代、タイトルの「未成年」通りの、十代特有の不自由さと閉塞感から始まって、やっと手にした自由と若さと恋の成就を謳歌する大学生時代。そして、年齢を重ねてからは、今度は大人だからこその現実のしがらみに絡め取られて、青春時代に思い描いたようなキラキラした生活とは、いきません。
長く手を繋いで人生を歩いていると、きっと相手の温もりが鬱陶しくなることもあれば、一人なら自由に歩けると思ってしまうこともあるのだろう。手を放せば簡単に赤の他人に戻ってしまうことを忘れて、どちらかが手を放して好き勝手歩けば、たとえ運命の二人でも壊れるのだろうと思います。
高校時代の鮮烈な夏の日が遠くなっても、決して互いの手だけは放さなかった。だからこそ、寄り添ってのラストを迎えられたのではないか。
高校時代の映画館で、互いに縋るように手を重ねるシーンがありますが、まさに、あの先にある答えがこれだったのだと思いました。
高校2年生の眩しいほど鮮やかな夏の夕暮れの海、そこからの、落日をあらわすような辛い展開。ラスト、三十代になっての厳かで物寂しい冬の海は、それでも夜明けで、希望を感じます。
「そばにいるから」という台詞を軸に対比になっているのではないかと思うと、いっそう尊いです。
これからも、どうか互いの手だけは放さずにいてほしい。
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未成年~未熟な俺たちは不器用に進行中~